雲一つ無い夜空に、霞んで見える星々と煌煌と輝く満月
事務所の窓から差し込む月光に、ふと懐かしい記憶が蘇る
「…そういや、唯が来たのも…こんな夜だったな…」
■■■■■
―…時間は過去に遡る
あの時も俺は事務所で一人、黙々と事務処理をしていた
「…あ?」
だが突然階下から響いた物音に、眉を潜める。この時間、この場所へ訪れる馬鹿はいない筈…そう思った瞬間
事務所の扉を勢い良く開けて、女が飛び込んできやがった
「なっ!?」
『…っ…アンタが、雛村、壮一郎か?』
「テメェ、なンで俺の名前を知ってやが…何だ、その傷は?」
良く見ると女は幾つもの怪我を負い、その腕には赤ん坊の姿が
『……ぃて、た…とおり、だね』
「お、オイッ!」
そう呟くと女の身体は、崩れ落ちる。間一髪で身体を支えた俺は、テメェの行動を信じられねぇでいた
「……なんで、たすけた?」
「フギャァ!フギャア!」
■■■
『てな訳で預かって』
「ふざけンなぁぁぁぁ!!!」
あれから数日
仕方なく俺は知り合いの医者に、女を預けた。怪我の手当てもそうだが、赤ん坊なんざどう扱えは良いか知らん
『就職活動だって』
「な、ん、で!俺なんだよ!?」
『アンタなら出来る!』
「話聞けぇぇぇっ!!」
このアマいい加減にしろ!
つか人の話を聞けよ、マジで!!すると女は何か、考え込む。こんな騒ぎで良く赤ん坊は泣かねぇな、オイ
『んー…そこのノッポ、ちとこの子抱いて』
女は無理矢理、一人の組員に赤ん坊を抱かせる。すると赤ん坊は火が着いた様に泣き出しやがった、さっきまで静かだったあの、赤ん坊がか?
「なぁぁ!?」
驚く俺達を余所に、女は組員から赤ん坊を奪い取る。そして俺に視線が……嫌な予感…
『んで次はアンタ』
「って待て!俺は……あ?」
女は俺に無理矢理、強引に赤ん坊を抱かせる。あんなに泣かれるのは勘弁……あ?笑って、る?
「…泣いてない?」
『この子、極端な人見知りでね。病院の人達も全員無理だった。アンタ以外』
「……………だが」
俺の腕には、笑みを溢す赤ん坊。天使の笑みとはこの事か?……いやいや、無理だろ!
『これが必要な荷物、中に扱い方のメモ入ってっから』
「聞けぇ!」
ソファにデカい鞄を置き、淡々と女は語る。だから無理だろ!
『名前はかなで、女の子。じゃ、宜しく』
言うだけ言って、女は扉から出て行きやがった。つかテメェ、名乗ってねぇぞ…
「……行っちまいやがった…」
狼と兎と豹の出会い
「…出会いからして、まず可笑しいよな…」
―――――
出会い回想。夢主は今も昔も、変わってません(笑)
11.09.15.
11.09.18.移転
mae tugi