02



「っん……!」


次の瞬間、再び奪われる唇。


「ん、っふ……は、ぁっ……んんッ!」


「名前……」



名前を何度も呼ばれながら口内を舌で貪られ、意識が遠退いては戻ってくる。

いつの間にか解放されていた両手で押し返してみても、男の胸板は想像以上に厚く硬い。


――そもそも、自分は拒みたいのか?

たった二度の口付けで、脳が、身体が熱に浮かされ、判断力が鈍っていく。

彼の瞳の蒼に、髪の金に、自然と目が行ってしまう。




「……ハン、蕩けた顔しやがって」


「っ、はぁ、はぁ……あ!?」


「恨むなら、脱がされやすい服を選んだテメー自身を選べよ?」


するり。

手で阻む暇もなく肩から落ちる衣服。

現れた鮮やかな色が際立たせる丸い膨らみ。

ブラジャーだけとなった名前の胸元を覗き込んで、プロシュートは思わず目を細める。



「ほう……見ねえうちにずいぶん成長したんだな。≪あるモンがねえ≫って言葉……ありゃ撤回だ。すまねえ」


「ッ、謝るなら離し――んっ」


「おいおい。それとこれとは話が別だろ?」



身体を密着させ、露わになった首筋から鎖骨にかけての肌を唇で食む。

夜に生き、なかなか外へ出ないからだろうか。

陶器のように滑らかな白い皮膚に浮き上がる、いくつもの赤い華。

それを満足げに見下ろしながら、男は不意に背へ回していた右手の指先でホックを外した。



「! 〜〜っ////」


「ククッ……なんとも思ってねえ同僚に見られんのがそんなに恥ずかしいのか? え?」


「ち、ちが……ひぁっ!? あっ、や、やだ……!」



刹那、手のひらによってグニグニと形を変える乳房。

不規則に訪れる両胸からの痺れに、快感を知らない名前はただただ翻弄されるばかり。


「やだ、だァ? ご丁寧に乳首尖らせておきながら、嘘言ってんじゃねえよ」


「ぁっ、はぁ、はッ……うそじゃ、ないぃっ」


「ハン! 相変わらず強情だな、お前は」



メローネのセクハラを言葉通り一蹴している女性とは思えない、扇情的な姿。

頬を赤らめ、開かれたままの唇から吐息をこぼし、細い腰をくねらせ、瞳には劣情が生まれた。

自分がそうさせている――これほど女の裸体を目にして、心が乱されることが今まであっただろうか。

吊り上がる口元を戻そうともせず、プロシュートがおもむろに胸元へ顔を寄せる。



「ふあっ、ぁっ……や、プロシュー、ト……っ噛んじゃ、ぁあ!」


「ん……甘いな」


赤く色づいた突起を舌先で器用に転がしながら、時折歯で弱めに噛んだ。

車内で反響する艶やかな嬌声をBGMに、柔らかさを堪能していた右手をつつとラインに沿って下へ這わせる。

そして、彼女は気付いていないだろうが、擦り合わされていた内腿を焦らすようになでた。



「おら、腰浮かせろ」


「ひ、ぁっ……やだ、っやだぁ……ん!」


「ッ……ハン、身体だけ正直になりやがって」



言葉と首では否定しつつも、迫り来る快感には勝てない。

少しだけできた隙間をつくように、ボタンを外していた男はボトムスの端を戸惑うことなく引き下げる。

身体に残るのは、彼女を捕らえる腰部のシートベルトと一枚の布のみ。


「はぁ、はあっ……っ! やあッ」


ジワリとシミのできた割れ目をピンポイントになぞれば、微かに震えていた肢体は一段と跳ねた。

しかし、このままではいけないと、ショーツまで脱がしにかかろうとする無骨な手を、力の入らない両手で名前は慌てたように掴む。



「? おい、どうした」


「は、ッはぁ……っも、もういいでしょ? プロシュートの気持ちはわかったから……!」


「わかったから、なんだ? セックスをやめろってか? 名前よお……それは虫が良すぎんじゃあねえか? お前にとって、オレが同僚としか思ってなかったのは知ってる。それなら、オレ以外の男にその心が向かねえよう、身体に刻みつけてやるまでだ」


「ッ!」



本気なのだ――そう悟ると同時に、やけに冷たい空気が秘部を覆う。

すぐさま隠そうと動く彼女の手首を掴み上げたのに対し、プロシュートは太腿の間の秘境へと忍ばせ――


「ひぁ、ああっ」


「ふっ……狭いな、お前のナカ」


クチュリと膣口に指を侵入させた。



「んんっ、はぁ……ぁっ、あっ……掻き混ぜちゃ……あん!」


「座席が濡れんのは気にすんじゃねえぞ? どうせ盗んだ奴だ。むしろ、もっとお前の匂いを染み付けてやれよ」


「! やらっ、そこ……そこつつかな、でぇ!」



上では乳首を弄り、下では中指と人差し指で膣壁を攻め立てる。

そして、トプリと溢れ出した愛液で陰核を濡らし、親指の腹で連続的に擦れば、さらにガクガクとし始める名前。


「ぁ、っは……プロ、シュートぉ……っ」


「ん? 甘ったるい声出して…………ククッ、わーった」



刹那、胸に埋めていた顔を離し、自分に快感をもたらしていた右手すら抜いてしまう男。

荒い息のまま彼へ視線を向けると、プロシュートはにやりと笑ってそのふやけた指二本を舐めてみせる。

ちらりちらりと薄暗い中でもわかる扇情的な赤い舌。

すると――カタンと小さな音を立てた心臓。


――あれ? 私……。



まさか今、プロシュートにときめいた?




彼女が動揺していると知ってか知らずか、彼が仕事用の服を狭い車内で脱ぎ始めた。


シャツから覗く逞しい胸筋。

半袖だからこそわかる、上腕二頭筋。

筋が浮き出た腕と手。

細そうに見えて、意外とがっしりした体格。

男だと改めて認識させられる、天井を向いたモノ。



バサリ、と布が擦れる音をどこか遠くで聞きながら、名前はプロシュートのすべてに息をのんだ。

それは、自分とは縁遠いと思っていた≪欲情≫で――



「ハン、どうした? オレの身体、見惚れるほどおかしいとこでもあったか?」


「ッ、ちが、見惚れたんじゃ……っぁ」


「ほーう? ま、花弁をヒクつかせてるココは、そうは思ってねえようだがな」


「!」



おもむろに両方の膝裏を掴まれ、開脚させられる。

それだけで焼き付いてしまいそうな視線に身を捩っても、男の力には勝てない。


ふと、皮膚がはっきりと捉える熱。

あらぬ方へと目をそらしていた彼女は、己の下半身――座席へと顔を戻し、


「〜〜っ待って!」


次の瞬間、叫びにも近い声を上げていた。

一方、今にも≪挿入≫しようとしていたプロシュートは、一瞬目を丸くしてから眉間にしわを寄せる。


「ハン、なんだよ。名前ともあろう奴が、ずいぶん動揺してるじゃねえか」


「う……だって、その……」


「あ? 焦らすんじゃねえよ」


「ッ……その、私……は、≪初めて≫、だから……っ!」



不意に訪れた沈黙。

とにかく何か反応してほしい――彼女が羞恥に堪えていると、突如聞こえたのはため息。



「お前、よくそんなんで今まで襲われずに済んだな」


「は? ちょっと、それどういう――」


「まあ、安心しろよ。できるだけ優しくする」


「――」



穏やかな声と共に、なでられる頬。

ニヒルではない、本当に美しい微笑みを見上げながら、名前は思考の片隅で思った。


――ああ、みんな、こうして騙されたのかも。



「だから、リラックスしろ」


腰に添えられた両手。

そして、再び先が愛液で潤う膣口に宛がわれた刹那。



「ひぁ、ぁあああっ」


いつもの何倍も押し拡げられるナカ。

凶器ともいえるそれにナカを荒らされ、翻弄され、入り交じる痛みと快楽でぐちゃぐちゃになりそうな名前。

ポロポロと涙を流す彼女に、プロシュートがその目尻から零れる水滴を舌で掬い、赤く染まった耳に囁きかける。



「名前……名前……、ッ」


「う、ぐすっ……ぁっ、ひぁ、っあん」



ゆるりと擦られていく肉襞。

歪んでいた名前の泣き顔は、徐々に快感を滲ませていった。


結合部から溢れ出すどちらのものかもわからない液体。


「はぁっ、はッ……あっ、そこ、やあ……!」


狭いにもかかわらず、彼は巧妙にいわゆる≪イイ場所≫を攻めてくる。

座席だけでなく、揺蕩う車体。

ギシリ、ギシリと耳を掠めた音に、プロシュートがほくそ笑み、腰を打ち付けながら口を開いた。



「なあ、名前。こんなにも車が揺れてっと、外からナニしてるかバレちまうな」


「!? や……っそう、いうこと……言わな、でぇ……やぁ、っ!」


「ッ、あ、コラ」



いつの間にか衝撃で外れていたシートベルト。

男の隙をついて、羞恥から逃げ出すように彼女がくるりと身体を反転させる。

そして、座席の上部――ヘッドレストに細く白い腕を回し抱きついた、が。



「おい……逃げんなよ」


「ひぅ、っ……はぁ、っあ、んんッ」



それは、よりプロシュートの心を掻き立ててしまうだけだった。

先程とは違う場所に当たる、一物の先。

さらに激しくなる揺さぶり。

うなじ、肩、肩甲骨と舌をねっとり這わされ、現れたのはこれまでにない高揚感。




「は、ぁ……はぁっ、ぷろ、しゅーと……わたし、何か、来ちゃ……!」


「く、ッ……奇遇だな、オレもだ」


「ひぁ、あっ、あっ……はげし、よぉ……やぁ、っ……、ああああっ!?」


「ッ名前……!」



奥で捉えた、何かの爆ぜる触感。

全身の痙攣に驚きを隠せないまま、ドクリと波打つ彼の性器に彼女はただただ感じ入っていた。










2ドアセダン・ラブ
思いがけないところから、恋は始まる?



〜おまけ〜



下に落ちた衣服。

車内を支配する淫靡な香り。

色めいた二つの吐息。



「……プロ、シュート」


「ん? どうした、名前」



いまだ繋がりあったままの二人。

髪を優しくなでられ、ナカが異物感でヒクリと蠢くのを自覚しながら、名前はおもむろに口を開いた。



「その……さっきまでの、意外に嫌じゃなかった、よ?」


「……は?」


珍しく、素っ頓狂な声。

背中がありありと捉える彼の胸板。

すべての感覚から意識を遠ざけさせようと必死になりつつ、彼女が赤面した状態で言葉を連ねる。


「いや、なんというか……さ。本当に嫌だったら、スタンドでプロシュートの頭殴り飛ばせばよかったんだし……でも、私の意識がそうさせなかったってことは……同僚以外としても、見てるのかな……って」


「……」


「っ、何か言ってよ」







「推測よりは確信だよな」


「え? ……ぁ、んっ!? ちょ、なんで元の大きさに……!」


「お前が煽ったんだ。確かめるしかねえだろ」


「ひぁっ、やあ、ッ……そういう意味で、言ったんじゃ――」


「名前。早く確信しろよ、オレが好きだって」


「!」



後ろから重ねられる唇と、徐々に動き出す腰。

明日仕事行けるかな――と妙な心配をしながら、名前は恋人(になるかもしれない男)のプロシュートがもたらす熱く激しい快感に身を委ねるのだった。










お待たせいたしました!
プロシュート兄貴の車内で裏でした。
リクエストありがとうございました!
こんなにもおいしいシチュエーションを、活かしきれたのかどうか不安ではありますが、捧げさせていただきます!


感想&手直しのご希望がございましたら、clapへお願いいたします。
Grazie mille!!
polka



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