03


「んっ」


刹那、触れ合う唇と唇。

今度は歯を当ててしまわないよう、彼女の口内へ舌を忍ばせる。


「ん、っふ……、ぅ」


「名前……」


時折漏れる艶やかな嘆息。

無意識に逃げようとする舌を追いかけ、絡ませる。



「ッんん……ぁ、っ!?」


「……止まんねえ」



自然と、手は名前の脇腹から胸にかけてに這わせていた。

ビクリと揺れる身体を一瞥しつつ、性急にかつ焦らすように上着のボタンを外していく。



「っ、はぁ、はっ……ギアッ、チョ……ひぁっ///」


力が入らないのか、いとも簡単にインナーを脱がせば、ブラジャーに隠された二つの膨らみ。

慌てた様子で彼女が手を使おうとするが、何事もなく両手首を掴む。

明かりに照らされ、白い輝きを放つ丸みが動きと共に揺蕩い、ギアッチョはまじまじと見下ろしながら呟いた。


「お前、意外に胸デケーんだな」


「ぁ……や、やだっ、見ちゃ、ダメ……!」


「無茶言うんじゃねえよ」


「ん、っ!」



奇遇にもフロントホック。

緊張を悟られないように、できる限り余裕の表情でそれを取り去る。


ようやく目にすることができた名前の乳房。

そして、荒い呼吸で上下する胸元を見た途端、


「ぁあっ!? や、ぎあ、ちょ……吸っちゃ、ぁッ」


順序など気にすることなく、左の乳首へと顔を寄せ口に含んだ。

嬌声と淫靡な音が鳴り渡る。


吸われたかと思えば、甘噛みされ、舌で転がされ――名前は恥ずかしさと混乱と現れ始めた快感に戸惑うばかり。


――私……なんだか、変……!


「は、ぁっ、あん……だめ、ぇっ」


収まることを知らない鼓動。

何かを求めて、腰が小さく揺れ動く。

ギアッチョは、それに目敏く気付き、少しだけ口端を上げた。


「オイ……なに身体揺らしてんだ」


「へ、? ぁっ……やだ、そっちは……ッ」


「スカート履いたテメーが悪い」


「やぁあ!?」



スカートの裾から右手を入れ、内腿をなでる。

こちらも忘れるなと言うかのように歯で突起を刺激すれば、当然ながら小刻みに震える肢体。


「ぁ、っや、はぁ、はあ……触っちゃ、やぁ」


「触ってほしくねえなら、なんでココ湿ってんだよ」


「ひぁッ」



下着越しに秘部を指先で擦る。

やめてほしそうに名前がいやいやと首を横に振ったが、布はジワリと濡れていくばかり。



「……これ、もう着けてる意味ねえな」


「!? やあ……っ///」


するりと剥ぎ取られ、足首にかかるショーツ。

それが羞恥心を助長して、懸命にギアッチョの肩を押してみるも、彼も男だ。

微動だにしない。



「暴れんな」


「ん、ぁ……っは、恥ずかし、のぉ……!」



陰核を弄られ、膣内を指で蹂躙される。

愛液が溢れ出していると、嫌でも自覚してしまう。

耳に届くクチュリクチュリといった水音。

自分のモノとは信じたくなくても、押し寄せる快感に脳髄がクラリとし始め、朦朧とする感覚。



「……こんぐらいか」


「っ、……ぁ、?」



突如、胸と秘部から消える刺激。

恐る恐る頭を上げると、目に映ったのは――



「!?!?」


いつの間にか、服を脱いでしまっていたギアッチョ。

鮮明に捉えてしまう身体に慌てて視線をそらしても、彼に頭を掴まれ、そちらを向かされる。

メガネも何もない、交わり合う互いの瞳。



「っ、ギアッチョ……」


シーツに縫い付けられ、肌と肌が掠めるたび震える名前の姿に、小さく眉をひそめた男はおもむろに口を開いた。



「……恐えのか?」


「ッ……」



コクン

頬を赤らめたまま頷いた彼女に、何を思ったのかギアッチョがその手を掴む。


「! あ、え?」


右手が向かった先は、彼の左胸――すなわち心臓。


ドクン

ドクン


と感じるそれは、かなり速いようにも思える。

自然と、恐怖心はなくなっていた。


――緊張してるのは……私だけじゃ、ないんだよね。


≪信じろ≫。

音として鼓膜を震わせたわけではないが、真摯な瞳でそう告げてくれている気がした。



「……足上げんぞ」


「んっ」



抱え上げられる膝裏。

秘部がモノを感じ取り、ヒクヒクと誘い込むように動く。


「〜〜っ」


「!」


その熱さに思わず名前が彼の首に縋り付いた刹那――



「ぁ、っああ……!」


「ッ、名前……」


「はぁ、はっ……ん……ッふ、ぁ」



艶やかで生々しい音。

ナカが性器で圧迫され、侵されていく。

肩口に額を預け、痛みと快感の狭間で嬌声を上げる。



「く、ッ……動く、からな」


「っぁ、あっ……ぎあ、っちょ……ッやぁあ!」



抜き差しが繰り返され、気まぐれに貫かれる最奥。

蠢く肉襞は一物を離さまいと、きつく強く締め付けた。


「は、ぁんっ、はぁ……っ、や、ぁあっ」


ふと、遠退きかける意識と勢いよく押し寄せる快感。

漠然とだが、≪何かが来る≫と悟る。



「ぁっ、んん……も、ぁっ、あっ……、ッひぁあああ!?」


「名前、ッ……!」



性器とは違う、熱い液体がナカで爆ぜていく。

すべてが――意識や思考、理性でさえも終わってしまうような、ある種の終末感。


それを全身で覚えながら、快楽という名の痙攣と痺れに足先から脳髄までを委ねた。









「んっ……コンタクト、取れちゃった……」



情事後の雰囲気の中。

ようやく息を整えた名前は布団に包まれながら、ぽつりと言葉をこぼした。

一方、メガネをすでにかけ、天井をただまっすぐ見つめていたギアッチョは、右隣で呟く彼女にそろりと視線を向ける。


「……部屋にあんだろ? メガネ」


「えっ、と……実は、プロシュートに没収されちゃって」


「はア!? ッあのジジイ……!」


「ぎ、ギアッチョ! 寒いから、まだ出ないで……?」



ベッドから抜け出そうとした彼の腕を掴み、控えめに引き寄せた。


「……」


渋々振り返れば、直接突き刺す琥珀の瞳に跳ねる心臓。

どうしても、慣れない。


面と向かっては言えないが、今日のようなお洒落は自分の前だけにしてほしい。



「オイ」


「えっ?」


「……それでもかけてろ」



刹那、久しぶりに戻る感覚と重み。

景色の中にある縁でよくわかる――ギアッチョのメガネだ。

首をかしげながら彼を凝視すれば、ぼんやりとだが真っ赤な耳が見えた。



「ンだよ、その顔」


「! っううん、なんでもない! ありがとうギアッチョ……!」


「…………(ふいっ)」



いつもよりは霞む視界の中で、名前はそっぽを向いたギアッチョに対して、花が咲いたような笑みを浮かべるのだった。









レンズ越しの
可愛い≪あの子≫はメガネが似合う。




〜おまけ〜



「オイ、名前のメガネ返せ」


「は? ああ、あれならもうアジトにはないぜ?」


「はアアア!? まさか名前にずっとコンタクト生活させるつもりかよッ!?」


「ハン! お前がそうしたいならそうすりゃいいじゃあねえか。まあ、新しいメガネ買ってやるのも、お前の株が上がっていいかもしれねえな」


「! ……チッ」


完全に言い負かされた。

しかし、彼女の嬉しそうな笑顔を見るのはいいかもしれない。

紫煙を燻らせた男に背を向け、ギアッチョは部屋に向かって歩き出そうとした、が。



「それと、今日はリゾットがケーキを作ってくれるってよ」


「……ア? なんか祝い事でもあんのか」


「ククッ、安心しろ。夜になりゃあわかる」


意味深な笑みを残して去っていったプロシュート。

彼の宣言通り、夕食後にケーキは出された。



ところが。



「な、なんじゃこりゃアアアアッ!?」


「名前。お前は見ない方がいい(目を隠し)」


「?」


美味しそうなケーキを包む、真っ白なクリーム。

その上に刻まれた≪脱☆童貞≫という文字に、彼が発狂したのは言うまでもない。











大変長らくお待たせいたしました!
ギアッチョで眼鏡っ娘ヒロインとギャグ裏でした。
びすこ様、リクエストありがとうございました!
ちなみにサブタイトルの≪あの子≫はギアッチョ君とヒロイン、どちらにも当てはめたつもりです。


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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