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「なんやねん、アレ」
「木兎光太郎が彼氏かもしれないと勝手に思い込んでしょぼくれる宮治」
「なんもせんからやろ」
「治も意外と本命には奥手だったんだよ」

あれから何時間かたって、放課後。部活に行くために更衣室にはいって、無心になってロッカーに向かっていればしょぼくれる治くんは何しとるん。さっさとしいや。と侑に言われる。
さっさと、と言われるもやはりもしかした、などと考えて辛くなる。
あまりにも重い雰囲気を出していたためか侑は痺れを切らして声を荒がれた。

「おい、クソサム。ええ加減にせえ。うざいわ」
「あ?やかましいわ。」
「言葉のキレもありもせん。そんなんやったらさっさと諦めてまえ。春高直前やぞ」
「…」
「…辛気臭い!!!あぁもえぇ。俺が確認したるわ」

その一言にバっと振り返れば侑は怖い顔をしつつ俺のケータイをもち操作を行っていた。あっという間に耳に当ててどうやら名前さんに通話を始めたようだった。

「あ!もしもし〜。ちゃいます。侑の方で、あぁ、サムの代わりに聞きたいことあって…え?治ですか?そこに…」
「おいごらクソツム!!」
「ぐぇっ」

脇腹に一発、蹴りを食らわせればケータイは宙を舞い、うまーく自分の手元に飛んできた。
すぐに自分の耳へとケータイをあてれば毎晩聴いている名前さんの声が聞こえてきた。

『もしもーし?宮侑くんー?』
「スンマセン、治です。」
『あ、治くんか〜。質問ってなぁに?なんかあった?』
「いや、たいしたことちゃいますし…」

そう伝えれば後ろからの視線がやたら突き刺さる。
もちろん睨んでいるのは侑でええ加減うじうじしとらんでさっさとしろ、迷惑じゃボケェ。と言わんばかりの圧力である。片方の角名といえばしれーっとしていて既に着替えも終えたようだ。

『ほんと?君の悩みは私なんでも聞いてあげるよ。宮侑くんからじゃなくて、君から聞きたいな』


「…!」


優しい声。気を遣っている。たかだか5ヶ月、しかもほとんどが電話、あったのは片手で数えられる回数。
ただの一目惚れだった。
それでもこの人が好きだとやっぱり思う。

「名前さん、今カレシおりますか?」
『こないだも言ったけどいないよ〜、私みたいなの好きになってくれる人いるのかがもう心配。』
「おります!!!」

ここにおる。あなたが好きだと言うやつが。
突然の大声に侑と角名、ほかにもろもろといる部員たちは驚いている。

「ここに、おんねん。」
『治くん?』
「俺が、あんたのこと好きやねん。好きになるやつ、ここにおんねん…」

振り絞るように出す声、正直こんなふうに伝えるなんておもっていなかったし、そんな予定もなかった。
せめて直接、春高で。なんてふんわり考えていたくらいだった。
勢いというのは怖いものだ。

「サムのやつこくりおったで」
「…勢いだったな、アレ。」
「角名、お前かていつもそんなんやぞ」

侑と角名が小声で話すも全部が丸聞こえ、電話先の名前さんは声を出さず、無音が続いている。

「スンマセン、勢い任せに出てもうた」
『お、治くん』
「でも、嘘じゃないです。IHで美味しそうにメシ食うてるあんた見た時からずっと好きや」
『…』

フラれてしまうかもしれない。
そう考えると寂しい。もう毎日の夜の電話も、次に会う予定も全てなくなってしまうのだから。
あぁ、タイミングミスったなあ。
もっとあとで、それこそ卒業前ぐらいに伝えれば春高で会う時キマづくなったりせんのになぁ。
そう考えて、少し気を落としていれば名前さんが話し始めた。

『私にはまだ恋というものが正直わからない。』
『だから、お返事は次の春高で』

「へ?」

『それまでに答えを決めるから、だから、待っててくれる?』

まるで、地面にしゃがんで泣いていた俺に同じ目線まで屈んで笑っているように話しかけてくれる名前さん。
電話越しだというのに、その声だけで優しさが伝わってくる。

「勿論です。えぇですよ。いつまでも待ちます。」
『いつまでもはながいなぁ』

じゃあ、部活だから。またよるにね。と言われてそのまま通話を切る。
切ったと同時に振り返り、騒ぎ立てた張本人を睨みつける。

「お、俺のおかげで関係が進んだなぁ!サム!」
「おのれはなにしとんねん!!!!おかげで公開告白になってもうたやんか!」
「まぁ、部内のやつ割と知ってるしいんじゃね?」
「角名ぁ!お前もや!」
「なんでだよ」

この後二人をどついていたら北さんにさっさと準備しぃ。と怒られた。
二人は飛び火だ!と文句を吐いていた。
俺は、こいつらのおかげで少しだけ関係が進んだことに感謝した。

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