夕食後(ちなみに、今日のメニューはハンバーグであった。こう、毎日毎日高カロリーなものを食べるのはいかがなものかと思う)、私たちは本当に彼女の泊まる客室に集合した。

彼女は付き人の男も誘うつもりだったのか、「パジャマパーティーですよ!」とはりきっていたが、当の本人はといえば、「あんまりうるさくしないでくださいね」と言って隣室に引っ込んでしまった。

「フラれてしまいました」
「いつもああなのか?」
「ええ、割と。夜はすぐに寝てしまいます」

彼女は寂しそうにそう言って、「もう気にしていないのに」と呟いた。

「もう?」
「いえ、なんにも。昔の話です」



結局、人生ゲームも大富豪も七並べもババ抜きもUNOも豚の尻尾もやったが、二人ではどうにも盛り上がりに欠け、というか、彼女が全てのゲームで惨敗をするので、日付を跨ぐ前にすることがなくなった。


「全然強くないんだな」
頭がいいから、こういうものは得意だろうと思い込んでいたのだ。彼女は特に気にする様子もなく、
「ゲームは苦手です。上手くいかないんです。人生と一緒」と答える。
あまりにも自然に組み込まれた、人生という大きなテーマに、思わず
「人生ゲームか?」と聞き返せば、
「ううん。そのまんま、わたしの人生。何度廻っても良い関係が見つけられない」と返ってくる。

何度も生まれ変わり、そのいくつかある人生のパターンを踏襲してしまうのが、先祖返りの宿命だ。
きっと、彼女には想い人でもいるのだろう。そして、その想い人は隣室の彼なのだろう。という、確信めいた何かがあった。

「珍しくマイナス思考だな」
「根はネガティブなんですよ」
「それは、しっくりくる」

慰めるように、冗談っぽくそう言えば、彼女も「でしょう」と笑った。


「どうしよう。まだ全然眠くないです」
「風呂に入ったらどうだ」
「もう入りました。…入りましたか?」
「ああ。だが、夏だから、何度入ってもいいだろう」
「じゃあ、お部屋の猫足バスタブでプールごっこしましょう」

と、意味のわからないことを言ったかと思えば、またソファーに、こてん、と横になった。
もしかしたら、このソファーを気に入っているのかもしれない。

「本当はもう、眠いんじゃないのか」
「ねむくないです」

強情だと思う。実際、その声は眠そうだった。

 

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