「杜山さん?どこ行くんや?」
「にょ!?」
「『しえみっ!?」』
子猫丸の声に振り向いてみりゃ、しえみが結界の外へ歩み出してるじゃねぇか!
ちょ、待てぇ!?しえみ、お前一体どうしたぁ!!
「おいおいおい!誰か止めろっ!!」
『あれはっ!?』
しえみの首筋にあるのは……虫豸の卵っ!?いつの間に!?
円を出た所で彼女の側に、アマイモンが降り立った
……おい、テメェ。何考えてやがる
「その娘に何をした!?」
「虫豸の雌に卵を産み付けて貰っただけです。孵化から神経に寄生するまで、時間が掛かりましたが…晴れてこの女はボクの言いなりだ」
「くっ!」
「ビヨーン」
しえみを抱え、アマイモンは空高く飛びやがった
あの野郎っ!
「まて!このトンガリ!」
「コラ!お前が待て!!」
燐!お前は!!
『ったく!黒凪、待機!候補生の護衛!』
【悪魔使いが荒いなぁ…】
小気味良い音をたて、漆黒の小柄な蛇が姿を現す
「うわぁ!蛇っ!?」
『俺の使い魔だ!燐を回収してくる!』
「ってオイ!結城っ!?」
「刹さんっ!?」
駆け出すと同時に、アマイモンのペットが道を塞ぐ
『邪魔だ!退け!』
「…………すげ」
「アマイモンのペットを蹴るヤツなんて、アタシは初めて見たぞ?」
■■■
「アインス☆ツヴァイ☆ドライ!!」
『っ!!』
「そこまでです、刹」
燐の元へ向かおうとしていた俺だったが、急に身体を樹木に縛り付けられた
空を見上げると、不適に笑むメフィストの姿が
『道化ぇ!テメェ、邪魔すんなぁ!!』
「おやおや…何て言葉使いでしょうか。年頃の女性がはしたないですよ☆」
…………こんな時に、親バカ炸裂してんな
『何を企んでいる?』
「企むとは失敬な」
『テメェがんな嘘臭ぇ笑顔を振り撒いてる時は、大概下らない事を企んでる時だ』
どんだけの付き合いだと思っていやがる
「嬉しいですねぇ。私の事をそんなに理解して下さっているとは、歓喜の極みです☆」
『話を逸らすなぁぁぁ!!』
突然、響き渡る轟音
背中に冷や汗が流れる
『…燐にアマイモンを宛かうのは、ちと厳し過ぎやしねぇか?』
「――…彼には知る事が山程ある」
先程の巫山戯た雰囲気が一変した
それと同時に、青い炎の火柱が上がる
「彼はまず、己の欲求を知るべきだ」
『上層部(うえ)に、知られてもか?』
「はい☆」
満面の笑みで応えやがった…コイツ…
「貴女もご存知の通り、悪魔は常に否定する快楽の求道者に対し」
メフィストの瞳が、細く険しいものになる
「人の営みは中道にして、病みやすい」
………俺は、それに当てはまらないが
燐は確かに青焔魔の血と力を受け継ぐ
だが…肉体は物理界、炎は虚無界のモノ
彼は人間に最も近い悪魔、とも表現出来るのだ
「さぁて。どちらに進もうか」
求道者
(つか早よ離せ)
(ダメです☆)
>道を選ぶのは君
12.02.22.
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