01:終わりと始まり

『………』



見上げる空は、灰色の雲に覆われ

一向に降り続ける雨は、まるで……



『…泣いてる様だ…』



遠くで鐘の音が、哀しく響き渡る

嗚呼、貴方は…逝ってしまったのか



「…風邪を引くぞ」



不意に聞こえた、低い声音

同時に身体へ容赦無く打ち付けられていた雨が、遮断された



『…【あの人】が逝った…』

「……あぁ」



隣の気配が揺れた

表情は揺らいでない


……相変わらずポーカーフェイスだな



『…【あの子】の気配が、変わった』

「…まさか…目覚めた、と言うのか?」



声音が戸惑う

雨は未だに止む気配が無い



『…どうやら、その様だ。
【二つ混ざり合う気配】を感じる』

「……そうか……」



そう呟いた彼は、口を閉ざす

晴れ間も見えぬ空を見上げながら、彼は瞳を伏せた



「……」

『……此れは俺の勘だが、【あの子】は【俺達の世界】に来るぞ』

「……馬鹿な……」



ゆっくりと彼は俺を見やる

その表情は、驚愕に満ちていた



『【あの子】は笑える程、馬鹿だったろ』



ニヤリと笑いながら、言葉を紡ぐ

彼は目を見開いて多少固まってたが、次第に苦笑を浮かべ始めた



「……確かに。【アイツ】なら選びそうだ…」

『だろ?』



きっと【あの子】ならば…

後ろ向きな選択や、保守的な選択をしない


前向きで…寧ろ、前向き過ぎて後に戻れない選択を選ぶ筈

【昔】からそういう性格だったからなぁ



「これから…忙しくなるな」

『ああ…【あの人】が命懸けで守った宝達を、守らねぇとな』

「気付かれん様に、な」



その言葉につい、肩を竦めてしまう

何時の間にか、雨は小降りになっていた



『それが一番、苦労する点なんだがなぁ…』

「何、奴等ならやり遂げる。【彼の息子達】なのだから」



うっすらと暗い雲の間から、晴れ間が差す

晴れ間に視線をやる彼に、俺も釣られて視線を向ける


まるでそれは、一筋の希望の様で…あの人を連想させた



『…そう、だな…』



運命なんざ、ぶち壊せ


(それに甘やかしては、成長するのもせんだろう)
(…最近台詞が父親地味てんの、自覚してる?)
(何っ!?)

11.09.02
11.09.03.修正

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