※同僚ヒロイン
※甘裏
「あー、もう最悪!」
雨粒は地面に叩きつけられ、雷音が灰色の空を切り裂くように轟いていたその日。
不運にも仕事だった名前と、
「チッ……シャツが肌に張り付いて、気持ち悪いことこの上ねえな」
プロシュートの二人は、全身びしょ濡れという状態でアジトへ帰ってきた。
すると、慌てた様子で彼の弟分であるペッシがタオルを手に、玄関へと走り寄る。
「兄貴! 姉御! これ使ってください!」
「お、悪いな」
「ふふ、ありがとうペッシ……って、その呼び方はやめてって言ったでしょう? 大体、姉御肌なんて私には似合わないし……」
「う、すいやせ……っ!?」
ムスッと表情を変えた彼女に、謝ろうとそちらを向いた瞬間、ペッシは己の行動を後悔した。
いつも以上に際立つ、カラスの濡れ羽色をした髪。
相当走ったのか、上下する肩と吐息のこぼれる色艶やかな唇。
そして、天井からの照明でより浮かび上がる、胸元が透けた白シャツ。
「? どうかした?」
「いっ、いや!」
「おいおい。マンモーニのペッシもペッシだが、名前も隠せよ。≪お気に入りの奴≫、見えてんぞ」
「え……っ!?」
プロシュートが笑いながら放った言葉に一瞬首をかしげたものの、それが自分の下着だと気付いた名前はさっと胸元をタオルで覆った。
とは言っても、一度見た光景はなかなか忘れられないのが人間なのだが。
「ば、ばかっ! プロシュート……知ってたなら早く言ってよ……っ////」
「ハン、恋人の下着を見て何が悪いんだよ。ま、他の野郎に見せんのは気に食わねえがな。……ペッシ、今は誰も浴室使ってねえか」
「う、うん! さっきオレも含めた全員が使い終わったばかりだから、ゆっくり入れるっすよ!」
「……ほーう」
外はかなりの土砂降り。
風も冷たく、なんと言ってもこのままでは身体が冷えてしまう。
タオルでは追いつかない――弟分の返答で即座に判断した彼は、いまだ顔を羞恥に染めていた隣の彼女の腕を引いた。
「! ちょ、どうしたの?」
「風呂、入んぞ。このままじゃあ二人揃って三日は布団行きだ」
「え? そりゃ、お風呂には入るつもりだったけど、なんであんたに引っ張られて――」
「二人で入るからに決まってんだろうが」
「……、はあああ!?」
悲鳴が響き渡った直後、離れようと腕を振る。
だが、そんな抵抗をものともせずに、プロシュートは口元に笑みを湛えて歩き続けた。
「だ、誰か……ハッ、ペッシ! お願いだからっ、この兄貴を止めてえええ!」
「(姉御……それは無理っす)」
どんどん遠退いて行く二つの背中。
バタンとドアが閉まった音を聞きながら、ペッシは思わず名前に向かって合掌してしまっていた。
その頃、おもむろに服を脱ぎ始めた恋人の傍で、浴室から逃げる機会を窺う女が一人。
「(ドアの前に立たれてるから……プロシュートが浴槽へ入ったときを狙うしかない……)」
「おい名前。お前も早く脱げよ」
「! わ、わかっ……クシュン!」
言葉を遮って飛び出すくしゃみ。
背筋を駆け巡る寒気に自分の腕を両手で抱くと、そんな彼女の姿を見ていたプロシュートが上半身裸で近付いてきた。
「さっさとしろ。ほんとに引いちまうぞ」
「っ……で、も」
寒い。
温かいシャワーを浴びたい。
できれば一人で。
ジワリジワリと肌に密着するシャツに戸惑いながら、視線をタイル状の床へ落としていると――いきなりこちらへ手を伸ばした彼に、ボタンを上から外され始める。
「ッ!? ちょ――」
「名前、オレがお前とイチャつくためだけにここへ連れてきたと思うか? 違うな。どっちも風邪を引かなくて済むからオレはこの策を取ったんだ。……それがわからねえほど、お前はバカじゃあねえだろ?」
「……〜〜っきょ、今日だけだからね!?」
だから、あんたは先に入ってて!
胸元まで迫っていた両手を掴み、不満そうに顔をゆがめた男を問答無用で浴槽へと押し込む。
そして、自分と彼を隔てるシャワーカーテン。
数秒間が空いて、ズボンなどがこちら側へ落ちたかと思えば耳に届いた水音。
ホッと安堵の息を漏らした刹那、名前はあることを思いつく。
「(あ、今逃げれば――)」
「それと。もしここで逃げたりしたら、今晩は絶対に寝かせねえからな? 明日もお前はずっと布団の中だ。それでもイイって言うんなら、ドアを開けてもいいぜ」
「!? ぬ……脱げばいいんでしょ? 脱げば!」
もう覚悟を決めるしかない。
静かに落胆した彼女は、押し寄せる羞恥を抑えそっとシャツに指を添えた。
「あ、開けるよ?」
「おう」
ノズルが回された甲高い音と共に、シャワーが止まる。
それを確認した名前がおずおずとカーテンを横へずらせば――元から融通の利かなかった鼓動はさらに早くなってしまった。
普段は後ろでしっかり纏められているが、今は肩に垂れ無防備なブロンド。
額に張り付く輝いた前髪。
浴室特有の光で別の色を宿す蒼い瞳。
丸い水滴の浮かぶどこか婀娜やかな鎖骨。
スーツでは細身に思えるが、実は鍛え抜かれた胸筋や腹筋。
下は――あえて見ない。
しかし、一言で表すならば彼は≪美しかった≫。
「何してんだ、入れよ」
「う、ん……」
動揺を悟られないように俯いても、心臓は相変わらず本人の意思に従おうとしない。
その明らかに自分の方を向くことなくシャワーへ近寄った彼女に、プロシュートが笑う。
「ふ……なんだ? まさか、オレの身体見て緊張でもしてんのか? 日頃、嫌と言うほど目にしてるって言うのによお」
「そ、それとこれとは別です! ……ただ、やっぱりかっこいいなって思っただけ。プロシュートにとってはこんな褒め言葉、陳腐以外の何物でもないんだろうけど、さ」
浴槽の壁を見つめたまま、言葉を紡ぎ出した名前。
だからこそ、気付かなかった。
彼が驚きで目を見開いてから、嬉しそうに微笑んだのを。
「……そうだな。確かにそういう称賛は聞き飽きた」
「……(否定しないのがさすがと言うか)」
「けど、それはなんとも思ってねえ女の場合だ」
「え?」
次の瞬間、彼女を強引に自分へと振り向かせる。
そして、驚きで丸くするその目をまっすぐ捉えながら、プロシュートは静かに口を開いた。
「お前の言う通り、たとえ陳腐な言葉でも……愛しい女が口遊めば話は別だ。わかるな? tesoro mio……オレは今、名前にそう言われて素直に喜んでるってことだよ」
「! プロシュート……」
不安から安堵へ。
彼女の表情はかなりわかりやすい――とは言っても、実はそこ≪も≫好きな特徴だったりするのだが。
漂い始めた甘い雰囲気に、男はこのまま愛しい名前を抱き寄せようとするが、一つ気になることがあった。
「で、だ」
「ん?」
「五秒やるから、お前がバスタオルを巻いてる理由を答えろ」
「は? ……だって、さすがに見られるのは考え物だし、温泉とかじゃないんだからいいでしょ?」
「……チッ、五秒ちょうどで言い切りやがって」
浴室に響く舌打ち。
本当に嫌そうなプロシュートに対し、先程までの儚さはどこへやら。
彼女はグッと彼の胸板を押し、十分に距離を置いたところでボディソープを渡した。
「それ以上近付いたら、間髪入れずに殴り飛ばすからね?」
「はいはい。……ったく、ワガママなシニョリーナだ」
珍しくもすぐに引き下がるプロシュート。
その様子に首をかしげたものの、寒さには勝てないと名前はノズルを回し、お湯を頭から被る。
「……ふー」
――あったかい……こんなにもシャワーが愛しいと思える日が来るなんて……。
温度を取り戻していくのを自覚しながら、自然と口から漏れる安らぎに満ちた声。
髪をお湯で流した彼女が、もう全身を洗い終えたであろう彼と場所を交代するために振り返ろうとしたそのときだった。
「ひゃっ!?」
バサリ
突如、身体が覚える解放感。
浴槽の底に広がるバスタオル。
そして、その代わりと言うかのように、後ろから腹部に巻きつく見知った男の腕。
――……、≪殴り飛ばす≫と思ったなら!
近付いたらってちゃんと警告したじゃない、この破廉恥野郎――羞恥と怒りに心を任せて、名前は右手に作った拳を振り上げる、が。
「んっ……!」
それを狙ったかのように、脇に差し込まれる何か。
正体ははっきりと理解しているが、絶対に認めたくない。
「っ、プロシュー、ト……ぁ」
「油断しすぎだぜ? シニョリーナ……オレがお前と二人きりでナニもしねえと思ったのか?」
「はぁ、はっ……や、ん……!」
乳房を包む、泡まみれの手。
ピクリと揺れる華奢な肩に顎を置いて、プロシュートは赤くなり始めた耳に囁きかけた。
「オレを……いや、男を買い被りすぎんなよ?」
「ぁっ、はあ、っ……耳、ダメぇっ」
「ま、こうすると二人とも温まれるし、身体も洗えるし、気持ちよくもなれる。一石二鳥ならぬ一石三鳥だろ?」
「ん、ぁ……さい、ごは、っよけ……ひあッ」
いつの間にか、両手で胸を彼のやりたい放題にされている。
ぐにぐにと白い泡の中で形を変える自分のそれを一瞥して、彼女は色めいた息をこぼしながら必死の思いで男の腕に手を添えた。
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※甘裏
「あー、もう最悪!」
雨粒は地面に叩きつけられ、雷音が灰色の空を切り裂くように轟いていたその日。
不運にも仕事だった名前と、
「チッ……シャツが肌に張り付いて、気持ち悪いことこの上ねえな」
プロシュートの二人は、全身びしょ濡れという状態でアジトへ帰ってきた。
すると、慌てた様子で彼の弟分であるペッシがタオルを手に、玄関へと走り寄る。
「兄貴! 姉御! これ使ってください!」
「お、悪いな」
「ふふ、ありがとうペッシ……って、その呼び方はやめてって言ったでしょう? 大体、姉御肌なんて私には似合わないし……」
「う、すいやせ……っ!?」
ムスッと表情を変えた彼女に、謝ろうとそちらを向いた瞬間、ペッシは己の行動を後悔した。
いつも以上に際立つ、カラスの濡れ羽色をした髪。
相当走ったのか、上下する肩と吐息のこぼれる色艶やかな唇。
そして、天井からの照明でより浮かび上がる、胸元が透けた白シャツ。
「? どうかした?」
「いっ、いや!」
「おいおい。マンモーニのペッシもペッシだが、名前も隠せよ。≪お気に入りの奴≫、見えてんぞ」
「え……っ!?」
プロシュートが笑いながら放った言葉に一瞬首をかしげたものの、それが自分の下着だと気付いた名前はさっと胸元をタオルで覆った。
とは言っても、一度見た光景はなかなか忘れられないのが人間なのだが。
「ば、ばかっ! プロシュート……知ってたなら早く言ってよ……っ////」
「ハン、恋人の下着を見て何が悪いんだよ。ま、他の野郎に見せんのは気に食わねえがな。……ペッシ、今は誰も浴室使ってねえか」
「う、うん! さっきオレも含めた全員が使い終わったばかりだから、ゆっくり入れるっすよ!」
「……ほーう」
外はかなりの土砂降り。
風も冷たく、なんと言ってもこのままでは身体が冷えてしまう。
タオルでは追いつかない――弟分の返答で即座に判断した彼は、いまだ顔を羞恥に染めていた隣の彼女の腕を引いた。
「! ちょ、どうしたの?」
「風呂、入んぞ。このままじゃあ二人揃って三日は布団行きだ」
「え? そりゃ、お風呂には入るつもりだったけど、なんであんたに引っ張られて――」
「二人で入るからに決まってんだろうが」
「……、はあああ!?」
悲鳴が響き渡った直後、離れようと腕を振る。
だが、そんな抵抗をものともせずに、プロシュートは口元に笑みを湛えて歩き続けた。
「だ、誰か……ハッ、ペッシ! お願いだからっ、この兄貴を止めてえええ!」
「(姉御……それは無理っす)」
どんどん遠退いて行く二つの背中。
バタンとドアが閉まった音を聞きながら、ペッシは思わず名前に向かって合掌してしまっていた。
その頃、おもむろに服を脱ぎ始めた恋人の傍で、浴室から逃げる機会を窺う女が一人。
「(ドアの前に立たれてるから……プロシュートが浴槽へ入ったときを狙うしかない……)」
「おい名前。お前も早く脱げよ」
「! わ、わかっ……クシュン!」
言葉を遮って飛び出すくしゃみ。
背筋を駆け巡る寒気に自分の腕を両手で抱くと、そんな彼女の姿を見ていたプロシュートが上半身裸で近付いてきた。
「さっさとしろ。ほんとに引いちまうぞ」
「っ……で、も」
寒い。
温かいシャワーを浴びたい。
できれば一人で。
ジワリジワリと肌に密着するシャツに戸惑いながら、視線をタイル状の床へ落としていると――いきなりこちらへ手を伸ばした彼に、ボタンを上から外され始める。
「ッ!? ちょ――」
「名前、オレがお前とイチャつくためだけにここへ連れてきたと思うか? 違うな。どっちも風邪を引かなくて済むからオレはこの策を取ったんだ。……それがわからねえほど、お前はバカじゃあねえだろ?」
「……〜〜っきょ、今日だけだからね!?」
だから、あんたは先に入ってて!
胸元まで迫っていた両手を掴み、不満そうに顔をゆがめた男を問答無用で浴槽へと押し込む。
そして、自分と彼を隔てるシャワーカーテン。
数秒間が空いて、ズボンなどがこちら側へ落ちたかと思えば耳に届いた水音。
ホッと安堵の息を漏らした刹那、名前はあることを思いつく。
「(あ、今逃げれば――)」
「それと。もしここで逃げたりしたら、今晩は絶対に寝かせねえからな? 明日もお前はずっと布団の中だ。それでもイイって言うんなら、ドアを開けてもいいぜ」
「!? ぬ……脱げばいいんでしょ? 脱げば!」
もう覚悟を決めるしかない。
静かに落胆した彼女は、押し寄せる羞恥を抑えそっとシャツに指を添えた。
「あ、開けるよ?」
「おう」
ノズルが回された甲高い音と共に、シャワーが止まる。
それを確認した名前がおずおずとカーテンを横へずらせば――元から融通の利かなかった鼓動はさらに早くなってしまった。
普段は後ろでしっかり纏められているが、今は肩に垂れ無防備なブロンド。
額に張り付く輝いた前髪。
浴室特有の光で別の色を宿す蒼い瞳。
丸い水滴の浮かぶどこか婀娜やかな鎖骨。
スーツでは細身に思えるが、実は鍛え抜かれた胸筋や腹筋。
下は――あえて見ない。
しかし、一言で表すならば彼は≪美しかった≫。
「何してんだ、入れよ」
「う、ん……」
動揺を悟られないように俯いても、心臓は相変わらず本人の意思に従おうとしない。
その明らかに自分の方を向くことなくシャワーへ近寄った彼女に、プロシュートが笑う。
「ふ……なんだ? まさか、オレの身体見て緊張でもしてんのか? 日頃、嫌と言うほど目にしてるって言うのによお」
「そ、それとこれとは別です! ……ただ、やっぱりかっこいいなって思っただけ。プロシュートにとってはこんな褒め言葉、陳腐以外の何物でもないんだろうけど、さ」
浴槽の壁を見つめたまま、言葉を紡ぎ出した名前。
だからこそ、気付かなかった。
彼が驚きで目を見開いてから、嬉しそうに微笑んだのを。
「……そうだな。確かにそういう称賛は聞き飽きた」
「……(否定しないのがさすがと言うか)」
「けど、それはなんとも思ってねえ女の場合だ」
「え?」
次の瞬間、彼女を強引に自分へと振り向かせる。
そして、驚きで丸くするその目をまっすぐ捉えながら、プロシュートは静かに口を開いた。
「お前の言う通り、たとえ陳腐な言葉でも……愛しい女が口遊めば話は別だ。わかるな? tesoro mio……オレは今、名前にそう言われて素直に喜んでるってことだよ」
「! プロシュート……」
不安から安堵へ。
彼女の表情はかなりわかりやすい――とは言っても、実はそこ≪も≫好きな特徴だったりするのだが。
漂い始めた甘い雰囲気に、男はこのまま愛しい名前を抱き寄せようとするが、一つ気になることがあった。
「で、だ」
「ん?」
「五秒やるから、お前がバスタオルを巻いてる理由を答えろ」
「は? ……だって、さすがに見られるのは考え物だし、温泉とかじゃないんだからいいでしょ?」
「……チッ、五秒ちょうどで言い切りやがって」
浴室に響く舌打ち。
本当に嫌そうなプロシュートに対し、先程までの儚さはどこへやら。
彼女はグッと彼の胸板を押し、十分に距離を置いたところでボディソープを渡した。
「それ以上近付いたら、間髪入れずに殴り飛ばすからね?」
「はいはい。……ったく、ワガママなシニョリーナだ」
珍しくもすぐに引き下がるプロシュート。
その様子に首をかしげたものの、寒さには勝てないと名前はノズルを回し、お湯を頭から被る。
「……ふー」
――あったかい……こんなにもシャワーが愛しいと思える日が来るなんて……。
温度を取り戻していくのを自覚しながら、自然と口から漏れる安らぎに満ちた声。
髪をお湯で流した彼女が、もう全身を洗い終えたであろう彼と場所を交代するために振り返ろうとしたそのときだった。
「ひゃっ!?」
バサリ
突如、身体が覚える解放感。
浴槽の底に広がるバスタオル。
そして、その代わりと言うかのように、後ろから腹部に巻きつく見知った男の腕。
――……、≪殴り飛ばす≫と思ったなら!
近付いたらってちゃんと警告したじゃない、この破廉恥野郎――羞恥と怒りに心を任せて、名前は右手に作った拳を振り上げる、が。
「んっ……!」
それを狙ったかのように、脇に差し込まれる何か。
正体ははっきりと理解しているが、絶対に認めたくない。
「っ、プロシュー、ト……ぁ」
「油断しすぎだぜ? シニョリーナ……オレがお前と二人きりでナニもしねえと思ったのか?」
「はぁ、はっ……や、ん……!」
乳房を包む、泡まみれの手。
ピクリと揺れる華奢な肩に顎を置いて、プロシュートは赤くなり始めた耳に囁きかけた。
「オレを……いや、男を買い被りすぎんなよ?」
「ぁっ、はあ、っ……耳、ダメぇっ」
「ま、こうすると二人とも温まれるし、身体も洗えるし、気持ちよくもなれる。一石二鳥ならぬ一石三鳥だろ?」
「ん、ぁ……さい、ごは、っよけ……ひあッ」
いつの間にか、両手で胸を彼のやりたい放題にされている。
ぐにぐにと白い泡の中で形を変える自分のそれを一瞥して、彼女は色めいた息をこぼしながら必死の思いで男の腕に手を添えた。
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