01
※ギャグ裏




「たっだいま〜」



その日、メローネは上機嫌で仕事から帰ってきた。

と言っても、彼の場合落ち込んでいることの方が珍しいので、通常運転と呼ぶべきなのかもしれない。

今日も今日とてスタンドでベイビィを産み、滞りなく≪暗殺≫を終えた男は、いまだ新築の香りが漂う廊下を突き進みながら愛しい≪奥さん≫を探す。



「名前〜、名前ー! 名前ちゃーん、どこかなあ? どこに行っちゃったのかなあ? …………あ、見っけ! 名前、ただいまッ!」


「……はあ。あんたって奴は、何回私の名を呼んだら気がすむの……おかえり」


「え? 一回のセックスで、名前がやっらしー喘ぎ声と共にオレの名前を口にする回数ぐらいは……すみません、嘘です。謝るから! ジャッポーネ流の土下座するから! 包丁を両手に持つのはやめてェ!」



キッチンで行われるシュールな夫婦漫才。

以前、二人の上司――というより仲間であるリゾットが今に似た光景を見て、≪仲が良さそうで安心した≫と発言していたが、やはり仕事柄もあり常識という名の感覚が鈍っているのだろうか。

一歩間違えれば、家庭内暴力である。


だが、たとえ裁判が執り行われたとして、そこで勝つのはおそらく名前だ。

≪変態旦那に襲われかけた≫と主張すると、十中八九が納得してくれるのだから。

そして同時にそれは事実でもある。



「はあ、残念。メロンの串刺しができるかと思ったのに」


「……あはっ、そうはさせないぜ! 君がッ! ≪メローネとの赤ちゃん欲しいな……シて?≫と上目遣いでオレにおねだりするまで! 生きるのをやめないッ!!」


「(うるさいなあ、ほんと)……料理してるからリビングにでも行っといて」


「えーッ!?」



グチグチと聞こえてくる文句を振り切って、彼女は夕飯の仕込まれた鍋の火を調整し始めた。

しかし、いくら凶器で脅されても、己の欲望のためなら喜んでそちらへ向かって走る男――それがメローネである。


スレンダーな名前の後ろ姿。

珍しく髪は一つに束ねられ、露わになっているうなじ。

刻まれていく野菜と一緒に、トントンと規則的に奏でられる音。

嫌そうにしながらも、ちゃんと着てくれているピンクのエプロン。


まさに≪理想の奥さん≫。




「ねえ名前。ヤバい」


「何が」


「オレの息子が」


「……」



刹那、その場を覆い尽くした静寂。

しばらくして、ピタリと包丁を動かす右手を止めていた彼女が、背後を振り返ることなく口を開く。



「へー、やっぱりあんたって隠し子いたんだね。予想通りというかなんというか(棒読み)」



一方、そっけない態度を取られたにも関わらず、彼はにたりと口端を上げるばかり。



「も〜! 名前ったらイ・ケ・ズ! わかってるくせにぃ! そもそも、オレが子種を植え付けたいのは奥さんである名前だけだし……あ、まあ≪ベイビィ≫は別だけどさ、そこのところは理解してくれてるだろ? 第一、息子ってのは肉付きがいい名前のお尻に今擦り付けてる――」


「言わんでよろしい。言わんで」



当然ながら、男の言葉を切り捨てたと同時に、身体を鍋のある左側へ移動させた。

いくら淡々とあしらえども、(認めたくないが≪夫≫の)セクハラに堪えられるわけではない。



「もう……さっきも言ったけど、ご飯作ってるんだから邪魔しないで」


「……、りょーかい」



トボトボ

離れていく背中を一瞥して、少しだけ――本当にちょびっとだけ寂しい気持ちになってしまう。


――って、ここで受け入れたらメローネの思う壺だ……やることやらなきゃ。



そして、自分を心の中で叱咤した名前は、小さく頷いてから料理の続きをしようとおもむろに火を止めた、が。



「きゃ!?」


突如、脇腹から前に差し込まれた温かな二つの手のひら。

一体誰が――なんて疑問が湧くことは一切ない。



「ちょ……何してんのよ!」


「んー?」


「ッ……メローネ!」



憤る名前。

だが、夫の手が離れることはなく、むしろそれは徐々に上へ上へと這わされ――



「ひゃっ!?」


勢いよく外されたのは、シャツのボタン。

――ッ、この……!


大人しく引き下がったかと思えば、こういうことか。

肌が直接捉えた、エプロンの布地に彼女は肘鉄砲を食らわそうとする、が。



「!? ぁっ、やめ……っ」


ツーとうなじに添わされた舌。

そのぬるりとした感触によって、意志を奪われ、不意に力が抜けてしまう。





いつの間にか、服は上下ともども剥ぎ取られてしまっていた。

しかし、名前の首には相変わらず紐が掛けられ、細い腰にもピンクの布が回っている。



「ディモールト・良しッ! 名前の≪裸エプロン≫、完成〜!」


「っ……裸エプロンって、はぁ、はッ……ショーツは脱がないモノなんじゃ、ないの!?」


「あれ? 意外に調べてるねえ……さっすがオレの奥さん! ほら、こっち向いてよ」


「ッいや、絶対にいや……ぁ!?」



必死に抵抗を見せるも、やはり相手は男。

いくら一般的に優男と呼ばれるタイプであれど、メローネだってそれなりに力はある。

シンクから頑として離れようとしない彼女の華奢な肩を掴んだ途端、強引に自分の方へと振り向かせた。

そして――


「あはは、そっか、そういうことね……エプロンからでもわかるぐらい乳首尖らせちゃって可愛い……ん」


「っ! そうじゃ、な……あんっ」


にたにたと笑ってみせた彼は不意に布の上から、ありありと浮き出る突起を口に含んだ。

そのいつもとは異なる感覚に、慌てて身を捩るがしっかりと身体を固定され、逃げられない。


だが、同時にこの快感を享受している自分もいる。



「や、ッぁ……メロー、ネ、やめ……ああ!?」


「んんっ……ピンクになってるんだろうな、名前の」


「ちが、っはあ、はッ……そんなわけ、な……ぁ、やぁあッ」


ねっとりと舐められ、上唇と下唇で食まれ、時折歯を立てられる。

≪痛い≫という感覚すら、快楽に飲み込まれわからない。


しばらく名前の二つの赤い果実を交互に堪能した男は、ふと胸元から顔を離し、≪今の状態≫にクスリと笑みをこぼした。


「あーあ、オレが舐めたとこだけエプロンの色が濃くなって、すっげーエロい……このまま夜の≪お散歩≫にでも出かける? 街灯がいっぱいあるところとかさ」


「ッ……こんの……変態ッ! 色魔ッ! 好色漢ッ!」






「へえ……じゃあその変態で色魔な好色漢を旦那に選んだのは、だーれだ?」


「! っ////」


突如、スッとそらされる視線と、羞恥に塗れた顔。

そんな彼女を逃がさないように身体を重ねながら、紅潮する右耳の小さな穴へ赤い舌を入れ、クチュリと放つ言葉と共に鋭く攻め立てる。



「ね、名前。教えてよ」


「ぁっ……、……わ、たし」


「ん? なんて?」


「〜〜っあんたみたいな変態で色魔な好色漢を、選んだのは私! ッ、文句あるの!?」


ハアハアと息を切らしながら、こちらを真っ赤な顔で睨みつける名前。

ようやく変えようのない事実を認めた彼女に対し、喜びも込めて彼はにっと口端を吊り上げた。



「……ディモールト・ベネ」









それから、いきなり彼女の足元にしゃがみ込み、エプロンを左手で、左の内腿を右手で持ち上げたメローネ。


「はっ、はぁ……めろ、ね……?」


何を――まじまじと普通は見せることのない秘境を凝視され、か細い声で名前が言葉を紡いだ瞬間。


「ひぅっ……ぁ、やああっ!?」


ジュルリ、と淫靡な水音が耳へ届くと共に、骨盤を一瞬にして駆け抜ける電撃。

おもむろに舌なめずりをしたかと思うと、男は彼女の濃い桃色に色づき、己をヒクヒクと誘う秘部へと唇を近付けたのだ。



「舐めな、でぇ……ぁっ、はぁ、んッ」


「ん……美味い……ねえ名前、どんどん愛液が溢れてきてるよ? オレに吸われて興奮した?」


「いやっ……ぁ、っやら……ぁあ!」



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