20:-12year T

俺がこの世界に来て、一年

この世界について、粗方理解出来た


――…物理界と虚無界

――…祓魔師と悪魔

――…青焔魔と青い夜


――…そして、奥村兄弟



ったく。道化の野郎、何企んでやがる



■■■■■



『祭り?』

「ああ!どうだ、一緒にいかねぇか?」



獅朗さんはそう言いながら、無邪気な笑みを浮かべた


そうそう。獅朗さんと言えば彼による、ネイガウス宅不法侵入は無くなった

……俺がこっぴどく説教したからな


それと舌足らずな所は、この一年根性で何とかした!



『…祭り、ねぇ』

「燐も雪男も行きたい、って駄々捏ねてよぉ。だったら刹もってな」

『…今はやんちゃな盛りですからね…コンセントとか注意してます?』

「……おぉ…」



奥村兄弟は現在三歳、めちゃくちゃ動き回る頃である

雪男は身体が弱いせいか、そんなに動かないが…問題は燐だ。これがまた動く動く


獅朗さんは何故か、俺に育児相談を持ち掛けてくる

いや、俺だってんな詳しくねぇ。子守りの任務で覚えただけだし



「アイツらも喜ぶし、何より刹は祭りはまだだったろ?」

『……そういや』



この世界に来たのは夏の初め

だがてんやわんやで、祭りの存在すら知らんかったわ



「浴衣も着るか!おぉ、ならネイガウスも連れてくか!!」

『え、それ無理じゃ…大体ネイガウスさんに合う浴衣無さそうだし』



体格良いからな、サイズ合う浴衣ねぇんじゃね?

つかまず、連れてくの無理



「そこは任せろっ!」



■■■■■



「…………」

『……ウソだぁ。ネイガウスさんがいる』



数日後の、南十字男子修道院

そこには仏頂面のネイガウスさんがいた



『………因みに、一体どういった経緯で?』

「………仕事終了後に拉致された」



犯罪なりかけっ!!

何しとんだ、あの神父…



「おぉ!来たか!!」



来たか、じゃねーよ
…アンタいつか捕まるぞ…



「刹、着付け出来るか?」

『出来ますけど?』

「悪ぃんだが、燐と雪男の着付け頼むわ」



あぁ…そゆ事。しかし良く用意出来たな



『分かりました…喧嘩しないで下さいね』

「しねぇ!しねぇ!」



……ドアを閉めた途端、聞こえる言い争いは何だよ?

んな大人組はスルーして、俺は奥村兄弟に浴衣を着付けた

勿論二人の写真はバッチリ撮ったぜ!



「せつねぇ、とうちゃといーにぃは?」

『浴衣、着付け中』

「いーにぃも?」

『うん、浴衣だよ』



先程から出てる【いーにぃ】とは、ネイガウスさんの事だ

イゴールおにいさん、と俺がネイガウスさんを呼んでいたら、いつの間にか彼等がそう呼んでいたのだ


………獅朗さんは大爆笑してたが



「悪ぃ、悪ぃ!待たせたな!」

「とうちゃ!」

「コイツに手間取ってな」



獅朗さんの背後には、浴衣に身を包むネイガウスさんの姿

長身だからこれまた似合う事



「いーにぃ、かくいー!」

「かくいー!」

『"かっこういい"な』

「そ、そうか?」

「んじゃま。出掛けるか!」



と。五人で出掛けたものの

…祭り会場で燐と雪男が迷子になりました。お約束な…



『…出だしからコレかい』



仕方無いので俺達は、手分けして探す事にした

………見っけ



『っ!?』



境内の裏手に二人の気配を感じ、そこに辿り着いた途端

俺は背筋が凍った


何故、燐が地に伏している?

何故、雪男が泣いている?

何故、貴様等悪魔が…その子達の周りにいるっ!!


『"我が声に応えし者よ 汝の力を我が前に示せ! 堕天ルシファー"!!!』




ルシファーの攻撃に、悪魔達は一瞬に霧散

その気配を感じたか、ネイガウスさんが駆け付けて来た



「…刹」

『…二人は?』



顔を手で伏せながら、ネイガウスさんに問う

こんな表情(かお)、見せらんねぇ



「…意識を失ってるだけだ」

『…良かった』

「とにかく。藤本と合流しよう」



まつりとゆかたと


(途中野天のおっちゃん達に夫婦や親子に間違われた)
(………しまった。姿っ…)

>ネイガウス先生とちびっこツインズに、浴衣を着せたかった

11.10.05.

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