食べ盛りとは実に不思議な現象であり、それは中高生の間に発生する。
男女関係無しに食べても食べても腹が減るのである。
それが食費を脅かすものであると知らずに、食べ盛りの子供たちは食べる。

「全くお前達は・・・。いくら食べ盛りと言ってもこの量は食い過ぎだろう?」

小平太が沢山の戦利品を抱えて戻ってきたのと同時に食事は始まった。
それぞれに(焼きそばパンは一人一つ)パンを手に取ると小平太にその分の代金を渡す。
仙蔵は留三郎と小平太の前にあるとんでもないほどの量に、こめかみを抑えた。

「それで太らないって言うのが凄いよね〜。小平太は運動部入ってるから分かるけど、留さんバイトだけだしね・・・あ、たまに柔道部の助っ人やるくらいだけど・・・。」

伊作も母親手作りの弁当を広げながら、不公平だ!などと言いつつもちゃっかり、小平太に買ってきてもらったプリンが弁当の隣に置いてある。
しかし、男子にとって太るという心配は無用ではないのかと女子に突っ込まれるだろう会話。

「んなことねぇよ!俺だってずっと機械と向き合って頭使ってるし・・・あのバイト始めた時は毎回頭痛がしたぜ・・・。」

しかも結構、腹が減る。と留三郎は断言する。彼のバイト先は駅前にある電気屋なのだが昔から機械を弄るのが好きだった為に今では社員より詳しく、社員やお客様にアドバイスをしたりすることが多くなった。普段は簡単な修理の担当である。

「お前が頭痛とは、な?」

留三郎の隣に座っていた文次郎が鼻で笑いながら、焼きそばパンを食している。これはまた一嵐来そうだと、他の六人はいそいそと自分たちの昼食を持って遠ざかった。
それと同時に始まる二人の喧嘩。

「それにしても滝ちゃんの手作り弁当は美味いな!いい嫁になるぞ?」

「先輩・・・私、男です。」

細かいことは気にするな!などと言っている夫婦漫才をスルーして仙蔵と伊作は長次たちに視線を移す。
滝と小平太を新婚と例えるならば、こちらは日本人なら誰もが理想とする夫婦に見えるのではないだろうか。

「中在家先輩、お茶どうぞ。」

「ん・・・、すまない。」

相変わらず聞き取れるか取れないかくらいの声ではあるが、雷蔵はきちんと聞き取っているらしく嬉しそうに笑んでいた。

「ねぇ、仙蔵・・・目の前に僕の理想の夫婦がいるんだけど・・・。」

「奇遇だな・・・私の目の前にも理想の夫婦がいる・・・。」

二人して、デザートのカスタードプリンとカボチャプリンを食しながら目の前の夫婦を見つめる。
未だに背後では罵声の飛び交う喧嘩が続いているが、ここだけは本当に平和としか言いようがない。
仙蔵と伊作、二人の間に若干の居心地の悪さが生まれ始めた。

「・・・・・・仙蔵〜!!!!」

「!?伊作、突然どうした?」

その直後、何故か隣に座っていた伊作が仙蔵の腰あたりに腕を回して抱き着いてきたのである。
その様は、犬がじゃれてきたような感じだ。
仙蔵は最初驚きはしたものの、同じような事を何回か経験しているので笑みを浮かべると、仕方ない奴だ・・・と伊作の頭を撫でる。
撫でられている伊作も満更でもなさそうでむしろ終いには、仙蔵の膝枕でウトウトし始めていた。

「伊作・・・?眠いのか?」

「んー・・・。」

眠そうな目を擦りながら伊作は緩く首を振るがコクッと下に一瞬下がる。もはや限界も近い。
すると、滝夜叉丸が気づいたのか自分の鞄を漁りだす。
しばらくして中から取り出されたのは、一枚の膝かけに使えそうな少し薄手の小さい毛布。

「良ければ使って下さい。それがあるだけでも若干ですが、変わりますし。」

滝夜叉丸の好意に甘えるとした仙蔵は、すまないと苦笑混じりに謝ると伊作にそっとかけてやった。仙蔵の膝枕で寝る伊作の姿は、満場一致で犬のようである。
それも成犬ではなく、まだまだ危なっかしい子犬。
伊作の寝顔を見つめていた長次と雷蔵、滝夜叉丸と小平太はクスクスと笑っていたが小平太がふと、

「こんな子供欲しいな!な!?滝?」

「はぁ!?」

と滝夜叉丸が赤面して反論している姿に噴き出してしまう。
それでもまだ背後の喧嘩が止まず、いい加減に仙蔵がキレて収拾がつくまで伊作は眠り続けていた。
昼休み終了のチャイムがなるまであともう少し――。






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