「すみませんでした、手伝って貰って」
「何水臭い事言ってんだよ、雪男」
「そうやで、奥村先生。アンタの悪い癖や」
放課後の祓魔塾に続く通路
僕は兄さん達と、足早に教室へ向かっていた
「あんな重たいもん、一人で運ばれたら先生が、怪我してしまいますがな」
「ほんまです。こういう時こそ、俺らを頼ってくださいな」
フェレス卿に押し付けられた荷物を運ぶ際、彼等は進んで手伝ってくれた
もし彼等が手伝ってくれなければ、授業に間に合わなかっただろう
――…教室の扉に手を掛けた、その時だった
≪刹さんは…す、す、好きな人っていますか!?≫
…………………………………
扉越しに聞こえた言葉に、僕達は身体を凍らせた
女性は恋の話をするのが好きとは聞いていたが…まさか祓魔塾(ここ)で聞くとは
しかも声の主は、神木さん…
「えらい時に、来てしもうたみたいですな…」
志摩くんが小声で漏らす
この室内に入る者は、恐らくいないだろう
≪ご、ごめんなさい!刹さんて大人っぽいから、もしかしたらって…≫
≪わ、わたしも!気になってました!!≫
≪…マジでか≫
「しえみもっ!?」
「奥村くん…杜山さんかて、女の子や。興味あるのは当然や」
確かにそれもそうだが…
≪俺的には燐としえみが気になる≫
≪わ、わたしと燐っ!?≫
一気に視線が兄さんに集中。兄さん、顔が真っ赤だよ?
≪わたしも気になってたのよね、アンタ達の関係。つか奥村と奥村先生、どっちが好きなの?≫
≪直球だな、オイ≫
≪うぅ〜≫
か、神木さん…ス、ストレート過ぎる…
≪………雪ちゃんはね、憧れなの………≫
≪へぇ。じゃ奥村は?≫
≪り、燐は、お、お友達、だよっ!?≫
………しえみさん。あからさま過ぎます
「杜山さん、分かりやすいわぁ」
「奥村?生きてるか?」
兄さん、真っ赤になりながら固まってる
≪あー、はいはい。分かったわ、分かったわ≫
≪神木はどーよ?志摩とか勝呂とか≫
≪はぁ!?何であんなヤツらっ!?≫
神木さんに話を降りましたね、刹さん…
≪志摩、くんは?≫
≪あんなエロ魔神、こっちから願い下げよ!!≫
「神木さん、ひどぃ…」
「えらい言われ様やな」
「自業自得じゃね?」
それは僕もそう思う
≪勝呂は?≫
≪なっ!?何であんな堅物で、真面目過ぎな、一々文句の多そうなヤツっ!?≫
≪詳しいね、神木さん?≫
僕も同意見です。やけに具体的ですね
≪喧嘩する程、仲が良い…を体現してやがる≫
「…坊、羨ましいわ」
「知らんわっ!」
「と、言いつつ。顔が赤いですよ、勝呂くん」
≪じ、じゃあ!刹さんは、どうなんですかっ!?≫
≪俺?好きなヤツいねぇぞ≫
…………………………………
≪≪ウソっ!?≫≫
≪嘘ついてどーする。恋愛には興味ねぇよ≫
「き、興味無いって…」
これには僕だけでなく、皆も驚いた…その証拠に皆ドン引きしてるし…
≪刹さん、キレイなのになぁ…≫
≪ありがと、しえみ≫
≪刹さん最近綺麗になって来たから、好きな人出来たのかと思ったのに…≫
「それは俺も思うた!刹さん、好きな人がおるんや!」
「そうかぁ?」
≪そりゃ残念だったな≫
……彼女の声音は、どこか寂しげだった
「本心、なのかな?」
ボーイズトーク
『さて君達。俺達に何か、言う事あるよな?』
「「「「「スミマセンでした」」」」」
『…全く…』
>ガールズトークの裏側
11.11.03.
mae tugi