「客人と夕食をとるのか」
「ええ、そうですよ。大切なお客様ですからね、どうか、」
「猫も被れんほど子供じゃない」
「あらまあ」


うちのメイドは、私を子供に扱いすぎるきらいきがある。

せっかくの夏休みも、客人が来るというので家に押し込められ、その客人にも五日も待たされた。集中講義があるとかで、それによって私の予定が五つ、無くなったのだ。
なんたるドS!調教のしがいがありそうだ!!とは思ったが、あらゆる方面から大人しくしていろと釘を刺されては、私だって猫を被るというか、仮面を外さざるを得ないだろう。


「待たせたな!我が性奴隷共よ!!」
「蜻蛉、静かに入ってきなさい」


広間にいたのは、私の両親と客人二人であった。


「こちら、みょうじ家のみょうじなまえさんと、そのSSのみょうじ蜂熊さんよ」


「初めまして、」と控え目な笑みを浮かべる女の、目線の高さに違和感を持った。
はて、いつもは私が見下ろす側ではなかっただろうか。

首をかしげたまま呆けた私に向かって、彼女は意味ありげに笑った。



その後、食事はつつがなく終わったが、
夏の課題が進んでいないことがバレてしまい、母の「みょうじさん、よかったら蜻蛉に勉強を教えてやってくれないかしら」という言葉に女が「ええ、ぜひ」と答えたことで、最悪な夏休みが始まってしまったのであった。

 

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