26:-12year W

ネイガウスさんは、ある日だけ部屋に籠る

食事も水も摂らず、部屋から出ない


理由は分かっている

――…青い夜があった日だ



本人は口にしないが、彼は青い夜で家族を失っている

……己が半身、愛しき者を



一度だけ…ネイガウスさんの部屋で、写真を見た事がある


今のネイガウスさんとは思えない程の、穏やかな笑顔を浮かべ

寄り添う様に、柔らかな雰囲気の女性の姿があった



……正直、俺にはワカラナイ


【家族】と言うモノが、ワカラナイ

【愛しい】という感情がワカラナイ

【絆】というモノが、ワカラナイ



…俺は…化け物だから…



■■■



俺はある日のみ、部屋に籠る

――…青い夜の日だ


あれから数年が経っても、この日だけは…



妻の写真を眺めていると、不意に別の写真が視界に写る

それは…藤本と奥村兄弟、私と…刹が写っている写真



……そうだ。俺は今、1人では無かった


部屋から出た俺は息を呑む


リビングに居た刹の瞳が、闇に包まれていたからだ

何という瞳をしている…何故お前が…



『……ワカラナイ』



ポツリと呟いた刹の声は、無機質で冷え冷えとしていた



『【家族】と言うモノが、ワカラナイ』



……な、に?



『【愛しい】という感情が、ワカラナイ』



待てっ!

お前は燐と雪男を、あれほど可愛がっていただろう!



『【絆】というモノが、ワカラナイ』



お前は…今まで一体、どんな生活をしていたのだ?



『………"化け物"だから、ワカラナイ』



心臓が、鷲巣かみにされた気がした

この子は…どれだけっ!!



『…ネイガウス、さん?』



気付いたら俺は、刹を抱き締めていた



「分からないなら…これから知れば良い」

『……え?』

「急く事はない…ゆっくりと、知っていけば良い」



すると次第に、刹の瞳が潤み出す

俺の服にしがみつき、嗚咽を上げる



「耐える事はない、泣きたい時は泣け…泣いて良いのだ」



腕の中にいる少女は、今まで一切泣く事はなかった


いや……泣かなかったのではない、泣けなかったのが正しい

恐らくこの子は、泣く事を許されない環境で育ったのだろう


【泣いてはいけない】と思い込み、辛さを押さえ込んでいたのだ



「…刹…お前は人だ」



しゅふくを きみに



(さぁここから)
(君は生まれ変わる)


>先生の家族は奥さん設定
11.10.14.


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