「また、合宿しとる…」
「治、いこーよ。」
「ほっとけ角名。また名前さんや」
「誰がおまえに名前さん呼んでいいって言うたんや!?」
おぉ、おっかな。といって侑はその場から離れてサーブ練集を始めた。
侑を威嚇していれば角名にすかさずベシっと叩かれた。
「なに侑にあたってんのさ。」
「すまん」
「苗字さん?とちゃんと連絡続いてんでしょ?」
「せやけど、こないだは学校で告られた言うてたし」
「ふってたんでしょ」
「電話とかしたい」「すればいいじゃん」
「せやけど」「おまえは乙女か」
うじうじと考えてしまう頭ではどうにも全てが悪い方向へと進む。
どうして、遠い人を好きになってしまったのかと最近は考えだしてしまうくらいには。
「サーブしてくるわ」
「おー、ケガすんなよ。治」
「おん」
「なにあれ、どうしたん?」
「病んでる」「病んでるんか」
おい聞こえてるぞ。名物カップル。
***
部活が終わりさわっていなかったケータイを開く。
画面を見れば友人たちからの連絡に紛れて名前さんからの着信があった。
まだロッカーで周りには角名や侑、銀。その他にも部活の奴らがいることすら忘れて思わず電話をかけた。
ケータイから響く呼び出し音が鳴り続ける。
間違って電話をかけてきたのか。と思い切ろうとした時だった。
『ごめん!治くん用事だった?』
「っ!」
つい顔を赤くしたのだろう、周りの部員が驚いていたり、ニヤリとわらっていたり。
もちろん侑はニヤリと笑っていて、角名は関係ないと帰ろうとしている。
「いや!あの、電話かかってきとったから、なんや用事かなぁおもて…折り返したんやけどなんもなかったですか…ね」
『っえ!かかってた?まってね、あー!ほんとだ!』
ごめんね、間違って鳴らしちゃったみたい。と言われ、そらそうか。俺に用事なんかそうあるもんやないしな。と痛感した。
『部活終わったとこだよね?うちもさっき終わってさ。あー!木兎!それ私のだよ!』
「大丈夫ですか、忙しいですよね、スンマセン」
『あー、違うの。こっちも2日目終わってね。いま木兎がわたしのおやつ箱掻っ攫ってってね…あ今、雪絵が木兎確保した』
さすが雪絵。と電話越しでマネージャーの一人と話していて遠くからいいじゃんかー!と騒ぐ木兎光太郎の声がした。
『あ、ごめんね、話されちゃって。』
「イエ!電話とかしたいなぁて思っとったからかかってきてて嬉しくて…」
「なんや、治まだおったんか」
「き!北さん!」
『あ、もしかして部長さん来ちゃった?てことは多分ロッカーか!長話しちゃってごめんね!また電話しようね!』
「え、あ、はい」
お疲れさま!といってケータイから通話終了の合図がなった。
「さっさと着替えて寮に帰り。もう角名以外おらんで」
「え、おま、あったんかい」
「ずっといたよ。」
はー今日の鍵当番俺だからさっさとしてよね。
といってさっきまで帰る気満々やったやろ。と思いつつ素早く着替える。
最後の電話口の一言に心躍らせる。
沈んでだめな方向にすすんだ考えさえ自分ならどうにでもなるとおもってしまう。
「にやにやしとらんと、着替え、治」
「あ、ハイ」
いいとこで邪魔されてしもうたけど、それは北さんやからしゃあない。
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