La ragazza e specchio
※甘裏
※調教
※玩具使用






その日は、名前の恋人であるイルーゾォの誕生日だった。



「イル! 誕生日、おめでとう……!」


「あ、ありがとう名前……誰かに祝われるなんて、いつぶりなんだろ」



少しばかり目を丸くした彼が、照れくさそうに破顔する。

ありありと映し出された喜び。

その自分まで幸せになりそうな笑みに彼女は、



「ふふ……せっかくの誕生日だし、イルのお願いなんでも聞いちゃおうかな……なんて!」


と、無意識に紡ぎ出していた。


すると、なぜか男の顔色が一瞬で変わる。



「……マジ?」


「えっ? あ、まあ……うん。さすがにたくさんは無理だけど、ね?」


「わかってる。……なんでも、か」



素早い反応にコクコクと頷けば、すぐさま考え込み始めるイルーゾォ。

あまりにも真剣な面持ちを見て、名前は≪可愛い≫とだけ思っていた。



ガサッ


おもむろに部屋のタンスへ向かった彼が、≪あるもの≫を自分の目の前に差し出すまでは。



「……、何かなそれは」


あるもの――目に良くなさそうな鮮やかすぎるその色とそのグロテスクな形状の≪無機物≫に頬は言わずもがな引きつる。

一方、瞬き一つしない彼女に心配になったのか、男がきょとんとしつつ顔を覗き込んできた。



「何ってバイブだけど。名前、知らない?」


「し、知らないわけじゃないけど……っなんでこんなもの持ってるの!? イルの変態ッ!」


「ちょ、そんな養豚場の豚を見るような目で見なくてもいいだろ! ただ偶然、手に入れただけなんだけど……まあ、名前が≪どうしても無理≫って言うならいいよ。まだ新品だし、メローネの部屋にでも捨ててくる」


「ッ!」



咄嗟に恋人の腕を掴む、細く白い両手。


なぜ廊下へ出ることを阻んでしまったのか、自分にもわからない。

だが、紅潮しながら下唇を噛んでいる名前は、かなりの負けず嫌いでもあった。

自分が言い出したということで、撤回したくはない。

そのような想いから、彼女は男の手にあったひやりと冷たい代物を勢いよく奪い取ってしまう。



「あ」


「つ、付ければいいんでしょ!? 付ければ! トイレ行ってくる!」


――だ、大丈夫。少し股が擽ったくなるだけ……大丈夫だよ名前。落ち着かなきゃ。


終始心へ唱え続ける、呪文のような言葉。

だからこそ名前は、己にとんでもない未来――≪後悔≫と≪快感≫が待っているとは、微塵も考えていなかったのである。











――いつもは全然気にしないけど、今だけは思っていいよね。叫んでいいよね……リーダーの、バカァアアア!



「はぁ、はぁ……、っ! あん……!」


乱れた呼吸。

下腹部へ集中する意識。

スカートに潜む無機質な低音。


羞恥に塗れながらなんとかモノを秘部へと挿入した名前は、それから運悪く仕事が入ってしまった。

しかもイルーゾォと二人で。


誕生日に仕事――とも感じないことはないが、残念ながら暗殺者に≪バースデー休暇≫はない。



「ターゲット発見。名前のスタンドのギリギリ射程範囲かな……、……名前?」


「っ、ん……はぁっ、ぁ、はぁ」


「? どうしたんだよ、名前。息なんか荒げて」



鏡の向こうで睡眠を取る要人をちらりと見てから、男が素知らぬ顔でこちらを振り向く。

一方、怪訝そうな視線を感じた彼女は目尻に涙を浮かべつつ、キッと恋人を思い切り睨みつけた。



――≪自分は関係ない≫、みたいな顔して……!


普段は、任務においても彼と過ごす時間は名前に癒しをもたらすのだが、今回はそうもいかない。



「〜〜ッそれはイルが……」


「オレが?」


「へ、変なことお願いし……、きゃうっ!」


「?」



突然の鋭い刺激に、漏れる悲鳴。

機械特有の予想できない動きが、すでに充血した肉襞を犯していく。

背筋を突き抜ける快感に脳内で火花が弾けた。



「や、ぁあ……ぁっ、んん……っふ」


「名前?」


「わ、わかってる……!」



今はこの襲い来るモノより、任務遂行だ。

一歩進むだけでも、生まれたての子鹿のようにガクガクと膝が震える。


――堪えなければ。

できる限りターゲット一点に集中しながら――彼女はその場で≪スタンド攻撃≫を仕掛けた。










「お疲れ。たぶんもう少しだから」


「う、ん……っぁ」



数分後。

鏡の世界を覚束無い足取りでイルーゾォを追う名前の姿が。


薄暗くてわかりにくいが、トロンとした瞳。

これでもかと言うほど上気した頬。


正直、鼻腔を擽る鉄の香りより、全身を解放しては唐突に支配してしまうこの快感をどうにかしたい。



「んっ、ふ……、ぅ、っ」


せめてもの抵抗と手の甲で口元を塞ぎながら、ふと彼女が顔を上げ、少し前を行く彼の背を見据えた。

――……なんでだろう。すごく、ドキドキする……。


鍛えているらしいが、相変わらず細身な躯体。

独特の服の裾から伸びる筋張った腕や手首。

結われた黒髪の間から浮き出る首筋。



「っ//////」


男のすべてに、欲情してしまう。

激しい鼓動を抑える術がない。



「……、イル」


「ん? あ、お待たせ。部屋に着いたよ」



視界には、見慣れたインテリア。

鏡から室内へ足を踏み入れたイルーゾォが、優しい笑みでこちらに手を差し出してくる。


さらにドクドクと暴れ始める心臓。

小さく息をのんだ名前は、なんだかんだ言って自分よりは大きな手のひらにそっと右手を重ね、



「イル、っ!」


「え、ちょ、名前……!?」



まるで飛びつくかのように勢いよく彼の首へ腕を回した。

そして、仰天した恋人が口を開くより先に、それを己の唇で素早く覆う。



「んッ」


「ふ、っぁ、ん……イル、イル、っ……んん」


首元にまで伝う唾液。

室内に響き渡る淫らな音。

無抵抗なのをいいことに口内を貪り続ける名前。



「っん、はぁ、はぁ……ッ、ふっ、ぅ……ン」


官能が吐き出す熱に浮かされた彼女は、自ずとせがむように男のズボンへ内腿を擦りつけてしまう。


いつもはハグですら恥ずかしがる彼女が――その普段らしからぬ大胆さに、イルーゾォは密かに口端を吊り上げた。



「っは、ぁ、イル……お願い……」


「何?」


「この……オモチャ、抜い、ていい……? 私、イルのがほし、いの」


放たれたおねだり。

今にも踊り出しそうな心をなんとか抑えた彼は、恋人の細い腰に手を置きつつ、真面目な表情を装う。


名前を翻弄していたはずのバイブレーター。

いつの間にかそれは、動きを止められていた。



「名前。それってつまり、セックスがシたいってこと?」


「っ……、……うん。し、たい」



どこか必死さを織り交ぜた眼差しが向けられている。

しばらくして、首を縦に振る男。


「いいよ」


「! ありがと、っ」


「あ、今の状態じゃ大変だろうし、オレが抜いてあげる」


「……え、!?」



――そ、そんな……確かに力は入らないけど……!

自然と後退る身体。


そんな彼女の細腕をしっかり掴んだイルーゾォは、そのまま手を下へと誘導させた。



「ほら、早くショーツ取って」


「あ、う、えっと……さすがにそれは、っ」


「それから、スカート捲ってくれないと見えないよ」



強いられている。

しかし、そうはわかっていてもなかなか動き出せない。


明らかに躊躇いを表情に出す恋人に対し、彼がおもむろにポケットから≪リモコン≫を取り出した。

何の、だなんて一瞬で悟ってしまう。


「! 〜〜ッ」



もう機械に膣内を荒らされたくない――駆け巡った想いが直結したのか、名前は両手で下着を剥ぎ取ってから、指先でスカートの裾を摘まみ上げた。

刹那、露になった秘部を覗き込むように男が跪く。



「名前……もう少し。足開いて」


「ッ……こ、こう?」


「うん。ちょっと待ってね」



歪なモノを咥え込む膣口へ伸ばされる左手。

ピチャリ


その音が耳を掠めた瞬間、彼女は真っ赤な顔で口を開いていた。



「いや……っイル、みちゃ、やぁ……っ」


「そう言われても、見なきゃ取れないだろ……わ、グショグショだ。よく床に滴り落ちなかったな」



内腿の間に顔を埋められるか、埋められないかの状況で羞恥に堪える恋人。

その表情を一瞥して、ますます上がった口角。


クチュクチュ

玩具を掴んだイルーゾォは水音を立てるだけでなく、わざと粘膜を刺激しながら抜こうとする。



「だけど、こんな奥にまで突っ込んでたなんて、名前って意外にやらしいんだね」


「! ちがっ、違う! やらしくなんか……っや、あんッ」


「嘘はダメ。最初トイレで入れてくるって言ったのは名前でしょ?」



油断していたのか、突如グチュンと掻き混ぜられ、喉を晒した名前の下肢が小刻みに震え始めた。


さらに顔を出したのは、脊髄からゾクゾクと押し寄せる波。

次の瞬間――


「ひゃっ、ぁっ、ぁああ……!」



跳ねる肢体。

モノを左手に持ち、揺蕩う陰唇を凝視していた彼は、心に浮かんだ疑問をぽつりと紡ぎ出す。


「もしかして、今のでイった?」


「っ……////」


「そっか。名前って、そういう素質あるのかもね……、……思った通りだ」


「……イル? 聞こえな、ぁっ!」



聞き返そうとしたそのときだった。

男が愛液塗れの玩具を放り投げたかと思えば、自分をベッドへ引き寄せたのである。


そして彼女が目を白黒させている間に、そのスカートを剥ぎ取り、己のズボンもトランクスと一緒に取り去ってしまった。


さらに、ベッドへ腰を下ろしたイルーゾォは頬を赤く染めている名前に向かって微笑む。


「自分で挿入れられる?」


「え……、っその」



できない、と言いたかった。

だが、劣情を映した瞳の中にある≪命令≫に、心はすぐさま≪従うこと≫を決める。



「っぁ、ん……!」


膝立ちになった彼女は、促されるまま背を向けた状態で彼の腿の上へ跨った。

そっといきり立つ性器へ添える両手。


指先が捉えた熱にドキリとしつつ、名前はなんとか亀頭を陰裂へ密着させ――



「や、っん、……ぁっ、ぁっ……ひぁ、ぁあああ!」


「ッ……キツい……オレの食いちぎられるんじゃないかな」


「そん、なわけ……、っえ?」


天井を向いたモノを最奥まで飲み込んだことで、すぐさま動こうとするが、なぜか骨盤を両手で止められていた。

理由もわからず、彼女は焦らされているような感覚に陥り、無意識に腰を揺らしてしまう。



「い、イル? あの……んっ」


「ねえ名前、前見てみなよ」


「ぇ……、ッ!?」



おずおずと視線を移して、名前は大きく目を見開いた。

そこには今の状況をありありと表す姿見。

快楽に絆されて、気が付かなかったのである。


すかさず顔をそらそうとする恋人の顎を後ろから掴み、≪見ること≫を強制しながら耳元で囁きかけるイルーゾォ。


「オレたちさ……今どうなってる?」


「! そ、なの言えな……っ」



視界に映り込む結合部。

生々しいそれに肉襞はヒクヒクと蠢くが、自分が話すまで行為の再開を許可されそうにない。


気持ちいいところを突いてほしい――もはや快感が脳内の割合を占めている彼女は、覚悟を決めヒュッと息を吸った。



「っ、イルのが……、その、ッ」


「オレの、って? 詳しく言えたら動いてあげるよ」


「!? 詳、しくなんて、私……!」


「言えない? ならここで終わりかな。お互いに辛いけど――」


「い……っイルの!」


目の前にある鏡にいる男と女。

自分が求めているのは、背後の恋人が与えてくれる性感だ。


言わなければならない。

――恥ずかしくても、言わなくちゃ……。


「ん?」


「〜〜っ、あ、あつ、くて硬くて……っん、おっきい、モノが……わ、わたしの、っぁ、ぐちゃぐちゃなナカに、入ってて……!」


「(必死な表情で叫んで、ほんと可愛いなあ)……うん。で、それが今からどんなことするの?」



ズグリ

刹那、腫れ上がった一物が弱点を突き、名前の肢体は悦びに震える。

たった一度の動きでも、それは彼女に多大なる興奮をもたらした。



「はぁ、っ、あん……、……いり、ぐちから、しきゅ、こーまで……いっぱいズボズボ、っするの、ぉ!」









「いい子」


「!」



優しい声色と頭に温かな感触。

いつもされているはずなのに、ひどく心と子宮が疼いてしまうのはなぜだろうか。


調教されているのかもしれない――いや、それでもいい。


改めて鏡を見つめ、名前が口を開こうとした瞬間だった。



「っ!? やっ、ぁっぁっ……あん! い、イル、っいきな、りぃ、っ……やらッ、ぁ、はぁ、っふあ!」


「いい子の名前には、ちゃんとご褒美あげる……ココ、大好きだよな」


「はっ、はぁっ……う、んっ……好き、っおもちゃより、イルがい、いの……!」



嬉しいことを言ってくれる――首筋へ紅い華を咲かせつつ、激しく乱れゆく彼女のナカを容赦なく攻め立てる。

鏡には、接着部から飛び散る体液とそれによって色の変わったシーツが見えていた。


「っや、イル……待っ、れぇ! そこ、突いちゃ、っぁ……あんっ、んっんっ……わたひ、っ壊れちゃ、よぉッ」


「壊れる? はは、大丈夫だよ。名前って意外に体力あるし」


「っぁっぁ、やあ、ッ……そ、いう問題じゃ……きゃ、っぁあ!」



部屋に轟く淫靡な嬌声。

空気に滲む荒い吐息。

肉と肉がぶつかる音。



「……名前、ッ!」


「はぁっ、ぁっ……あ、イル……イル……っ」


身体の芯が痺れを訴えたことで、二人の動きはさらに鋭さを増す。



「名前……一番奥で出すから」


「ひゃ、ぁっ、うんッ……はっ、はぁ……イルの、っ熱くて濃いのちょうら、っぁ、っあ、ひぁ、っぁああああ……!」


「くッ……」



子宮内へと爆ぜる白濁液。

くたりとなった身体を汗ばんだ胸元へ預けながら、下りゆく瞼に意識を委ねようとすると、彼が自分を強く抱きしめてきた。



「……名前」


「はぁ、はぁっ、ん……な、に?」


「バイブ、気に入った?」


「!」



視線が、鏡越しに交わる。

少々苦悶を残しつつ、優しげに自分を見つめるイルーゾォ。

また一つ、トクンと音を立てる胸。


「……ッ(コクッ)」


まるでその眼差しと想いに促されたかのように、名前は静かに頷いてしまうのだった。










La ragazza e specchio
逸る鼓動、高まる興奮。








大変長らくお待たせいたしました!
イルーゾォに調教される甘裏でした。
リクエスト本当にありがとうございました!
ちなみに、タイトルはイタリア語で(文法が正しいかわかりませんが)、「少女と鏡」です。


感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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