※連載「Uno croce nera...」のヒロイン
※微裏
※触手注意
「ふあ、ぁ……」
今日も、寝坊してしまった。
さまざまな動きを見せ始める昼前。
ベッドに腰掛け、あくびを噛み締めた名前は、パジャマ姿のまま一人部屋で暇を持て余していた。
――リゾットさんもお仕事で忙しそうだし……。
今頃、チームメイトである皆と真剣に話しているであろう寡黙な彼を思い浮かべて、無理は言えないとすぐに首を横へ振る。
とは言っても、もし彼女が傍に居てほしいと≪おねだり≫をすることがあれば、男は迷うことなく少女と目合いながらデスクワークをしてみせるのだが。
「んー……本でも、読んでおこうかな」
天秤にかけられた昼寝と読書。
しかし、もう少ししたら昼食がおそらくできるので、寝てしまってはいけない。
そう判断した名前は小さく頷き、おもむろに立ち上がった。
ブーツのかかとがカツンと床に鳴り響く。
――今日は、どれにしよう。
そして、本棚の前に辿り着いた途端、持ち上げた手を彷徨わせる少女。
刹那だった。
コンコンコン
「?」
突然届いたノック音に、こてんと首をかしげる。
どなただろうか――リゾットではないとわかっているので、少々緊張しつつドアノブを引くと。
「あれ……?」
目の前には、誰もいない。
彼女はそっと視線を落として――
「まあ! こんにちは、グレフルさん!」
「(コクッ)」
自分より幾分か身長の低いスタンド――ザ・グレイトフル・デッドに自然と笑みが浮かぶ。
彼(?)とはよく遊んでいるが、このように部屋を訪れられるのは今回が初めてだった。
もちろん、グレフルと楽しく遊ぶたびに、嫉妬深い名前の恋人が肝を冷やしているのは言うまでもない。
「(じーっ)」
「ふふ、どうされたんですか?」
「(触手をわちゃわちゃ)」
こちらを見つめるいくつもの瞳に微笑み返しながら、彼の前にしゃがむ。
すると、グレフルの視線はどこか室内を気にしているようだった。
「あの、グレフルさん……中へどうぞ?」
「!」
「大丈夫です。リゾットさんは怖くないですよ?」
「……(のそのそ)」
一瞬≪心配≫を眼差しに滲ませたが、入ると決めたらしい。
のそりと二本の腕を動かし始めた彼にますます嬉しそうにして、ベッドへ戻る少女。
だからこそ、彼女は背後にいるグレフルが――ライバルとも言えるリゾットがいなくて安堵していた――とは思いもしなかったのである。
「そういえば、グレフルさんの腕って大きいですよね」
「?(きょとん)」
「どう言えばいいんでしょう……えっと、逞しい、ですか?」
雪一面のような白いベッドに座る、一人と一体(?)。
しばらく彼と交信を重ねていた名前は、ふと心を掠めた興味からぽつりと言葉を呟いていた。
小首をかしげるグレフルに対し、静かにほっそりとした手をつぶらな瞳のある腕へ添える。
その仕草に彼が小さく反応したが、彼女はただただキラキラと目を輝かせるばかり。
「(じーっと見つめ返す)」
「? グレフルさん?」
にこにこ。
向けられる人畜無害な微笑み。
それを少しの間凝視したグレフルは、ゆっくりと一本の触手をすでに肩へと移動していた少女の右手へ絡ませた。
「! っ、ふふ、少しくすぐったいです……どうされたんですか?」
「(こちょこちょ)」
「んっ、ふ……ぁ、グレフル、さん……、ひゃっ!?」
新しい遊びだろうか。
そう思ったのも束の間。
ベッド上で背後に回り込んだ彼は、するりと触手で名前の両手首を縛ってしまった。
後頭部で成されたその拘束に、ようやく彼女も≪焦燥≫を表情に見せる。
「ぁっ、グレフルさん……ん、この遊びは、っやめま、しょう? ね?」
「(ブンブンと首を横に振り)」
「え、っ!? で、でも、ぁ……わた、し……変な、感じがして……ッふあ!?」
「(こしょこしょ)」
それは突然のことだった。
今まで手から腕だけを擽っていたモノに加えて、もう一本の触手が少女のパジャマの中へ侵入したのだ。
当然、習慣からブラジャーすら付けておらず、想像もつかない動きをする先端は抜け目なく柔肌を捉える。
「っぁ、ダメ……や、ぁあ! ぐれ、ふるさっ、おねがい……っん、!」
「(脇腹をつー)」
「ひゃんっ……!」
グレフルはただ遊んでいるのだろう。
だからこそ、本気で叱ることができない。
むしろ、一つ一つ反応してしまう自分がはしたなくて、恥ずかしくて仕方がない――と熱に浮かされた頭の隅で考える名前。
もちろん、その要因はリゾットによる調教の賜物と言うべきなのだが、彼女は責任を押し付けることなく嬌声を上げてしまう。
「ふっ、ぅ、ぁっ……、っやめて、ぇ!」
「(ピタリ)」
どうにかやめてもらおうと弱々しく首を横へ振ったそのとき、すべての動きが停止した。
理由はわからないが、とりあえず助かったらしい。
潤んだ瞳で後ろの彼を見つめ、快感に震える唇でその名を紡ぐ。
「は、ぁっ、はぁ……、ぐれふる、さん?」
「(じーっ)」
「……あの、拘束を解いてもらえると嬉し――んんっ!?」
だが、≪終わり≫ではなかったようだ。
どこからともなく現れた三本目の触手で口元を優しく包まれ、深紅を見開いた少女。
このままではいけない。
押し寄せた直感に、軟体のモノたちから逃げようと小さく身を捩った、が。
「んっ、ふ……んんー!」
四本目が、名前の乳房を包むように蠢き始めたのである。
当然、ビクリビクリと震える肢体。
さらには胸の頂きを先端で擽るように攻められ、嫌でも躯体は火照ってしまう。
粟立つ産毛。
あっという間に快感を叫ぶ腫れた乳頭。
「(うごうご)」
「ふ、っぅ、っ……ん、ッんん」
何本もの触手に囚われている姿。
締め付けられることで際立った女体の凹凸。
少なからず肌蹴たパジャマ。
漂う背徳感がプラスされ、それがどれほど淫靡かなど、すでに彼女の霞んだ意識では考えられない。
「(ピタ……そろり)」
「!?」
「(するする)」
だが、いくつかの締め付けが消えたかと思えば、太股へと辿り着いた感触に少女は覚醒した。
――ダメ……っ!
とは言っても、腕の拘束と唇を覆うモノはいまだ残ったままだ。
しかし、戸惑っている間にも薄い生地のズボンはくるぶし辺りまで下ろされてしまう。
「んんん、っん……、っふ、ぅ……んーッ」
「(二本で開脚させ)」
自然と、ドアに向かって露になる、名前の下着越しの秘部。
やけに熱いそこへ、ひやりと冷たい空気が刺す。
「〜〜っ/////」
――リゾットさん……!
人工の光に照らされ輝きを増した内腿へゆっくりと一本が這わされ、ショーツの細い部分へと差し掛かった。
そのとき。
ガチャリ
「名前? 入、る……ぞ……?」
「!」
ドアから現れたのは、言わずもがなこの部屋の主、リゾット。
だが、タイミングが悪すぎ――いや、ある意味良いのかもしれない。
腕、口元、白い腿に絡まった紫色の触手らしきもの。
感情はあまり読めないが、こちらを見つめるスタンド。
そして、羞恥ゆえか目をナミダでいっぱいにした名前。
塞がれた口。くぐもった婀娜やかな吐息。
黒目がちの瞳に映り込んだ景色は、やましい写真やDVDよりハードだった。
バタン
「ぁ……っ」
閉ざされたドア。
無言で、というより瞳孔をカッと開いて出て行ってしまった男。
いつの間にか、声が出ていることも忘れるほど、彼女はショックを受けてしまう。
≪軽蔑されたのだろうか≫。
――ううん、しない方がおかしいよね。
「っ」
別の意味で湧き上がったナミダをなんとか抑えようとしていると、不意に頭を温かい感触が覆った。
「! グレフル、さん?」
「(なでなで)」
数多の目から悟ったのは、≪さすがにやりすぎてしまったという反省≫。
やはり、グレフルも少女の泣き顔には弱いらしい。
どこまでも優しい手つき。
「……グレフルさん。グレフルさんは、全然悪くないですよ? だから、悲しい顔をしないでください」
「(なでる力を強め)」
「私は、大丈夫ですから」
ね?
名前がそうして作り笑いを見せると、彼は触手でおもむろに彼女の格好をすべて元通りにし始めた。
「?」
「(ひょいと抱き上げ)」
「きゃ!? ぐ、グレフルさんっ、何を……」
「(のそのそ)」
かなり悔しいが、この自分が大好きな少女にはあの男が必要らしい。
至った結論に少しだけ不機嫌を滲ませながら、グレフルはオロオロとしている名前を抱き上げたまま、ドアノブを回した。
遊戯とプレイの狭間
あるのは遊び心か、それとも恋心か。
〜おまけ〜
軽蔑という選択肢など、あるはずがないのだ。
「名前……ッ!」
「! リゾット、さん」
「……」
グレフルに抱かれた状態で廊下を進んでいると、後ろから飛んできた自分を呼ぶ声。
振り返れば、息を切らしたリゾットが立っている。
戻ってきてくれたのだろうか。
なぜかさっきまで白かったシャツが≪赤くなった理由≫はわからないが、とにもかくにも少女の心は安堵で埋め尽くされていた。
一方、そんな彼女に対して小さく微笑んでから、彼はゆっくりとグレフルを見下ろす。
「……ザ・グレイトフル・デッド。名前をどうする気だ」
「(じーっ)」
しばらく見つめ――睨み合っていた二人。
だが、どうしたことだろう。
「ぁ、っ」
今日は紫煙を纏うことなく、彼は臨戦状態のリゾットへ名前を預けたのである。
まるでそれが、当初の目的だったかのように。
そして、彼女がしっかり男の首へ腕を回したのを見て、のそのそと踵を返すグレフル。
「……ぐ、グレフルさん!」
「(くるり)」
――また遊びましょうね。今日のはもう遠慮したいですが……。
そんな意味を込めて微かに手を振る少女。
「……」
ようやくあいまみえた、≪花が咲いたような笑み≫。
彼女に応えるようにゆらゆらと触手を高く上げ、左右へ動かした彼は、今頃カミソリを吐いているであろう本体の元へ向かうのだった。
「……名前」
「リゾットさん……ごめんなさい、私……」
「謝らなくていい。今、オレの腕の中に君がいてくれて、ひどく安心しているんだ」
「!」
「だが、昼食後は覚悟してほしい」
「……え」
一体何をしていたのか。
どうしてああなったのか。
言葉はもちろんだが、身体の隅々にまで尋ねられる予感――ではなく確定した≪未来≫。
どこまでも無防備な名前には、それはそれはキツいお仕置きが待っていたとか。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
お待たせいたしました!
グレフルさんで連載ヒロインとの触手プレイでした。
去年もくそねみ様、リクエストありがとうございました!
新たな裏の方向性に、ドキドキしながら書かせていただきました……いかがでしたでしょうか?
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひお知らせくださいませ!
Grazie mille!!
polka
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※微裏
※触手注意
「ふあ、ぁ……」
今日も、寝坊してしまった。
さまざまな動きを見せ始める昼前。
ベッドに腰掛け、あくびを噛み締めた名前は、パジャマ姿のまま一人部屋で暇を持て余していた。
――リゾットさんもお仕事で忙しそうだし……。
今頃、チームメイトである皆と真剣に話しているであろう寡黙な彼を思い浮かべて、無理は言えないとすぐに首を横へ振る。
とは言っても、もし彼女が傍に居てほしいと≪おねだり≫をすることがあれば、男は迷うことなく少女と目合いながらデスクワークをしてみせるのだが。
「んー……本でも、読んでおこうかな」
天秤にかけられた昼寝と読書。
しかし、もう少ししたら昼食がおそらくできるので、寝てしまってはいけない。
そう判断した名前は小さく頷き、おもむろに立ち上がった。
ブーツのかかとがカツンと床に鳴り響く。
――今日は、どれにしよう。
そして、本棚の前に辿り着いた途端、持ち上げた手を彷徨わせる少女。
刹那だった。
コンコンコン
「?」
突然届いたノック音に、こてんと首をかしげる。
どなただろうか――リゾットではないとわかっているので、少々緊張しつつドアノブを引くと。
「あれ……?」
目の前には、誰もいない。
彼女はそっと視線を落として――
「まあ! こんにちは、グレフルさん!」
「(コクッ)」
自分より幾分か身長の低いスタンド――ザ・グレイトフル・デッドに自然と笑みが浮かぶ。
彼(?)とはよく遊んでいるが、このように部屋を訪れられるのは今回が初めてだった。
もちろん、グレフルと楽しく遊ぶたびに、嫉妬深い名前の恋人が肝を冷やしているのは言うまでもない。
「(じーっ)」
「ふふ、どうされたんですか?」
「(触手をわちゃわちゃ)」
こちらを見つめるいくつもの瞳に微笑み返しながら、彼の前にしゃがむ。
すると、グレフルの視線はどこか室内を気にしているようだった。
「あの、グレフルさん……中へどうぞ?」
「!」
「大丈夫です。リゾットさんは怖くないですよ?」
「……(のそのそ)」
一瞬≪心配≫を眼差しに滲ませたが、入ると決めたらしい。
のそりと二本の腕を動かし始めた彼にますます嬉しそうにして、ベッドへ戻る少女。
だからこそ、彼女は背後にいるグレフルが――ライバルとも言えるリゾットがいなくて安堵していた――とは思いもしなかったのである。
「そういえば、グレフルさんの腕って大きいですよね」
「?(きょとん)」
「どう言えばいいんでしょう……えっと、逞しい、ですか?」
雪一面のような白いベッドに座る、一人と一体(?)。
しばらく彼と交信を重ねていた名前は、ふと心を掠めた興味からぽつりと言葉を呟いていた。
小首をかしげるグレフルに対し、静かにほっそりとした手をつぶらな瞳のある腕へ添える。
その仕草に彼が小さく反応したが、彼女はただただキラキラと目を輝かせるばかり。
「(じーっと見つめ返す)」
「? グレフルさん?」
にこにこ。
向けられる人畜無害な微笑み。
それを少しの間凝視したグレフルは、ゆっくりと一本の触手をすでに肩へと移動していた少女の右手へ絡ませた。
「! っ、ふふ、少しくすぐったいです……どうされたんですか?」
「(こちょこちょ)」
「んっ、ふ……ぁ、グレフル、さん……、ひゃっ!?」
新しい遊びだろうか。
そう思ったのも束の間。
ベッド上で背後に回り込んだ彼は、するりと触手で名前の両手首を縛ってしまった。
後頭部で成されたその拘束に、ようやく彼女も≪焦燥≫を表情に見せる。
「ぁっ、グレフルさん……ん、この遊びは、っやめま、しょう? ね?」
「(ブンブンと首を横に振り)」
「え、っ!? で、でも、ぁ……わた、し……変な、感じがして……ッふあ!?」
「(こしょこしょ)」
それは突然のことだった。
今まで手から腕だけを擽っていたモノに加えて、もう一本の触手が少女のパジャマの中へ侵入したのだ。
当然、習慣からブラジャーすら付けておらず、想像もつかない動きをする先端は抜け目なく柔肌を捉える。
「っぁ、ダメ……や、ぁあ! ぐれ、ふるさっ、おねがい……っん、!」
「(脇腹をつー)」
「ひゃんっ……!」
グレフルはただ遊んでいるのだろう。
だからこそ、本気で叱ることができない。
むしろ、一つ一つ反応してしまう自分がはしたなくて、恥ずかしくて仕方がない――と熱に浮かされた頭の隅で考える名前。
もちろん、その要因はリゾットによる調教の賜物と言うべきなのだが、彼女は責任を押し付けることなく嬌声を上げてしまう。
「ふっ、ぅ、ぁっ……、っやめて、ぇ!」
「(ピタリ)」
どうにかやめてもらおうと弱々しく首を横へ振ったそのとき、すべての動きが停止した。
理由はわからないが、とりあえず助かったらしい。
潤んだ瞳で後ろの彼を見つめ、快感に震える唇でその名を紡ぐ。
「は、ぁっ、はぁ……、ぐれふる、さん?」
「(じーっ)」
「……あの、拘束を解いてもらえると嬉し――んんっ!?」
だが、≪終わり≫ではなかったようだ。
どこからともなく現れた三本目の触手で口元を優しく包まれ、深紅を見開いた少女。
このままではいけない。
押し寄せた直感に、軟体のモノたちから逃げようと小さく身を捩った、が。
「んっ、ふ……んんー!」
四本目が、名前の乳房を包むように蠢き始めたのである。
当然、ビクリビクリと震える肢体。
さらには胸の頂きを先端で擽るように攻められ、嫌でも躯体は火照ってしまう。
粟立つ産毛。
あっという間に快感を叫ぶ腫れた乳頭。
「(うごうご)」
「ふ、っぅ、っ……ん、ッんん」
何本もの触手に囚われている姿。
締め付けられることで際立った女体の凹凸。
少なからず肌蹴たパジャマ。
漂う背徳感がプラスされ、それがどれほど淫靡かなど、すでに彼女の霞んだ意識では考えられない。
「(ピタ……そろり)」
「!?」
「(するする)」
だが、いくつかの締め付けが消えたかと思えば、太股へと辿り着いた感触に少女は覚醒した。
――ダメ……っ!
とは言っても、腕の拘束と唇を覆うモノはいまだ残ったままだ。
しかし、戸惑っている間にも薄い生地のズボンはくるぶし辺りまで下ろされてしまう。
「んんん、っん……、っふ、ぅ……んーッ」
「(二本で開脚させ)」
自然と、ドアに向かって露になる、名前の下着越しの秘部。
やけに熱いそこへ、ひやりと冷たい空気が刺す。
「〜〜っ/////」
――リゾットさん……!
人工の光に照らされ輝きを増した内腿へゆっくりと一本が這わされ、ショーツの細い部分へと差し掛かった。
そのとき。
ガチャリ
「名前? 入、る……ぞ……?」
「!」
ドアから現れたのは、言わずもがなこの部屋の主、リゾット。
だが、タイミングが悪すぎ――いや、ある意味良いのかもしれない。
腕、口元、白い腿に絡まった紫色の触手らしきもの。
感情はあまり読めないが、こちらを見つめるスタンド。
そして、羞恥ゆえか目をナミダでいっぱいにした名前。
塞がれた口。くぐもった婀娜やかな吐息。
黒目がちの瞳に映り込んだ景色は、やましい写真やDVDよりハードだった。
バタン
「ぁ……っ」
閉ざされたドア。
無言で、というより瞳孔をカッと開いて出て行ってしまった男。
いつの間にか、声が出ていることも忘れるほど、彼女はショックを受けてしまう。
≪軽蔑されたのだろうか≫。
――ううん、しない方がおかしいよね。
「っ」
別の意味で湧き上がったナミダをなんとか抑えようとしていると、不意に頭を温かい感触が覆った。
「! グレフル、さん?」
「(なでなで)」
数多の目から悟ったのは、≪さすがにやりすぎてしまったという反省≫。
やはり、グレフルも少女の泣き顔には弱いらしい。
どこまでも優しい手つき。
「……グレフルさん。グレフルさんは、全然悪くないですよ? だから、悲しい顔をしないでください」
「(なでる力を強め)」
「私は、大丈夫ですから」
ね?
名前がそうして作り笑いを見せると、彼は触手でおもむろに彼女の格好をすべて元通りにし始めた。
「?」
「(ひょいと抱き上げ)」
「きゃ!? ぐ、グレフルさんっ、何を……」
「(のそのそ)」
かなり悔しいが、この自分が大好きな少女にはあの男が必要らしい。
至った結論に少しだけ不機嫌を滲ませながら、グレフルはオロオロとしている名前を抱き上げたまま、ドアノブを回した。
遊戯とプレイの狭間
あるのは遊び心か、それとも恋心か。
〜おまけ〜
軽蔑という選択肢など、あるはずがないのだ。
「名前……ッ!」
「! リゾット、さん」
「……」
グレフルに抱かれた状態で廊下を進んでいると、後ろから飛んできた自分を呼ぶ声。
振り返れば、息を切らしたリゾットが立っている。
戻ってきてくれたのだろうか。
なぜかさっきまで白かったシャツが≪赤くなった理由≫はわからないが、とにもかくにも少女の心は安堵で埋め尽くされていた。
一方、そんな彼女に対して小さく微笑んでから、彼はゆっくりとグレフルを見下ろす。
「……ザ・グレイトフル・デッド。名前をどうする気だ」
「(じーっ)」
しばらく見つめ――睨み合っていた二人。
だが、どうしたことだろう。
「ぁ、っ」
今日は紫煙を纏うことなく、彼は臨戦状態のリゾットへ名前を預けたのである。
まるでそれが、当初の目的だったかのように。
そして、彼女がしっかり男の首へ腕を回したのを見て、のそのそと踵を返すグレフル。
「……ぐ、グレフルさん!」
「(くるり)」
――また遊びましょうね。今日のはもう遠慮したいですが……。
そんな意味を込めて微かに手を振る少女。
「……」
ようやくあいまみえた、≪花が咲いたような笑み≫。
彼女に応えるようにゆらゆらと触手を高く上げ、左右へ動かした彼は、今頃カミソリを吐いているであろう本体の元へ向かうのだった。
「……名前」
「リゾットさん……ごめんなさい、私……」
「謝らなくていい。今、オレの腕の中に君がいてくれて、ひどく安心しているんだ」
「!」
「だが、昼食後は覚悟してほしい」
「……え」
一体何をしていたのか。
どうしてああなったのか。
言葉はもちろんだが、身体の隅々にまで尋ねられる予感――ではなく確定した≪未来≫。
どこまでも無防備な名前には、それはそれはキツいお仕置きが待っていたとか。
![](http://img.mobilerz.net/sozai/1616_w.gif)
お待たせいたしました!
グレフルさんで連載ヒロインとの触手プレイでした。
去年もくそねみ様、リクエストありがとうございました!
新たな裏の方向性に、ドキドキしながら書かせていただきました……いかがでしたでしょうか?
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひお知らせくださいませ!
Grazie mille!!
polka
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