25:相変わらず、馬鹿

『……始まった、か』



夜の男子寮に、銃声が響く

寮の入り口で俺は、屋上を見上げていた



【良いの、マスター。これでさ?】

『……黒凪』



ひょこりと現れた黒蛇は、俺の首に絡まる



【だってさぁ、イゴールとマスターって…】

『…俺達は信じてる…燐と雪が、【自覚】する事をな』



そう言うと俺は、寮へと足を踏み入れた



【……(ホントは二人共、メチャクチャ辛いクセに)】



■■■



「先生。何故兄を殺す必要があるんです」



所変わって、男子寮の屋上

ネイガウスさんへ雪男が銃口を向けていた


その光景を俺は気配を断ち、屋上の一角で傍観中

雪男、ぶっ飛ばされてるなぁ



「遅い」



瞬く間にネイガウスさんは詠唱を唱える。この詠唱は…



「ククク…コイツは私の持ち駒の中でも、最強級の屍番犬だ!!」

【マスター、どうすんの?参戦する?】

『………』



俺の視線の先には、屍番犬に苦戦する雪男の姿


……キャストは揃ったな


屍番犬に刀が刺さり、蒼い焔に包まれた



「てめェ!やっぱり敵か!!」

【あ!燐若君だ!】



黒凪が嬉々と声を上げる

燐は迷い無く、ネイガウスさんへと向かってく



「悪魔めっ!!」

「…ぐっ!!うぁっ!?」



ネイガウスさんが投げ付けた中身が燐に直撃、すると燐は途端に悶え苦しみ出す



【うわぁ…いくら燐若君の肉体が、物理界のだからって…ありゃ痛いよ】

「ククク…人の皮を被っていても、聖水が効く様だな。やはり本性は隠しきれないと言う訳だ」

「…聖水?そんなもんっ…」



聖水のダメージを気にする事なく、燐は再びネイガウスさんへと向かってく

しかしそれは屍番犬に阻止されてしまう



「ククク…」



屍番犬の手中で、燐は悲鳴を上げる

だがその刹那

燐を捕らえていた屍番犬は、煙の様に姿を消した



「何だっ!?」



慌ててネイガウスさんが、魔法陣に振り向くと

雪男が屍番犬の魔法陣の一部を、足で消していた



「ちっ!消されたかっ!!」

【雪男若君、やるぅ】



出来る子だからね雪男は、昔から

雪男に気を取られてたネイガウスさんは、首もとに刀が宛がわれる



『………』

「先生。もうそれ以上召喚しない方が身の為です。出血死したいんですか!?」



……あれ、手当てするのは俺かあ……



「お前は何者だ」

「…俺は、"青い夜"の生き残りだ」

「青い…夜…」



ネイガウスさんの言葉に、燐は瞳を揺るがせた

おや?誰かから聞いたか?



「俺は僅かな間、青焔魔に身体を乗っ取られ…この目を失い…」



ネイガウスさんはそこで言葉を切ると、眼帯を捲る

そこには皮膚が酷く焼け爛れた、痛々しい痕が

そして眼帯を戻し、再び言葉を紡ぎ始めた



「そして…俺を救おうとした近付いた、家族を失った…青焔魔はこの俺の手を使って、家族を殺したんだ!」

【…ボク、初耳】



……そうか。ルシファーにゃ話したが、お前はまだだったな



『黒凪には言ってねぇもん』

「赦さん…青焔魔も悪魔と名のつくものは全て!青焔魔の息子など、以ての外だァ!!」



……本当に、演技?ソレ……



【……若君達、どうすんのかな?】

『……さて、な』



首を傾げる黒凪

燐の事だ、バカな事でも仕出か………本当に仕出かしやがったよ


ネイガウスさんの攻撃を、敢えて喰らいやがった…



【……ちょっ、マスタァァ!?燐若君がっ!!】

『……相変わらず、馬鹿』



燐、お前は昔っから不器用で…優しいヤツだったな

ネイガウスさんは痛む腕を押さえながら、燐の隣で何かを耳打ちした



「………俺の様なヤツは、ごまんといる」



彼の言葉に、燐の表情が曇る



「覚悟しておけ……そして、自覚しろ。貴様の歩む道の険しさを、な…」

「えっ…!?」



荊の道


(……暫く絶対安静)
(ス…スマン…)


>他の人と違う道は険しい
11.10.14.

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