Envy Borzoiの逆襲
※嫉妬甘裏




確かに、朝からリゾットは体調が悪そうだった。

それはもう、身体のあらゆる所からメタリカが飛び出すぐれえには。

しかも、オレを含めた全員が任務に出てたから、そんなリーダーを看病できんのはお前しかいねえ。




けど名前。

お前は誰の女だ?


他の奴に同じ笑みを向けてんじゃねえよ。









「?」


プロシュートが帰宅した時、アジトはやけに静寂に満ちていた。

いつも決まってお出迎えしてくれる恋人――名前の可愛い足音もない。


――買い物か?



心を占める≪残念≫という気持ち。


「チッ……先に報告行くか」



駆け寄ってきた彼女を強く抱きしめたい気分だったのが、仕方あるまい。

軽く舌打ちをした彼は、一人残っているであろうリゾットへ報告のため、渋々ながら一室へ向かうことにした。





しかし、目的地である扉の反対側から耳を掠めるはずのない女の声が聞こえた瞬間、足はピタリと止まってしまう。


――名前?



なぜ彼女がリゾットの部屋にいるのだ。

自己主張を始める鼓動。

騒ぎ立てる胸に、収まりがつけられない。

何をしに来たのかさえ忘れて、ただただ黙り込んでいると――



「……名前、これはわざとか?」


「あはは、違う違う! 風邪の時にはリゾット――お粥が一番なんだよ?」


「ふむ……ならばいただこう」



交わされている談笑。

自然と寄せられる眉根。

嫌でも伝わる風邪という情報。


今すぐ目の前のドアを蹴破りたいが、脳髄が働かない。

だが、男が呆然と立ち尽くしている間にも、二人の会話は続く。



「ごちそうさま」


「お粗末さまでした! あ、そうだ。背中拭こうか?」


「いや、遠慮する」


「どうして? さすがにリーダーの長い腕でも届かないところがあるでしょ?」



そう言って、タオルを手に取る名前。



「……」


自分たちはチームだ。

当然、誰かが風邪を引けば看病はするだろう。

≪情がない≫やら≪金のためにしか動かない≫やら揶揄されている暗殺者と言えども、仲間意識はある。


――にしても、ちと≪献身すぎ≫やしねえか?


己を支配してしまいそうな嫉妬――かなりらしくないが、認めざるをえないようだ。



――風邪だからってあいつを疑いもせず、部屋に入りやがって。

溢れ出す黒い感情。

だからこそ、「ゆっくり休んでね」とリゾットの頭をなでた彼女が出てきたことに気付かず、一瞬反応が遅れてしまった。


「! わっ、びっくりした……おかえり、プロシュート。こんなところで、どうかした?」


「……いや、別に。強いて言うなら報告に来たんだが……リゾットの奴、風邪か?」



すでに把握した状況をあえて尋ねる。

一方、プロシュートの胸中を察せるはずもなく、名前は苦笑気味で頷き返した。


「そうみたい。多分、無理が祟ったんだと思う……」


「ハン、サルも木から落ちるならぬ、≪マッチョも風邪を引く≫だな」


「……もう、そんなこと言わないの。それにマッチョは逆に体脂肪が少ないから風邪引きやすいんじゃ……って、そんなツッコミしてる場合じゃなかった。報告は明日でも大丈夫だと思うし、せっかくだからリーダーには今日一日ゆっくり休んでもらおうと思って……みんなにもそう伝えるつもり」



かなりリゾットのことを心配しているらしい。

とは言っても、それを指摘したところで彼女はきょとんとあどけない表情をするだけだろう。


――ま、このままってわけにも行かねえけどな。



「……わかった」


恋人から得た了承に破顔し、そそくさと足を進める名前。

そんな彼女に対し、彼は傍にある扉を今にも人を殺めそうな勢いで睨み付けてから、おもむろに廊下を歩き出した。










リビングに着いた途端、ボフンと大きな音を立ててソファへ腰を下ろす名前。

それを追うように、男も隣に並ぶ。



「はあ……それにしても、あのリーダーが熱を出すとは私も思わなかったよ」


「……」


「ここで倒れたリーダーを部屋まで運ぶの、すごく大変だったんだから!」


「(ピクリ)」



ヒクつく頬筋。

額には言わずもがな青筋が立った。


しかし、彼女にとってこれはある種の≪報告≫なので、どんどん話し続ける。



「もう猫ならぬスタンドの手も借りたいぐらい!」


「……お前のスタンドじゃ無理だろ」


「そりゃ私のはね? でも……そうだ、ザ・グレイトフル・デッドなら軽々と運べそうだよね。手デカいし……ってダメだ。抱き上げた瞬間、リーダーおじいちゃんになっちゃう」




くすくすと笑う恋人を横目に、ますます不機嫌を全面に出し始めるプロシュート。

まさか、自分ではなく自分のスタンドを頼ろうとは。


いつもの彼ならば、スタンドも≪自分自身≫であると割り切り、あまり気にしないだろう。

だが、このときは二方への嫉妬によって普通ではなかった。



「……名前」


「? どうかし――んっ」

次の瞬間、振り向いた名前の視界を埋め尽くす端整な顔。

徐々に熱を帯びる、同じもので塞がれた唇。

無防備だった口内を滑らかに動く舌で蹂躙され、力の抜けた彼女の隙を狙ってそのままソファへと倒れ込む。



「っ、ん……ふぁ、はッ……や、プロシュ、ト……待っ、んん!」


「は……それで待つ奴がいるかよ」


「ぁっ、はぁっ、はっ……そ、な……っや、ぁあ」



組み敷かれたかと思えば、性急に上着のボタンを外され、あっという間に肌を露にされてしまった。


どこか様子がおかしい。

普段動揺など滅多に見せない男にしては珍しく、余裕がない。


それにここは、≪リビング≫だ。

事実が脳という器官へ到着した刹那、頬を上気させた名前は息絶え絶えのまま制止の声を上げた。


「ちょ、プロシュート……! ここっ、どこだと思って……、ひゃあっ!?」


「ん、いいだろどこでも……オレら以外、任務で誰もいねえんだからよ」



突如、脈の通う首筋を甘噛みされ、大きく肩を揺らす。

そんなプロシュートがもたらす快感からグッと堪えながら、彼女は言葉を紡ぎ出した。


「誰、もいないって……り、リーダーが……、あんッ」


「ハン、今あいつは風邪で寝込んでんだろ? 別にいいじゃねえか……ったく、人の気も知らねえでよお。今から、お前がオレ以外の名前を呼ぶたびに、キスすっからな」


「ぇ、っ!?」



何が起爆剤となってしまったのか、いまだにわからない。

ただ、自分は何かしらで彼を刺激してしまったらしい。


しかし、


「ぁっ、やだ……はぁ、っプロ、シュート……ぁ、ど、して……っふ、ぁ!」



その動作と表情は、焦っているようにも感じられる。

今日はどうしたのだろう――チュッチュッと胸元や鎖骨へ頻繁にキスマークを落とす男をただただ見つめている、と。



「……なあ、名前」


「?」


「今日の料理担当、誰だが覚えてるか?」


「え……? きょ、うは確か……メローネじゃ……っぁ、んん!?」



答えを待っていましたと言うかのように、深い口付けが送られた。

朦朧とし始める意識。

さらには、片手でブラジャーを剥ぎ取られてしまい、もみもみと柔らかさと弾力を堪能するように五指をバラバラに動かしてくる。



なすがままの恋人を見下ろし、当然ながら口角を上げるプロシュート。



「クク……すぐに引っかかりやがって。キスし放題じゃねえか」


「〜〜っい、今のはずるい! はっ、ぁ……や、ぁああっ」



恥辱に堪えかねた名前がキッと上を睨んだ瞬間だった。

彼はすかさず右手をショーツの中へ差し込み、少しばかり湿った股座を捉えられてしまう。

慌てて両腿を閉じようとするも、もう遅い。



「いやっ、いや、ぁっ……プロシュート、はぁっ、今日なんか……おかし、っよ、ぉ……!」


「(おかしくしてんのはオメーだろうが……)ハッ、ずいぶんドロドロだなあ、おい。まさかキスだけでこんなに感じたのかよ」


「ち、ちが、っ……そん、なわけ……ぁっ、ぁ、ひぁ、っぁああん!」


容赦なく膣口へ突き入れられた中指。

心はまだ受け入れられていないのに、男との行為によって教え込まれた快感で肉襞はひどくそれを締め付ける。


クチュクチュ

ピチャッ


不意に、溢れ出した愛液を腫れ上がった肉芽に塗りたくられ、ますます引き出される性感と羞恥。


「ふっ、ぁ……やぁあ、っは、あん、っ……ナカ、グチュグチュしちゃっ、ダメ、ぇ!」



巧妙な指先の動きに翻弄されていく。

肉厚な弱点を擦られればもっと、と欲しがるように膣内はプロシュートの指全体を包み上げた。


絶頂は近い。


「キュウキュウ締め付けてきやがって……美味しいか?」


「はぁっ、ん、ぁっ、おいし……ッ! ぁっ、やら……ぷろ、しゅーとっ……ぁ、はぁ、わた、しっ」


「……いいぜ。イけよ、名前」


「ぁっぁっあっ、やっ、やらぁ! わたし、っわたひ……イっちゃ、っぁ、らめ、や……ぁ、ッああああ!」


刹那、つま先から旋毛にかけて走る電流。

身体をピンと張り詰め、波立たせた膣壁から濡れた指を抜いた彼が、彼女のボトムともはや意味を成していない下着を放り投げる。

そして、顔色一つ変えず己の衣服も脱ぎ去った男は、小さく眉を寄せながら上へと乗り上げた。


ギシッと再び二つの体重で軋んだソファに、名前は乱れた呼吸のまま蕩けた視線を向ける。


「はふ、っん……プロシュー、ト?」


「……悪い名前」


「え……?」



ぽつりぽつりと紡ぎ出された、≪嫉妬の念≫。

予想だにしなかった告白。それをはっきりと耳で捉えた彼女は――



「嬉しい……」


自然とはにかんでいた。



「は?」


嫌悪ならず喜心を見せた恋人に対して、眉間にしわを倍増させたプロシュート。

そんな彼に、名前は嬉しさを滲ませながら言葉を口にする。



「だって……プロシュートはいわゆる引く手数多でしょう? 経験もいっぱいしてるし。だから、私ばっかり好きなのかな、ってモヤモヤして不安だったの」


「…………ハッ、恋人を想う気持ちならオレの方が強えよ」


「えっ?」


「ん? あ……、クソ」



自爆してしまったことに気付き、すかさず男は目をそらした。

本当に彼女を前にすると調子が狂う。


一方、≪かっこいい≫ではなく≪可愛い≫行動に名前がクスリと笑えば――唐突に両頬を摘まれてしまった。



「んむっ……なにふるの」


「笑いやがったバツだ。オレだって動揺してんだよ……みっともなく嫉妬なんて、今まで一度もなかったからな」


「! そ、それって……」








「お前が特別ってことだ。いい加減理解しろ」


「〜〜っ」



重ねられた額。

至近距離でかち合う瞳に、嘘はない。


同時に、太腿が感じた≪焦熱≫に彼女は行為の最中であることを思い出し、そっとプロシュートの首へ両腕を回す。

当然、美しい青空の色をそのまま映し出したかのような眼には、自分への確認の意が交わった。



「プロシュート……シて?」


「……いいのか?」


「うん、っ……プロシュートをもっと感じたいの」



誘い文句によってさらに増す硬度。


もちろん言われなくとも感じさせる予定だったが、自ら望んでくれるとは――正直たまらない。笑みを深めた彼は、おもむろに細く白い膝裏へ手を差し入れ持ち上げる。

そして、ひどく狭い――だがヒクヒクと蠢いている名前の入口へ照準を合わせた。


「ッ、音ェ上げても知らねえからな……!」


「んっ、来て? ぁ……ひゃ、っぁ、ぁあああッ!」



反り勃った性器がゆっくりと充血した膣を侵食していく。

誰もいないリビングに響き渡る淫靡な音。


「ぁっ、はぁ、ん……ぁ、やっぁっ、ッおなか、おくまで突かれちゃ……!」



その、いつか胎内まで犯されてしまいそうな勢いに、彼女は恋人に縋り付き、泣き喘ぐことしかできない。


ソファが揺れるほど激しい動き。

自分の下で啼く名前をしっかりと目に焼き付けた男はグプグプと緩急つけてナカを打ち付け、擦りながら、やおら口を開いた。



「名前、少し腕解け」


「ぁ、っん、ふ……っぁ、ぷろしゅ、と?」


「ちょっと体勢変えんぞ」


「!? な、に……きゃっ、ぁああん!」



グルン

きょとんとしながらも彼女が静かにプロシュートから腕を離した途端、四つん這いにさせられてしまう。

そのとき、粘膜を硬く大きなモノで荒く掻き混ぜられ、鋭く押し寄せた快感に名前は喉元を晒した。


一方、腿の付け根側へ右手を回した彼は指先で陰核を刺激しつつ、赤くなった耳へニヒルに上がった唇を寄せる。



「は、ッ……そういえばよお、名前」


「ひゃう、ぁっ、やら、ぷろしゅ、と……みみ、っぁん、は……っささやいちゃ、やぁ!」


「ふっ……オレが動くたびに肉襞ビクビクさせといてよく言うぜ。っと、その話じゃなかったな……名前は犬の交尾の仕方、知ってっか?」



放たれた質問。

どういうことだろう――おずおずと振り返った彼女は、婀娜やかな表情を浮かべる男を潤む瞳で見つめ、首をかしげた。


「ぇ、っわん、ちゃ……? はぁ、はぁっ、知らな……ぁっ、ああッ」


「メローネから聞いた話なんだが、膨らんだ陰茎の根元をメスの膣内でギチギチにして、抜けないようロックするらしいぜ? こんな風に密着させてからよ」


「ひうっ!? ッ、ぁっあっ……ぷろ、しゅーとっ、はげし、ふ、っぅ……ゃ、っぁあん!」


「それで、確実に受精させるんだとさ。ま、実際見たことはねえが」


弓なりになる背中がプロシュートの体温、鼓動を鮮明に捉える。

さらに官能へ引き込まれる名前。

けれども、なぜそのうんちくが≪今≫披露されているのか、快感で朦朧とした頭では答えは見つけられない。



「や、ぁ……ひぁっ、ぁっぁっ、はぁ……っん、ねえ」


「あ?」


「なんれ、今っ、ぁ……そのはな、しを……?」


「……そんなの、決まってんだろうが」









「名前。オレの匂い、お前の子宮に染み付けてやるから、一滴たりともこぼすなよ?」


「! は、っぁっぁ……にお、い? ぁっ、それ、て……ぇっ、ひゃ、ぁああんッ」


「クク……物欲しそうな、メスの顔しながら懸命に腰振りやがって」



マジで可愛い。

まだ乳臭えガキかと思えば、時折≪オンナ≫の顔をして、また違う時には温かな母性を見せる。

こんなにも自分を惹きつけてやまない女には、二度と巡り会えはしないだろう。


ピストンの連続で結合部は白く泡立ち、男と女の中で高まっていく興奮。



刹那、ドクリと熱を持った一物が脈打つ。



「名前……名前、ッそろそろ」


「ん、ぁっ、ちょー、らいっ……あんッ、ぷろ、しゅーとのっ、あつ、いのぜんぶ……っぁ、ナ、カに、っらして、らひて、ぇ!」


「……くッ」


「ぁっぁっあっ、ぁあ、ッきちゃ……きもち、のきちゃ……や、ぁっ、ぁあああ……ッ、!」


「ッ……、名前?」


体内で弾けた絶頂によって腕の力が抜けたのか、突如くたりとなる名前。

その経過に、ゆるゆると動かしていた性器を抜き、少々慌て気味で顔を覗けば、どうやら気を失ってしまったらしい。



「さすがに激しくしすぎちまったか」


普段はピロートークができるよう配慮するのに、柄でもない。

次はちゃんとベッドでシよう――と反省の方向性を明らかに間違えながら、優しい笑みを浮かべた彼はそっとソファに流れる髪をなでた。











Envy Borzoiの逆襲
一度妬いたら、手が付けられない……?




〜おまけ〜



カチャリ


「……どうした? ずいぶんタイミングがいいじゃあねえか」



扉から現れたのは、いつも以上に顔色の悪いリーダー。

ちょうど後処理を終えた瞬間ということもあり、プロシュートが喉をくつくつと鳴らすが、表情はまったくと言っていいほど変わらない。


「水を飲みに来ただけだ」


「ほーう……それにしちゃあ、≪ドアの前で立ち尽くす時間≫が長かったな。リゾットさんよお」


「……、聞こえてきたものは仕方がない」



こちらを見ることなく、ペットボトルを手に取った男に彼は鼻で笑う。


「ハン! ったく、悪趣味な野郎だぜ」


「人聞きの悪いことを言うな。名前の喘ぎ声を聞かせるように、リビングのドアをわざと開けていたのはお前だろう……まあいい」


体調不良でありながら、とんだ災難に見舞われてしまった。

ソファで昏昏と眠る名前とその頬を愛おしげになでる男を一瞥してから、ミネラルウォーターを呷る。

そして、それを冷蔵庫に戻した彼は二人の傍を横切り、ドアノブを回した――が。



「リゾット」


「なんだ」


「…………やらねえぞ」



冗談めいた声色とは裏腹に、向けられた鋭い眼差し。


誰を、だなんて聞かなくともわかる。

よほど自分が恋人に看病されたことが、気に入らなかったらしい。

当の本人は、この男以外を≪男≫として見ていないと言うのに。

どうやら、怒りで判断力が鈍っているようだ。

勝手にしろ――言葉一つでも呟けば今にも噛み付いてきそうな蒼い目の猛犬に、熱で浮かされた頭で冷静な分析をしたリゾットは小さくため息をつきながらリビングを後にするのだった。











お待たせいたしました!
プロシュート兄貴で、グレフルとリーダーに嫉妬甘裏でした。
凛様、リクエストありがとうございました!
兄貴は猫? 犬? いや、トラ? と数分考えた結果、ボルゾイ(Borzoi)さんにさせてもらいました(あくまで管理人の個人的見解です)。


感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひお願いいたします!
Grazie mille!!
polka



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