『迎えに来まし…あれ、かなでは?』
「…園芸部と出掛けた」
『鳴海くんと?』
恒例のかなでの迎えに、唯が事務所を訪れた。つかお前、ココを託児所か何かと勘違いしてねぇか?デスクで書類と格闘しながら、俺は内心毒づく
「直ぐに戻ってくんだろ」
『ふぅん…じゃ待たせてもらお』
そう言うと唯は、ゆっくりと来客用ソファに腰掛けた。その表情には疲労の色が見え隠れしており、つい眉を潜める
コイツ、また無茶してんじゃねぇだろうな?んな事されたら、俺に皺が寄ってくるっの!
『四代目?』
いつの間にか俺は席を立ち、唯の側へ歩んでいた。見上げてくる瞳は虚ろで、どこか艶っぽく。つい俺は生唾を呑む
唯の外見は良い
艶やかな黒髪に、整った顔立ち。化粧もハデさはなく、それが本来の肌の色を際立て、薄く塗られた口紅が色気を醸し出して……って俺は何を考えてんだ?
だがコイツの顔色は、あからさまに悪ぃ。そっと頬に触れると、肌が荒れてやがった
『…よん…代目?』
「…肌、荒れてんじゃねぇか。また無理してやがったな?」
『四代目には、敵わないなぁ』
化粧で隠してはいるが、目の下には薄く隈の跡が残ってやがる…コイツは…
「寝ろ」
『いや、でも…』
「かなでが帰ってきたら起こす。どのみち、このままじゃぶっ倒れんぞ」
唯の目に手を宛がう
こうでもしねぇと、ぶっ倒れて後々厄介になるのが目に見えてら
『…じゃ…お願い、しよっか…なぁ?』
「っ!」
突然唯の身体が崩れ落ちる。何とか受け止めたが、その時既に聞こえ…顔を覗いて見ると眠っていた…早ぇよ…
「…ったく…」
■■■
「「…………」」
かなでちゃんとの買い物から帰ってきた僕は、事務所の静けさに眉を潜めた。そしてそっとドアから覗いてみれば…
あの四代目が、唯さんに膝枕をしてるではないか!えぇっ!?何がどうなってこうなるのっ!?
「どうしよう…」
「なるみにぃ、ママ、おねんね?」
「…みたい」
静かにね、とかなでちゃんに言うと、紅葉みたいな小さな両手で口を押さえた。可愛いなぁ…
しかし本当に困った。四代目まで船漕いでるし…
「ふたりは、らぶらぶ?」
「……それ、誰から教えて貰ったのかな?」
オイ誰だ、こんな言葉を教えたの
誰か安易に想像は出来るが、敢えて聞いてみた
「ひろにぃ!」
あの、女たらし!
余計な事吹き込みやがってっ!!
「マ、ママと四代目は、らぶらぶじゃないよ?」
「ちがうの?」
「四代目は、かなでちゃんのパパじゃないでしょ?」
この年だと難しい話なのだろう
見る間にかなでちゃんの眉は下がって、八の字を描く
「むじゅかしぃ…にぃにがパパになってくれないかなぁ…」
…槍が降る、槍が…
「…無理だと思う、ソレ」
狼と豹
「お前ら、帰ってっ…!」
「ママとにぃに、らぶらぶ〜」
「あっ!?」
「かなで?誰に教えて貰った?」
「ひろにぃだよ」
「後でヒロ、ぶっ殺す!」
―――――
後でヒロは、四代目にボコられます(笑)
11.09.13.
11.09.19.移転
mae tugi