21:好きにしろ

「…成長、したようだ」

『そら見て分かる』



試験後。手当てされながら、ネイガウスさんはポツリと呟いた

……口元、にやけてるよ



「…炎が倶利伽羅に、収まりきれていない。お前の読みは当たっていた」

『そか。じゃあ……』



手当ての手が止まる

ネイガウスさんを見やると眉間に皺が寄っていた



「……あぁ。かなり危険が伴うが、【自覚】をさせねばなるまい…」

『…【自覚】、か』



■■■




「くっそぉぉ〜!!」

『燐っ!お黙り!!』


「………はい」



強化合宿が抜き打ちの候補生認定試験と、知らされてから数十分

訓練生は手当てを受け、各自安静にしていた…燐を除くが



「まさか…抜き打ち試験だったなんてな…」

「すっかり騙されたなぁ」



訓練生の中で唯一、意識を失ってるしえみはベッドに寝かされ

その周りに京都組と燐が集まっていた



「少しは可能性、考えとくべきやったねぇ」

「あぁ…僕、大丈夫やろか?」



おー、おー

見事に落ち込んどるな、もう終わっちまったのによ



「アンタ達は大丈夫でしょ」



そこへ燐達より少し離れた所に、神木が椅子に座って燐達を見やる



「奥村先生は試験前…チームワークについて、強く念を押してたわ。
候補生に求められる資質は、【実践下での協調性】!」



祓魔師にとって、協調性は必須だからな

早めに自覚して貰わないと、後々大変な事になりかねない



「…それでいうと、私は最低だけどね」



神木の言葉を聞いた勝呂は、向かいのベッドにいる二人に叫ぶ。そういや宝と山田は、何もしてねーな

おぉ、喋った!初めて喋ったんじゃね、アイツら!!

…………山田君、ねぇ


つか燐。そんなに騒ぐと、しえみが起きるぞ



「ん…」

「あ…やべっ」



ほれ、言わんこっちゃねぇ



「わり、起こしちまったか」

「ううん、もう大丈夫…だいぶ元気になったよー」



まだ意識がはっきりしてねぇな。目、開いてねぇぞ



「みんな、何のお話してるの…?」

「試験のことについてな」

「一番の功労賞は、杜山さんやな」



確かに、志摩や子猫丸の言う通り

しえみのバリケードがなかったら、どうなってた事やら…



「杜山さんがおらんかったら、と思うとぞっとするわ。ほんまにありがとお」



……おいおい。勝呂が頭下げてんの、気付いてねぇぞ



「………え?そ、そんな…こちらこそ!」



あ、気付いた



「杜山さんは絶対合格やな」

「ハハ…でないと俺ら、全員落ちます」



……お前等、いい加減にしろ



『ったく。さっきから聞いてりゃ…何だ、お前等』

「は?」

『お前等は今、自分が出来うる限りの事をしたんだ。なら胸を張れ、何もしてねぇ訳じゃねぇんだ』

「………」



全員が呆けてる

てめぇの力全部出したんなら、それで良いだろ。ウダウダ考えてんじゃねーよ、ったく



『お前等はドンと構えてりゃ良いんだよ』



そこまで言うと、今まで呆けていた志摩が口を開く



「…ほんま…刹さんて、お姉さんみたいやなぁ」

『こんな一度に、弟妹増えて堪るか…って。どした、しえみ?』



何故だかしえみから、熱〜い視線を感じる

頬を赤く染めて、まぁ可愛い事……じゃなくて!何か嫌な予感…



「…あ、あのね?」

『ん?』

「…え、えと…刹お姉ちゃんって呼んで良いかなっ!?



彼女の突然の発言に、室内全員が固まったのは言うまでもない

………ちょ、待てや



『えー…と…、しえみ、さーん?』

「………そらええわ」



それに何故か、志摩が便乗してきやがった!



『おい、志摩?』

「刹さん、ほんまに俺らのお姉さんみたいやし。俺もお姉さん、呼ばせてもらお」

「志摩ずりぃ!俺もっ!!」



おい!本人の意思は無視か!?

つか燐も何言い出してんだ!



「ちょ、アンタ達!?」



…………これは…どうやら俺が、折れるしかなさそうだ



『ハァ………好きにしろ』



歩み寄る大切さ


(団結するのは良いが、こんなトコでするな)
(……そして、夜が訪れる)

>入った当初の夢主はどこ行った?

11.10.05.

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