「彩夏、帰りに寄りたい所があるんだけど」
「え、どこ?」
珍しく園芸部の仕事が早めに終わった後、僕は彩夏に切り出した
これから僕は四代目の代わりに、かなでちゃんの迎えに行かなければならない。本来なら義兄が行く筈だったのだが、急なアクシデントがあったらしく、お鉢が回ってきたのだ
「……てな訳。行く?」
「うん、行く!」
彩夏は、かなでちゃんを妹当然に可愛がっている。勿論僕もその一人だが。四代目から聞いていた場所へと向かうと、既に幼稚園の送迎バスが到着していた
「ね。今更だけど、私達が迎えに行って平気なの?」
「四代目が事前に幼稚園へ、連絡してくれてるから大丈夫だよ」
「良かったぁ」
義兄はこういう事は、しっかりしている。唯さんが四代目に、かなでちゃんを預ける理由はそこにあるかもしれない。と言っても、本人には未確認だが
「すみません。かなでちゃんの迎えに…」
教員の方と思われる人に声を掛けてみると、返ってきたのは笑顔
「あ、はい。園長先生から聞いてますよ。雛村さんが急なお仕事入ったから、代理を寄越すって」
「あ!なるにぃ!あやねぇ!」
流石四代目と感心していると、バスからかなでちゃんが飛び降りてきた
…うん、やっぱり和むなぁ
「かなでちゃん、迎えに来たよ!」
「四代目、急なお仕事入ったから僕達が来たんだ」
「そかー。いっしょにかえろ!」
この子は聡い
恐らく家庭環境からだろうが、同じ年頃の子供より聞き分けが良い方だ
だからこそ僕は、逆に不安に駆られる
「きょうね。おうたならったの」
「おうた?どんなうた?」
「んとねー…」
いや、大丈夫だ。だって…
兎と猫と栗鼠
「にぃに!ただいまー!」
「…だから…突進はすんな…」
「(四代目がいるんだ、不安になる必要はないよな)」
―――――
彩夏は何となくリスのイメージ…
鳴海がお兄ちゃん位置になってきた
11.11.04.
mae tugi