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期末考察最終日、生徒たちはこれが終われば・・・という目の前に迫る開放感に胸を躍らせていた。
だからと言って気を抜いてはいられない。何故なら彼らの将来がかかっているのだから―。

「滝!今日終わったらデートしよう!」

「はぁ!?何言ってるんですか先輩!!」

いつも通りの場所、いつも通りのメンバーで昼食を取っていると突然、小平太が満面の笑みで言い放つ。
またか・・・と一同は苦笑を浮かべるより他なかった。

「・・・雷蔵、今日少し本屋に付き合ってくれないか?」

「本屋ですか?構いませんよ?」

長次の聞き取れるか取れないかくらいの声を聞きながら、雷蔵は頷く。またもか・・・と文次郎と仙蔵は思うがあえて口には出さない。

「全くあいつら・・・。あ、伊作!今日お前、暇か?」

「今日はバイトもないから暇だよ?どうして?」

(・・・お前らもか・・・。)

バカップルの多さにげんなりしたような表情を浮かべる文次郎に仙蔵は苦笑を浮かべた。
目の前で繰り広げられているような行為をあまり好まないことを仙蔵は知っているので、バカップル達が羨ましいとは思わない。
そんな仙蔵たちが伊作たちから見れば熟年夫婦のように見えるのだった。

「お前たち、イチャつくのは勝手だが時と場合を考えろ?」

紙パックのお茶を飲みながら、仙蔵は腕を組む。
文次郎を指で指しながら肩を竦める。そんな仙蔵の指す指の先には眉間に深い皺を寄せている文次郎がいた。

「好きな相手をデートに誘って何が悪い!」

「・・・・・・小平太に同感。」

「悔しかったらお前も誘ってみればいいだろうが。」

三人に口々に言われたのが癪にさわったのか、文次郎は三人を睨みつける。小平太と留三郎にそれぞれ抱き着かれている(長次のみ肩に手を置いている)滝夜叉丸、伊作、雷蔵は成す術もなく仙蔵に助けを求めるような視線を送っていた。

「・・・上等じゃねぇか・・・この色ボケ共が・・・。」

ユラリとそれこそ剣道部の戸部先生並のゆっくりさで立ち上がった文次郎の目は正に鬼の目だった。
流石は、鬼の会計委員長。

「こら、文次郎。そこまでにしておけ・・・もうすぐ昼休みも終わる。」

普段から時間を気にする仙蔵は、腕に付けている時計を見ながら飲み終わったお茶のパックを綺麗に畳みながら言う。
きっちりとパックを畳む姿は、仙蔵の几帳面な性格を表していた。
「長次〜・・・次のテストは!?」

小平太の言葉に溜息を吐いた長次は英語だと答える。明らかに落胆したような小平太の頭を滝夜叉丸は苦笑いをしながら撫でていた。
そんな姿を可愛らしいと思いつつ見ていると留三郎たちの方はどうやら、世界史であるらしい。
二人で顔を見合わせて苦笑する姿にこちらも穏やかな気持ちになった。
仙蔵は、ふと文次郎を見上げる。
「・・・仙蔵、俺達の次のテストは何だったか?」

「古典だ・・・ちゃんと覚えておけ。」

フッと笑う仙蔵に文次郎は、そうか・・・と答えた。
その刹那、お昼休み終了の鐘が響き渡る。テストの後半戦が始まる現実に小平太や留三郎は憂鬱そうな表情を浮かべて制服に付いた埃などを払いて立ち上がった。それに続き、皆も同じように立ち上がったのだった。

「なぁ、文次郎・・・。」

「・・・何だ?」

一番後ろを歩いていた文次郎は隣を歩いていた仙蔵に名を呼ばれ、首を傾げた。

「私は・・・伊作たちのようにベタベタしたい、とは思っていない。むしろ、私達がしたら気持ち悪い。だが、私達は私達だ。この気持ちに嘘はないし・・・。」

一瞬だけ重なる唇。
そして、その一瞬に見れた仙蔵の滅多に見れない微笑。

「・・・こうしたい、と思うのは・・・お前だけだ。有り難く思え?文次郎?」

クスッと笑いながら仙蔵は、よく手入れされたちょっと長めの髪を揺らして前を歩いていく。
一方、文次郎の方は何が起こったのか理解するのに時間を要したらしく頭が理解したと同時に顔を真っ赤にした。

「仙蔵〜!?お、まえぇえぇえぇえ!!!!!!」

文次郎の叫びに耐え切れなくなったのか、心底可笑しそうな笑い声を漏らす仙蔵。
二人の間にあった一瞬の出来事に、二人以外知るものはいない。
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