「ふにゃっ!?」

「……ん?」



窓の外で紫電が流れた
その轟音に、かなでの肩が大きく跳ね上がる。デカい音だったからな、驚くのも無理ねぇ



「にぃにぃ…」

「夕立か」

「あめ、ふるの?」



窓から、かなでは不安げに外を眺める。その視線の先には曇天が広がっていた。こりゃ一雨くんな…と思ってた矢先に、再び稲妻が走る



「ふにやっ!?にぃにぃ!」

「…へいへい」



ったく面倒だ…んで俺がこんな事しなきゃならん。大体唯も唯だ、俺に預けるか普通?



「…にぃに…ママ、おそと?」

「……あ」



恐らく最近有名になってきた、ゲリラ豪雨だろう。こればっかは予報でも分からん事だ、仕方ねぇ



「にぃに。ママ、おむかえ」

「はぁ?」



この餓鬼、今何言った?
確かに今朝、唯は傘を持ってなかった。これで風邪でも拗らせたら厄介この上ない…

かなでは何っーか、キラキラした目で俺を見やがって。断ればぜってぇ泣くな

……今出掛ければ、アイツの退社時間には間に合う、か



「チッ…かなで、支度すんぞ」

「あいっ!」



■■■■■



『あっちゃー…』

「凄い土砂降り〜」

『こりゃ暫く止みそうにないね』



今日も無事に仕事を終え、帰路につこうと思った所にゲリラ豪雨
うわ、痛いなー。かなでを直行で迎えに行こうとしてたのに



「唯、かなでちゃんのお迎えどーすんの?」

『どーすべ?』



同期であり無二の友人である彼女は職場で、かなでの存在を知る限られた人物。後知ってんのは課長とお局様だけ、正直面倒だし



『風邪引けねーしな…』


厄介この上ない
このまま濡れて帰っても良いが、それで風邪を拗らせでもしたら、かなでに移る可能性がある。移らないにしろ風邪を拗らせたら、かなでは四代目に預けるしかない

どうしたもんかと悩んでいると雨音に紛れて、自身の名を呼ぶ声が聞こえた気がした

まさか……?



「ママー!」

『……かなでっ!?』



ピンクの雨合羽に黄色い長靴を身に付けて、水溜まりの水を跳ねて駆け寄ってくる愛娘の姿に、思わず身を固めてしまう。いやいや、何故にいる?

その後ろからは、面倒臭そうな表情を、全く隠そうもせず傘を差して近付いてくる、白狼が一人



「四代目まで…どーゆう事…?」

「ママ、かさないから、おむかえ!」



満面の笑顔で、かなでは私の傘を差し出す。確かにそれは見覚えのあるもので…だがどういった経緯でこうなった?



「迎えに行く、ってきかねーんだよ」

『スンマソン』



あぁ、かなでが駄々こねたクチか…安易に予想がつくよ



「ママ、にぃに!かえろ!」

『はいはい』

「…ったく…」



狼と兎と豹

「ねぇ!昨日の誰!?旦那っ!?」
『かなで預かって貰ってる』
「………因みに進展とかは?」
『全く無い』
「………サイデ」

――――――――
街中でちびっこが雨合羽と長靴着用を見掛け、出来た話
つか四代目が保父化…

11.09.11.
11.09.17.移転


mae tugi


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