――時は、数年前に遡る



『……はなまる?あの、テストの採点で付けられる?』

「そりゃ花丸だろ。俺が言ってんのは店名だっつの」



かなでが3才になり、少しずつ固形物も食べられる様になった頃

俺は唯を連れて、はなまるに向かっていた



『あぁ…お店の名前が、はなまるなんだ』

「そう言うこった。結構知られてるラーメン屋なんだぜ、アイスが絶品で」

『………ラーメン屋でアイス?』



不思議そうに唯は、首を傾げる。まぁ気持ちは分からなくないが…



「…マスターの前で、言うなよ?」

『あ、うん…』



かなでが幼稚園位になる頃には、恐らく平坂組は今以上の規模になっている筈

万が一と言う可能性がない、とは言いきれねぇ
保険は多く掛けておいて、越した事はない。何よりマスターだったら、安心して預けられる



「着いたぞ」

『………ここ、か』

「先に話を付けてある、行くぞ」



いつもの暖簾を潜ると、マスターの張りのある声が俺達を迎えた



「よぉ、マスター」

「お、壮じゃねぇか」

「前に話してたヤツ、連れてきたぜ」



丁度仕込み中だったみてぇな
厨房に置いてあるデカいダンボールの中にはこれほどか、という程の野菜が



『初めまして、唯です』

「話は壮から事情は聞いてる。アタシも協力させて貰うよ!」

『ありがとうございます!』



マスターなら、そう言うと思ったぜ



「んじゃ。出会った記念だ、ほれ」

『……アイス?』

「新作、一番最初に食べさせてやるよ」

『わぁ…』



トントン拍子に話が進む事、進む事
唯とマスターが同い年っうのもあるからか?


「壮も食え」

「悪ぃな、ご馳走になるぜ」



カウンターに座り、マスターの新作を一口摘まむ

相変わらず美味いな

……ん?唯?考えこんじまってどうしたんだ?



「どうした?」

『ん、何かさ…一味足りない気がして…』

「…そうか?」



これで充分美味いと思うが…と、思っていたら

何故かマスターは、唯をガン見…一体どうしたってんだ?



「マ、マスター…?」

「一味足りない?そう、感じたんだな?」

『え、ええ…』



マスターの気迫に、押されつつも唯は首を縦に降る

するとマスターは、大きな溜め息を吐き出した



「私もな、一味足りない気はしていたんだ。だが何を入れればいいか、迷っててな…」



これでまだ未完成かよ!?

充分売り物になる美味さだぞ!?



『後味がね…んー…柑橘…柚子を使ったらどうかな?』

「柚子?」

『皮をすり落として、少しだけ練り込めば…』

「アクセントになるし、後味もさっぱりになるな」

『実はラーメンにも使えるでしょ?』



成る程、考えたな
流石料理が得意なだけある



「唯!ありがとな!」

『なんのなんの』



狼と女豹と鷹


(それから数日後、唯は花丸の常連となる)
(と同時に。マスターと唯がダチになった)

(俺がそれを知るのは、その数日後)

―――――
花丸面子との出会い、マスター編

年齢的に夢主と近そうなので、こうなりました(笑)
なんとなくマスターには、鷹をイメージ

11.10.18.

mae tugi


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