23:手間の掛かる双子

「ネイガウス先生」



夕陽が差し込む渡り廊下



「少しお話、宜しいですか?」

「…何だ」



雪男がネイガウスさんを引き留めた



「昨日。先生の行動は明らかに、試験の域を逸脱してました。一体どういう、おつもりですか?」



階段を降りながら、雪男はネイガウスさんを問いただす



「………」



そして階段を降り、ネイガウスさんの眼前まで来た雪男は、真っ直ぐ彼を見据えた



「いくら審査員のフォローがあるからといって…独断で生徒を余計な危険にさらして…試験そのものが破綻する所でしたよ。それに…」



雪男の瞳に、力が入る



「奥村 燐の炎(ちから)を生徒の前で、露見させる所だった…兄の力は我々一部の教員にしか、知らされていません。貴方もフェレス卿から、そう固く誓わされているはず」



立派になったな、雪男

あのネイガウスさんと、真っ向から…



「私の行動は、そのフェレス卿の命によるものだ…殺す気でやれと言われている」

「…何だって…」



彼の言葉に、雪男は目を見開く



「恐らく…君が彼の力のブレーキ役として選ばれたのなら、私がアクセル役といった所だろう」



燐の力は未だ、未知数

そして感情…彼の【心】に左右される



「全ては奥村 燐の能力を、より正確に把握する為だ」

「…どういう事です!?」


道化はこの試験を利用して、燐の潜在能力を把握したいのだろう



「どういう事も、何もない。あくまで今後、騎士団の"武器"として使えるかどうかを測っている」

「…っ」



そう。恐らく、道化はそう企んでいる

だが現時点でアイツの企みが謎なのも、また事実



「天才祓魔師の君は、只でさえ忙しそうだからな…せめて悪魔のお守り位、分担しようという訳だ」



……しかし。演技巧いよなぁ

アレなら絶対怪しまれねぇ


ネイガウスさんが団服を翻し、再び歩を進めた



「兄は。炎(ちから)や感情を、よく制御できていますよ」



そんな彼に雪男は、力強く語る



「少なくとも今は。貴方もその目で見たはずだ」



その瞳に宿る光は、とても強く

二人の信頼の強さが、手に取る様に分かる



「兄の能力を、侮らない方がいい」

「――あぁ。そうだな…」

「えっ?」



あ、口滑らした!……仕方無い、か



「何。本当に殺す訳じゃない」



進めていた足を止め、ネイガウスは雪男に振り返る



「安心すると良い」



そう言い残すとネイガウスさんは、再び団服を翻し、颯爽と去って行く

雪男は彼の後ろ姿を、複雑な表情で見つめていた



「………」



■■■



『主演男優賞モノの演技、お見事』

「止めろ」



いやいや、本当だって

転職して俳優出来るよ、マジでさ


ネイガウスさんと雪男の対話を、俺は柱の影で一部始終を聞いていた

不意に横目で、立ちすくむ雪男を見やる



『まぁ、コレで気付くとは思うけど』

「……逆に俺は雪男が心配だが。アイツは【溜め込みやすい】からな」



確かに…あの子は自身を二の次にして、感情を表に出さんからな

反面教師の影響か?



『…手間の掛かる双子…』

「…全くだ」



語らぬ思い


(……所で大丈夫だよね?)
(………あぁ)
(オイ、コラ。視線逸らすな)


>渡り廊下だよ、ね?

11.10.11.

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