02



それから、ようやくゲームは開始したが――



「あは、は……やっぱり難しいっすね」


まず、ノーペア(役なし)でペッシが脱落。


「あちゃ〜、やっちまったな」


次に、ゲームが得意のホルマジオはストレート(数字が連続の五枚)を出したものの、残念ながらその場ではもっとも弱く離脱。


「〜〜ックソが! 最悪な札ばっか出やがってよオオ……!」


彼の後に続いたのは、チームの中で一番表情が豊かと言える(ただし、喜怒哀楽の≪怒≫に限る)ギアッチョ。

ちなみに、役はワンペア(同じ数の二枚組、残り三枚の数字はバラバラ)。


「……うん、ここまで来れたのがむしろ奇跡だったんだ……」


少しでも期待した自分がバカだった。そう言うかのように、イルーゾォは己の手札――ツーペア(同じ数の二枚組が二組)を見てガクリと項垂れた。


「チッ、フルハウス(同じ数のカード三枚と、別の同じ数のカード二枚)か」


そして、淡々と舌打ちをし、眉間に深いしわを刻んだプロシュートが輪から抜けたことで――




ゴゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴ


残るは、リゾットとメローネだけになった。



「ね、リーダー」


「なんだ」


「……どちらが名前の唇を奪っても、≪恨みっこなし≫だぜ?」


「ふ……その言葉、後悔することになるぞ」



名前が慎重にトランプを配っていく。

それを二人が確認し、一度だけカードをテーブルの真ん中にあるものと交換した。



「……ふ、ふふふふ」


「どうした。お前からだぞ」


何事だと眉をひそめる目の前の男に、メローネは満面の笑みで己の手札を晒す。



そこには、連続した数で同じスート。

いわゆるストレートフラッシュだった。




「勝ったッ! 名前とのキッスはオッレのモノ〜!」



≪決定的な≫勝利を叫びながら、彼は心の中でほくそ笑む。

実はこの役、イカサマである。

さらに言えば、交換する真ん中のカードも小さな数字ばかりに変えていたのだ。

つまり、相手は役を出せても自分より弱いものしか出せない。



――ふふふふ、バレなきゃイカサマじゃないって誰かが言ってたからね……ああ、名前の唇、柔らかそうだな――



「待て、メローネ。喜ぶのは、オレのカードを見てからにしろ」


「え? あはっ、そんなの見なくてもわか――なんだってェェエエ!?」



浮かれ始めていたメローネの視界に映る五枚の手札。それは――




すべてスペードでA、K、Q、J、10。

ロイヤルストレートフラッシュだった。




「ったく、メローネの奴……まんまとリゾットの策に嵌まりやがって」


「え? 兄貴、策ってなんすか!?」



テーブルの前で仰け反るメローネを見て、嘲るように笑うプロシュート。

その言葉の意味がわからず、首をかしげたペッシの隣でイルーゾォがギョッと目を見開いた。



「……ハッ! まさか……!」


「ありゃあ二人とも、≪イカサマ≫だ」


「はアアアア!? メローネはやりそうだが、まさかリゾットもやってやがったのかッ!?」


「ハン、仮にも暗殺チームのリーダーだぜ? ま、そのリーダーすら、このポーカーで決めたんだけどな」




「「「!?」」」



まさかの衝撃的事実。

信じられないというような形相の若い衆に、紫煙を吐き出す男はにやりと口端を上げる。



「ふっ、まあ冗談はさておき」


「え、冗談っすか?」


「チッ……紛らわしいなア、オイッ!」


「騙されてんじゃねえよ、ガキどもが。……まあオレも、ずいぶん長い間このチームに腰を据えてるが、あいつのイカサマぶりと言ったら……なあ?」



ククと喉を鳴らすプロシュートに話を振られたホルマジオが、おおらかに笑いながら首を縦に動かした。


「おう! あれ、リーダーの得意技だぜ? あの人、真顔でえげつねェことするからよォ……ま! メローネもまだまだ若いってことだろ。ははッ、しょォがねェな〜〜!」






その頃、ショックから立ち直ったメローネは、信じられないと言うかのように右手を挙げて、絶叫する。


「ちょ、異義あり! 異義あり! 超異義ありィィイッ! リーダー、あんたまさか──」


「メローネ」







「≪恨みっこなし≫、なんだろう?」


そう呟く彼はいつもの天然で鈍感な雰囲気でもなく、任務を完遂していくような冷酷なものでもない。

珍しくその顔は、勝者の笑みに満ちていた。











Poker faceの真髄
イカサマだって、なんのその。




〜おまけ〜



「と、いうわけで……名前」


「んっ!」


真っ白になる最後の対戦者を置いて、抱き寄せたリゾットはその唇を奪う。


「はああ……」


「あの燃えた時間は、なんだったんだろう」



一方、やっぱり(リゾット)リーダーか、と項垂れる男たち。

そんな彼らに追い打ちをかけるかのように、名前の悲鳴が響いた。



「り、りりリゾットさんっ! どうして私、抱き上げられて……!」


「キスの後にすることと言えば、わかっているだろう? 妙な邪魔が入らないためにも、今日は≪ホテル≫にでも行くか。先日、ようやくそれなりの報酬が出たんだ……そうだな、少しマニアックなホテルを試してみよう。きっと、名前も楽しめるに違いない」


「ま、マニアっ……!?」



バタン

勝者と敗者。

それを分け隔てる扉の閉まる音が、強く冷たい木枯らしとなって残された者の心に吹き荒んだらしい。











お待たせいたしました!
連載ヒロインで暗チ寄り、リーダー落ちのポーカーでした。
bn様、リクエストありがとうございました!
安定のオチというかなんというか……な結末ですが、いかがでしたでしょうか。


感想&手直しのご希望がございましたら、どうぞ。
Grazie mille!!
polka



prev 

2/2
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -