昨晩は、空が白むまで夜遊びをしてしまったので、メイドの控えめなノックで目が覚めたときは当然、太陽が昇りきっていた。
未だ眠い目を擦りながら、身仕度を整えて広間へ向かう。

ちらりと覗けば、メイドに「ブランチのご用意がございます」と告げられる。

「こんな時間に起きたのは久しぶりだな」
「蜻蛉様は幼い頃より朝がお早くていらっしゃいますので」
「遅いよりは、手が掛からなくていいだろう」
「別のところでお世話させていただいておりますけどね」

きっと、私のする悪戯のことだろう。
彼女は、家に数いるメイドの中でも私のことを幼い頃から知っている者で、現在進行形で私に困らせられ続けている者なので思わず笑えば、つんとした様子で「笑い事じゃありません」と怒られた。

「そういえば、客人は?」
「まだいらっしゃいませんが、ご様子を伺って参りましょうか」
「いや、私が行こう」

玉子は三人分温めていいか。と問われたので、「頼む」と答えて広間を出た。



彼女とその付き人の泊まっている部屋をノックすれば、付き人の方が「どうぞ」返事をした。

扉を控えめに開ければ、そこにはその付き人、蜂熊が立っていた。

「なまえ様は昨日のお疲れが祟り、まだ休んでおられます」
「それは…」

大丈夫とは言っていたが、やはり能力的に無理をさせてしまったのだろうか。守りが本分とはいえ、人を隠していたのだから、さぞ精神力を遣うのだろう。

「専門の医者を呼ぶこともできるが、」神妙な顔で提案すれば、男はなぜか笑いながら
「いえ、いえ、違うのです」と、否定する。

そのとき、奥から「蜂熊、どなたでしたか?」と彼女の声が聞こえてきた。


「なまえ様は、筋肉痛なのです」
「……筋肉痛」

 

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