「ここや」



錬次に案内され、やってきたのは京都屈指の老舗・四宮家

唯とかなでの実家でもあるソコは、こじんまりした店舗。だがその歴史を感じられるのが多々見受けられる



「案外小さいですね」

「代々の当主さん、んなガッツいた性格やなかったからやろな。品質に拘っとるのがこの店のウリやし」

「成る程」



外見じゃねぇ
和服を好む、その心を大切にしているんだろう

それは嫌いじゃねぇな



「ほんじゃ…」

「待て、錬次」



暖簾を潜ろうとした錬次を呼び止めた。アイツ、こんな所にいやがったのか…



「…そーう?なんや、表情、メッチャ怖いんですけど…」

「アイツにはカリがある」



少しは慌てて貰おうか?

なぁ、唯?



****



京に戻って、早いもんで数ヶ月

あての実家は京都屈指の和服問屋
歴史が長い分、分家等の確執もある訳で…戻ってからはそりゃ、面倒ったらありゃせんかったわ


せやけど、愚痴言うてる立場やあらへん
"約束"が…あての大切なヒト達との"約束"を守るんなら、あてはどないな事もせなならんのや



「女将はぁん!」

『なんや、騒々しい』



自室で伝票整理しとったら、突然響く悲鳴染みた声。最初の頃、問題起きてはこないな風に、皆が叫んでたわな

そないな事はさておき



『一体何事や?』

「お、女将はんに会わせ言うてはる男が…これがえらい目付きの悪ぅヤツで!」

『あてに?』



分家共が雇ったゴロツキやろか?

せやけど法的に手出し、出来ん様にした筈や。なら一体誰なんやろ?



『目付きの他に、何や特徴あらへんの?』

「…あぁ、そういや真っ白な髪しとりましたね。あの若い兄はん」



目付きが悪い、白髪、若い男
その特徴に身に覚えありすぎや

せやけど、なんでココにおるん?

あては気付いたら、部屋を飛び出しとった



「女将はん!」

『……………』

「漸く来たか」



暖簾を背後に立ってたんは、見間違う事あらへん…四代目や

そやった。錬次に迎え行かせたんやったの、スッカリ忘れとったわ



『っ…』



駄目や
我慢しとった涙腺が、今の今で決壊しおった

気付いたらあては、四代目に抱き付いてて



「………………唯」

『堪忍え…壮一郎はん、堪忍え…』



何度謝罪しても、足りん位や
四代目に全部押し付けてもうて、かなでの事も任せきりで…



「この、阿呆。行動する前に話せ」

『壮一郎はん…』



その強気な声音に、つい笑みを溢す

暫く会うてへん筈やのに、四代目とおると安心してまう



「ったく…泣くな…」



涙を拭ってくれとる四代目の指が優しゅうて、あての今の立場さえ忘れてまう

ほんま、あかんな
四代目といると、気ぃ緩み過ぎるわ



『…せやな』



狼の逆襲


((お、女将はんっ!?))
((誰なんや!ウチらの女将はんに馴れ馴れしぃ!))
((せやけど似合いやなー))

(((確かに…)))


13.04.25.

mae tugi


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