結論から言おう、素晴らしい朗読だった。

終わってから数秒放心していた私は、はっとして隣を見れば、ここへ連れて来た彼女もまた、余韻に浸っていた。
しばらくぼんやりしていたが、ふう、と息をついてから「お昼にしましょうか」と立ち上がった。



昼食は図書館を出て、隣の公園の中にあるカフェに入った。


アイスコーヒーにガムシロップを入れていると、
「いかがでしたか」と問われたので、素直に「良かった」と答える。


「正直、その、舐めていたんだ。子供ばかりが来ていたから。だが、あの人が話し始めた瞬間、なんというか、世界が変わった」
「物語に引き込まれてしまうような、そんな話し方をしますよね」
「ああ、驚いた」
「まだ駆け出しなんですけど、一部の界隈では既に有名な方だそうです」
「そうなのか…」

あれで駆け出しとは、朗読の世界も奥が深い。と、単純に感動した。


「作品も作者も、全く知らなかったが興味が湧いた。少し難しい世界観だな、」
「…きっと、知らなくないですよ」

全く初めて聞く名前だったが、と頭にクエスチョンマークを浮かべながら記憶を辿っていると、「作者は、みやざわけんじ。今朝、眺めていました」とヒントがもらえる。

「ああ!えい、えいけつの……」
「朝」

思わず「そうだったのか」と呟けば、彼女は子供のようにティーカップを両手で持って微笑みながら「世界が繋がりましたね」と言った。


「ご飯を食べたら図書館へ戻って、本をかりてもいいですか」
「私も、読書感想文の本を探したい」
「良いものが見つかるといいですね」
「…選んでくれんのか?」
「お手伝いならできますよ」


 

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