13:前に進めねぇぞ

「「きゃあああっ!!」」



突然、甲高い悲鳴が響き渡る

この声は神木と朴だ



「なんやっ!?」

「神木さんと朴さんの声や!」



つか風呂場かよ!

俺は雪男よりも先に、既に駆け出していた



■■■



『神木!朴!』



女子風呂に辿り着いてみりゃ、燐が屍と交戦中


更衣室では朴が屍の魔障を受けているが、手当てが施されていた

どうやらしえみが施した様だな…適切な判断で宜しい


神木は…嫁入り前の女の子が、何っー格好しとるっ!!

それ以前に…何かあったな



「刹っ!!」

『ちっ!』



神木を気にしつつ、そこらの籠を屍にぶん投げた



『"我が声に応えし者、汝の力を我に示せ!"』



一応設定上、手騎士候補だからな
なんか召喚しとかねぇと、教師陣に怪しまれちまう

それに雪男が来るまで、持ちこたえれば良い



【ガアアアッ!】



今回は召喚に成功した。現れたのは屍より一回り小柄なゴーレム



『屍を退かせ、人の子を救出せよ!』



俺の言葉を聞き、ゴーレムは燐を庇う様に屍に突進していく



「兄さんっ!!」



聞き慣れた声音と共に、複数の銃弾が屍に直撃する

弾丸を察知したか、ゴーレムは燐を抱えて屍から退避していた

…この子、見かけによらず良い仕事してくれんだよ。頭の回転も早いし


屍が立ち去った後、神木の姿が無い事に気付く…あんな格好だしな



「おい、大丈夫か?」

「見ないでっ!!」



どうやら神木は、ロッカーの影に隠れている様だ

燐の後ろから、彼女を見やる



「…悔しい…誰にも…見せられない…」



その表情は悲しみと悔しさに満ち、大粒の涙を溢していた

…神木は朴にだけ、心を許している節があったな…



「…何も出来なかった…たった1人の友達も…助けられなかった!嫌われた!!」



すると燐は自身が着てたシャツを、神木に被せる

…おまっ…尻尾どうやって隠すつもりだっ!?



「それ着て早く行け」



…ま。燐だからな…



『ほら、これも着な』

「………」



燐のシャツと一緒に、俺の羽織ってた上衣を神木に手渡す



『嫁入り前の女の子が、身体を冷やすな…それと。朴に嫌われたかは、本人にちゃんと聞いて判断しろ』

「でもっ!?」



神木の瞳が大きく揺らぐ…怖いのは分かる。だがここで甘やかしてはいかん



『立ち止まってたら、前に進めねぇぞ』

「……はい」



少々戸惑いがあったが、神木は薄く笑みを浮かべた

そうそう。女の子はやっぱ、笑ってねぇとな



『うし、良い子だ』



戸惑いと



(………やり過ぎ。)
(合宿の意味を理解して言っているのか、お前は…)

>夢主は根っからの姉御肌

11.09.16.

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