――それは唐突だった



『初めまして。君がアリスちゃんだよね?』

「その通りだ、唯さん?」

『やっぱり私の事をご存知とは、流石ニート探偵』



四代目と懇意にしている女性がいる噂は、僕の耳にも届いている
当然彼女の経歴は既に明白



『貴女に依頼をお願いしたいのだけど』

「僕に依頼?」

『そ。内容は"私の経歴を誰にも口外しない事"…勿論四代目にもね』



驚いた
僕が彼女自身の経歴を調べ上げているのを承知している上で、それを他言しない様にと依頼をしてくるなんて

しかしこれは依頼なのだろうか?



『まぁ依頼、というより懇願って言った方が正しいけど』

「理由を述べたまえ。僕にはそれを聞く権利がある筈だ」

『そうだね…』



するとどうだ!
彼女の瞳は一瞬にして、別人の様に変わったではないか!恐らく今の彼女が本来の姿だろう



『あてはいずれ、戻らなあかん。全てを片付ける為に…せやから知られてもうたら、名残惜しうてあかんのや』

「………………」



確かに彼女の言う事も一理ある
彼女の"生家"と彼女を取り巻く環境を考えれば、このまま伏しておくのが良いかもしれない

だが



「それで本当に良いのかい?君は」

『ええよ、あては。かなで、守る為なら』



強い、この女性(ひと)は
悲しい程に



「仕方ないね、そこまで言うのならば…その依頼、受けよう」

『おおきに』



女豹と子猫


(僕は…間違った選択をしただろうか?)
(けれど…唯さんの悲しげな表情を、僕は見たくない)


12.11.17.

mae tugi


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