《――京都。京都》



駅構内のアナウンスが否応なく響き渡る

僕達はあれから錬次さんの案内で、京都へと向かった
驚くべき事に、あのアリスが二つ返事で了承した事。あれ程外に出るのを嫌がるアリスが…


駅を出た途端、蒸した熱気



「あつい…」

「堪忍な」

「で?何処に案内させんだ?」

「…せっかちやなぁ…こっちや」



錬次さんは有名観光地へ向かう道から、少し離れた所に僕達を案内してくれた

この辺りは観光名所が少なく、穴場的スポットなのだと錬次さんは言う



「ここら辺一体は老舗の店が建ち並ぶトコでな、質に五月蝿い連中の御用達に打ってつけの場所や」

「へー…」

「因みに向かうのはも少し先や」



そんな錬次さんの観光案内を横で聞いていると、近場の店から綺麗な和服美人の女性が出てくるのを目にした



「ナルミ君、あの女性(ヒト)綺麗だね!」

「……うん」



どうやら商談をしていた様で、その会話がこちらへと筒抜けとなった



「では今回はこれにて」

「はい。ほんまおおきに」

「話には聞いてましたが、いやぁ…四宮さんも大分落ち着いてきなはって何よりですわ」

『先の件、ほんまご迷惑おかけしました』



……………あれ?

この声、どっかで……



「ええよ。先代が逝ってもうてから、あんさんも苦労したやろ?四宮家の先代には縁がありますさかい」

『ほんま、おおきに』

「これからも」

『あんじょう、頼みます』



そうだ、間違いない

この声を、聞き間違える筈ない



『はぁ…上手い事いったわ』

「お疲れ様です、女将はん」

『何とかや』

「それでも軌道に乗り初めたんは、女将はんが居てくだはったからや」

『やめ、恥ずかしゅうて堪らんわ』

「女将はんらしいですわ…せや。迎え、どないすんです?」

『錬次に向かわせたわ、コッチも何とか安定してきたからな。もう話しても大丈夫だろ』

「…女将はん、標準語になっとります」

『………案外、抜けんもんやな』



その時だ
足元で小さな鳴き声が響いたのは



「かなで…」

「…ママ…」



やっぱり唯さんだった
でも一体どういう事だろう、あの姿は?それに四宮家って?



「…ママ、かなで…いらないの?」

「それはちゃうで。あれ、見てみ」



錬次さんが指座した先には、何故か苦悩してる唯さんとおぼしき人物

………苦悩?



『早うかなでに会いたいぃぃぃぃー!』

「女将はん、路上で叫ぶんは勘弁して下さい」

『………なんや、冷たいわ』

「聞き飽きました」



…………………唯さん



「そろそろ、かなでちゃん不足やから仕方あらへんわ」

「てか四宮家ってなんだ?」



その問いに答えたのは、外出で沈黙していたアリスだった



「関西、特に京都では屈指の老舗和服問屋だ、その系譜は江戸時代から続いていると言われている。彼女はその老舗の、第37代目当主の娘だ」



女豹のもう一つの姿


さっすが探偵の嬢ちゃんや、俺の出る幕あらへん

ほんなら案内するわ…その四宮家に


13.04.25.

mae tugi


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