※ロリ(巨乳)ヒロイン
※ギャグ甘
とある昼下がり。
真顔のままソファに座るリゾットとその後ろに隠れるように潜む名前。
そんな傍から見れば、≪親子≫のように見える彼らの目の前には――
「おい……こりゃあどういうことだァ? ええッ?」
腕を組みながら足を踏み鳴らし、青筋を立てたプロシュートが立っていた。
かなりお怒りモードの男。
彼の視界には、溢れんばかりの≪お菓子≫がテーブルに積み上げられている。
「名前、名前名前よ〜! 前におやつは一日一個っつったよな? ……まさか忘れたわけでもねえだろ?」
「わっ、忘れてないよ! 忘れてないけど……、うう」
「プロシュート。そう頭ごなしに叱るんじゃあない。名前が怖がっている」
普段から名前を一人前のシニョリーナに育て上げようと、まるで教育ママのように厳しく躾をしてきたプロシュート。
一方、今にも泣き出しそうな少女の擁護にいつどんなときでも回る親バカのリゾット。
今日も今日とてそれに安心したのか、彼女は彼の大きな背に隠れ続けている。
そんな様子が、ますます男の心をイラつかせた。
「っ、あにき……お願い……怒らない、で?」
「……別に怒ってるわけじゃねえ。だが、テメー自身を律することはお前にとって大切なんだ。わかるか?」
「自律……、うん(しゅん)」
「よしいい子だ。……わかったら、さっさと前に出てこい! 今日は徹底的にお前の嫌いな≪あの仕置き≫をしてやっからな……?」
「! やだっ……≪ぐれふるでおやつ枯らせちゃう≫のは、いやーっ」
ソファからグイグイと細腕を引こうとするプロシュートと、絶望の二文字を真ん丸な瞳に浮かべ、頭が取れてしまいそうなほどブンブンと首を横へ振る名前。
当然、その状況をリゾットが黙視できるはずもなく。
「いい加減にしろ。名前がここまで嫌がっているにも関わらず、なぜお前は実行しようとするんだ」
「……リゾット、お前なあ」
「それと、お前のことだ。≪お仕置き≫などと称して名前にオトナの階段を登らせるつもりだろう……そうはさせるか」
すかさず彼女の腕を取り、自分の膝の上に乗せてしまった。
突然のことに目をぱちくりさせる少女。
それを一瞥したプロシュートは、己に≪とんでもない容疑≫がかかっていることはあえて無視して、おもむろに口を開く。
「ハン、オレはお前の頭の方が心配だがな……まあいい。今は、んなことより名前の話だ。名前は自分が悪いってことを自覚してんだよ」
「自覚しているというなら、もういいだろう。オレからよく言い聞かせておく……名前、今日はいつもの場所でジャッポーネフェアをしているらしい。≪和三盆≫だけでなく≪まんじゅう≫や≪金太郎アメ≫もある。今回のことを反省しつつ、それを買いに行こう」
「! リゾくんほんと? 名前、それ美味しいからすごく好きっ……でも」
「…………、ちょい待ちやがれリゾット」
優しく音を紡ぎ出し、名前を愛でるようになでていたチームリーダーに、言わずもがな彼は制止をかけた。
≪反省≫。
それはつまり、自分のしてきたことを省みるということ。
にも関わらず、なぜすぐに買い物へ行こうとする。
いや、そんなことより――
「毎月の小遣い制にしてんのに、どうしてこんなにも菓子が買えんのか……ずっとそう思い悩んできたが、やっぱりテメーが原因かッ!」
この少女を誘拐(連行?)してきたときからおかしいとは踏んでいたが、男の甘やかしがここまでひどいものとは。
一方、呆れ切った表情を見せるプロシュートに対して、リゾットはいつも以上に眉をひそめた。
「……原因とは人聞きの悪い。オレはただ、名前の見聞を広めようとしているだけだが」
「菓子の面でだけだろうが……!」
元々、彼女の教育において対立することが多かった二人。
今回の菓子騒動で、それが表面化したと言える。
新たな事実が発覚し、もはや根本的な問題から解消していかなければ、名前のシニョリーナ計画実行は難しい。
そう判断したプロシュートは、感情を抑えることなくそのまま声を荒らげ続けた。
「大体、菓子を買い与えて、テメーの甘やかしが名前のためになるとでも思ってんのか? ならねえだろ!」
「そうとは言っていない。だが、お前のように躾や仕置きなどと厳しすぎても何も生まれないだろう。名前には萎縮することなく、伸び伸びと育ってほしい」
「ハッ……にしても限度があるだろうが。このままだと、自分では何もすることができねえマンモーナになっちまうぞ」
緊迫した雰囲気。
それをもたらす彼らの間で、渦中の彼女はただキョロキョロと二人を交互に見ることしかできない。
「……リゾット。親バカのテメーに言っとくけどな、世間知らずじゃ後々苦労すんだよ。知っておくべきことを今から知っておかねえと、結婚して子供産むときが来たら、いろいろ困るだろうが」
「結婚、だと……!? 名前ッ、オレはどこの馬の骨だか知れない奴との結婚など、絶対に認めないからな!? どうせならオレと籍を入れよう!」
「せき……? リゾくん、どうしたの?」
「あーッもう、いちいちめんどくせえなあ、テメーは! たとえばの話だろうが! つーか大体、こいつの保護者語ってる時点でいろいろアウトだ! このロリコン野郎ッ!」
目元を大きな手で覆い、≪もうこいつダメだ≫と悟るプロシュート。
同時に、そんな男が率いるチームに腰を据える自分も――と考えかけて、やめた。
彼が遠い目をした一方で、リゾットは不思議そうに首をかしげながら言葉を紡ぎ出す。
「そのろりこん? とやらではないぞ。オレは名前を放っておけないだけだ……それと、お前は分かっていないようだが、≪愛は年齢の壁を超える≫」
「……おい、オレらが暗殺者ってこと忘れてねえか? 真顔で余罪の宣言してんじゃねえよ」
冷めた眼差し。
それを男へ向けていたプロシュートは、不意に名前――特に胸元へ視線を移し、深いため息をついた。
「あにき……?」
「……名前、デリカシーがねえことを言って悪いが、菓子は普通食べ過ぎたら太っちまうもんなんだよ」
「うん……前にあにき言ってたよね! 確かに、ここが胸焼けみたいにすごく重たい気がする……(しゅん)」
「そう。それなんだよ。こんだけ菓子を食っておいて、なんでその養分は全部≪バスト≫に行ってんだ……それがお前の危機感を薄くしてんだろうな。だが菓子は控えないとならねえ……自分を律しろ」
先程とは異なり、少し優しくなった声色に項垂れ、頷く少女。
食べたい、けれども食べ過ぎはいけない。
下唇を噛む彼女に、今度はリゾットがそっと声をかける。
「名前……頑張ろうとする気持ちはいいが、あまり無理はするな。無理をしすぎると、逆に身体に良くない」
「えっ、そうなの……?」
「そうだ。だから、食べたいときにはオレに言うんだ。いいな? それに、世間に対する危機感も薄くて構わない……オレたちがお前を守ればいいだけの話だからな」
紡がれる男の考え。
自己防衛を訴える自分とは違う発言に、ブチッとプロシュートの堪忍袋は限界を示した。
「……おいリゾット、テメー話を蒸し返してんじゃねえぞ。第一、名前を狙う変質者は世の中にうようよいんだッ! もちろん、残念だがこのアジト内にもな……それを自分で打破できねえでどうする!」
「ああ、そういう輩が蔓延っているのは理解しているさ。だからこそオレたちが動くんだ……名前自身が相手を打ち負かす方法は、後で考えればいいだろう」
ゴゴゴゴゴゴと底から鳴り止まぬ地響き。
このままでは、リビングが戦場と化しかねない。
そうなってしまえば、仕事から帰ってきた仲間は目を剥くだろう。
「……」
「……」
睨み合いがどこまでも続く――そう思われたそのとき。
彼らの服の裾をクイッと細く白い指が掴んだ。
一斉に男たちがそちらを振り向けば、名前が目尻に涙を浮かべているではないか。
「名前!?」
「おい名前、お前――」
「リゾくん、あにき……喧嘩しちゃ嫌だよ……っ」
「「!」」
目を見開く二人。
一方、彼女は今にも泣き出しそうになりながら、音を紡いでいく。
「名前、頑張って二人の言うことどっちも聞く! だから、だからっ! 仲良しに戻って……!」
お菓子より、少女にとって家族のようなこのチームの方が、何物とも比べ物にならないほど大事だったのだ。
ちなみに、男たちはこれといって特に≪仲良し≫という間柄でもないのだが――
名前のただならぬ想いに、押し黙ってしまった。
その漂う静寂に、終わりを捉えるのが嫌で、彼女はぽつりぽつりと話し続ける。
「っ……それにね? 名前、もうオトナなんだよ? だって――」
「ホルくんから、えと……せくしー! な下着をもらったんだもん!」
「あ?」
「……は?」
空気の一変。
それは突然のことだった。
これでもかと言うほど目を大きく見開いたプロシュートが、少女の華奢な肩を掴む。
「名前。お前まさか……その下着、≪布の面積が異常に小せえ≫とか言わねえだろうな!?」
「? そうだよ? それが、オトナの第一歩なんだって!」
だから、今日も着けてるの!
照れ臭そうに告げ、花が咲き誇るように可愛らしくにこにこと微笑む名前に対し、当然ながら二人は頬を引きつらせた。
そして――
「チッ、リゾット。テメーとは一時休戦だ……あいつも帰ってきたみてえだし、行くぞ」
「……ああ」
「?」
おもむろに頷き合い、立ち去っていく長身の男たち。
平和を取り戻したリビングには、相変わらず笑みを浮かべたままの小柄な少女が一人、さまざまな菓子と共に残されたのだった。
【暗チ式】教育のすゝめ
悪い≪変態≫には、容赦ありません。
〜おまけ〜
「あ……あにき!」
どこからかホルマジオの雄叫びが届いた数十分後、名前はたったっとプロシュートの元へ駆け寄っていた。
「? 名前、なんだ? お仕置きされに来たのか?」
「!?(ブンブン)」
やはりお仕置きは嫌らしい。
勢いよく首を振った彼女に喉を鳴らしながら、そのあどけない顔を覗き込む。
すると、なぜか恥ずかしそうな少女は上目遣いでこちらを見つめてきた。
「えと、あのね?」
「ん?」
「お菓子は、どれも美味しいけど……名前はあにきのお菓子が一番好き!」
「! ……ふっ、そう言ってもらえるとは、光栄だぜ」
プロシュートも好きで厳しくしているわけではない――優しい笑みで頭を撫でれば、名前は擽ったそうにしながらも破顔する。
「今から、なんか作るか」
「うんっ!」
しかし、二人がキッチンに入った瞬間、名前の成長した姿をカメラで収めようとリゾットが乱入し、少女との穏やかな時間を潰されたプロシュートがキレたことで、休戦はすぐさま取りやめになったとか。
お待たせいたしました!
親バカリーダーと教育ママ兄貴で、ロリ巨乳ヒロインの教育で対立するお話でした。
リクエストありがとうございました!
タイトルが明らかに、某一万円札に描かれている人の本のモジリですが、捧げさせていただきます……!
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひclapへお願いいたします!
Grazie mille!!
polka
>
※ギャグ甘
とある昼下がり。
真顔のままソファに座るリゾットとその後ろに隠れるように潜む名前。
そんな傍から見れば、≪親子≫のように見える彼らの目の前には――
「おい……こりゃあどういうことだァ? ええッ?」
腕を組みながら足を踏み鳴らし、青筋を立てたプロシュートが立っていた。
かなりお怒りモードの男。
彼の視界には、溢れんばかりの≪お菓子≫がテーブルに積み上げられている。
「名前、名前名前よ〜! 前におやつは一日一個っつったよな? ……まさか忘れたわけでもねえだろ?」
「わっ、忘れてないよ! 忘れてないけど……、うう」
「プロシュート。そう頭ごなしに叱るんじゃあない。名前が怖がっている」
普段から名前を一人前のシニョリーナに育て上げようと、まるで教育ママのように厳しく躾をしてきたプロシュート。
一方、今にも泣き出しそうな少女の擁護にいつどんなときでも回る親バカのリゾット。
今日も今日とてそれに安心したのか、彼女は彼の大きな背に隠れ続けている。
そんな様子が、ますます男の心をイラつかせた。
「っ、あにき……お願い……怒らない、で?」
「……別に怒ってるわけじゃねえ。だが、テメー自身を律することはお前にとって大切なんだ。わかるか?」
「自律……、うん(しゅん)」
「よしいい子だ。……わかったら、さっさと前に出てこい! 今日は徹底的にお前の嫌いな≪あの仕置き≫をしてやっからな……?」
「! やだっ……≪ぐれふるでおやつ枯らせちゃう≫のは、いやーっ」
ソファからグイグイと細腕を引こうとするプロシュートと、絶望の二文字を真ん丸な瞳に浮かべ、頭が取れてしまいそうなほどブンブンと首を横へ振る名前。
当然、その状況をリゾットが黙視できるはずもなく。
「いい加減にしろ。名前がここまで嫌がっているにも関わらず、なぜお前は実行しようとするんだ」
「……リゾット、お前なあ」
「それと、お前のことだ。≪お仕置き≫などと称して名前にオトナの階段を登らせるつもりだろう……そうはさせるか」
すかさず彼女の腕を取り、自分の膝の上に乗せてしまった。
突然のことに目をぱちくりさせる少女。
それを一瞥したプロシュートは、己に≪とんでもない容疑≫がかかっていることはあえて無視して、おもむろに口を開く。
「ハン、オレはお前の頭の方が心配だがな……まあいい。今は、んなことより名前の話だ。名前は自分が悪いってことを自覚してんだよ」
「自覚しているというなら、もういいだろう。オレからよく言い聞かせておく……名前、今日はいつもの場所でジャッポーネフェアをしているらしい。≪和三盆≫だけでなく≪まんじゅう≫や≪金太郎アメ≫もある。今回のことを反省しつつ、それを買いに行こう」
「! リゾくんほんと? 名前、それ美味しいからすごく好きっ……でも」
「…………、ちょい待ちやがれリゾット」
優しく音を紡ぎ出し、名前を愛でるようになでていたチームリーダーに、言わずもがな彼は制止をかけた。
≪反省≫。
それはつまり、自分のしてきたことを省みるということ。
にも関わらず、なぜすぐに買い物へ行こうとする。
いや、そんなことより――
「毎月の小遣い制にしてんのに、どうしてこんなにも菓子が買えんのか……ずっとそう思い悩んできたが、やっぱりテメーが原因かッ!」
この少女を誘拐(連行?)してきたときからおかしいとは踏んでいたが、男の甘やかしがここまでひどいものとは。
一方、呆れ切った表情を見せるプロシュートに対して、リゾットはいつも以上に眉をひそめた。
「……原因とは人聞きの悪い。オレはただ、名前の見聞を広めようとしているだけだが」
「菓子の面でだけだろうが……!」
元々、彼女の教育において対立することが多かった二人。
今回の菓子騒動で、それが表面化したと言える。
新たな事実が発覚し、もはや根本的な問題から解消していかなければ、名前のシニョリーナ計画実行は難しい。
そう判断したプロシュートは、感情を抑えることなくそのまま声を荒らげ続けた。
「大体、菓子を買い与えて、テメーの甘やかしが名前のためになるとでも思ってんのか? ならねえだろ!」
「そうとは言っていない。だが、お前のように躾や仕置きなどと厳しすぎても何も生まれないだろう。名前には萎縮することなく、伸び伸びと育ってほしい」
「ハッ……にしても限度があるだろうが。このままだと、自分では何もすることができねえマンモーナになっちまうぞ」
緊迫した雰囲気。
それをもたらす彼らの間で、渦中の彼女はただキョロキョロと二人を交互に見ることしかできない。
「……リゾット。親バカのテメーに言っとくけどな、世間知らずじゃ後々苦労すんだよ。知っておくべきことを今から知っておかねえと、結婚して子供産むときが来たら、いろいろ困るだろうが」
「結婚、だと……!? 名前ッ、オレはどこの馬の骨だか知れない奴との結婚など、絶対に認めないからな!? どうせならオレと籍を入れよう!」
「せき……? リゾくん、どうしたの?」
「あーッもう、いちいちめんどくせえなあ、テメーは! たとえばの話だろうが! つーか大体、こいつの保護者語ってる時点でいろいろアウトだ! このロリコン野郎ッ!」
目元を大きな手で覆い、≪もうこいつダメだ≫と悟るプロシュート。
同時に、そんな男が率いるチームに腰を据える自分も――と考えかけて、やめた。
彼が遠い目をした一方で、リゾットは不思議そうに首をかしげながら言葉を紡ぎ出す。
「そのろりこん? とやらではないぞ。オレは名前を放っておけないだけだ……それと、お前は分かっていないようだが、≪愛は年齢の壁を超える≫」
「……おい、オレらが暗殺者ってこと忘れてねえか? 真顔で余罪の宣言してんじゃねえよ」
冷めた眼差し。
それを男へ向けていたプロシュートは、不意に名前――特に胸元へ視線を移し、深いため息をついた。
「あにき……?」
「……名前、デリカシーがねえことを言って悪いが、菓子は普通食べ過ぎたら太っちまうもんなんだよ」
「うん……前にあにき言ってたよね! 確かに、ここが胸焼けみたいにすごく重たい気がする……(しゅん)」
「そう。それなんだよ。こんだけ菓子を食っておいて、なんでその養分は全部≪バスト≫に行ってんだ……それがお前の危機感を薄くしてんだろうな。だが菓子は控えないとならねえ……自分を律しろ」
先程とは異なり、少し優しくなった声色に項垂れ、頷く少女。
食べたい、けれども食べ過ぎはいけない。
下唇を噛む彼女に、今度はリゾットがそっと声をかける。
「名前……頑張ろうとする気持ちはいいが、あまり無理はするな。無理をしすぎると、逆に身体に良くない」
「えっ、そうなの……?」
「そうだ。だから、食べたいときにはオレに言うんだ。いいな? それに、世間に対する危機感も薄くて構わない……オレたちがお前を守ればいいだけの話だからな」
紡がれる男の考え。
自己防衛を訴える自分とは違う発言に、ブチッとプロシュートの堪忍袋は限界を示した。
「……おいリゾット、テメー話を蒸し返してんじゃねえぞ。第一、名前を狙う変質者は世の中にうようよいんだッ! もちろん、残念だがこのアジト内にもな……それを自分で打破できねえでどうする!」
「ああ、そういう輩が蔓延っているのは理解しているさ。だからこそオレたちが動くんだ……名前自身が相手を打ち負かす方法は、後で考えればいいだろう」
ゴゴゴゴゴゴと底から鳴り止まぬ地響き。
このままでは、リビングが戦場と化しかねない。
そうなってしまえば、仕事から帰ってきた仲間は目を剥くだろう。
「……」
「……」
睨み合いがどこまでも続く――そう思われたそのとき。
彼らの服の裾をクイッと細く白い指が掴んだ。
一斉に男たちがそちらを振り向けば、名前が目尻に涙を浮かべているではないか。
「名前!?」
「おい名前、お前――」
「リゾくん、あにき……喧嘩しちゃ嫌だよ……っ」
「「!」」
目を見開く二人。
一方、彼女は今にも泣き出しそうになりながら、音を紡いでいく。
「名前、頑張って二人の言うことどっちも聞く! だから、だからっ! 仲良しに戻って……!」
お菓子より、少女にとって家族のようなこのチームの方が、何物とも比べ物にならないほど大事だったのだ。
ちなみに、男たちはこれといって特に≪仲良し≫という間柄でもないのだが――
名前のただならぬ想いに、押し黙ってしまった。
その漂う静寂に、終わりを捉えるのが嫌で、彼女はぽつりぽつりと話し続ける。
「っ……それにね? 名前、もうオトナなんだよ? だって――」
「ホルくんから、えと……せくしー! な下着をもらったんだもん!」
「あ?」
「……は?」
空気の一変。
それは突然のことだった。
これでもかと言うほど目を大きく見開いたプロシュートが、少女の華奢な肩を掴む。
「名前。お前まさか……その下着、≪布の面積が異常に小せえ≫とか言わねえだろうな!?」
「? そうだよ? それが、オトナの第一歩なんだって!」
だから、今日も着けてるの!
照れ臭そうに告げ、花が咲き誇るように可愛らしくにこにこと微笑む名前に対し、当然ながら二人は頬を引きつらせた。
そして――
「チッ、リゾット。テメーとは一時休戦だ……あいつも帰ってきたみてえだし、行くぞ」
「……ああ」
「?」
おもむろに頷き合い、立ち去っていく長身の男たち。
平和を取り戻したリビングには、相変わらず笑みを浮かべたままの小柄な少女が一人、さまざまな菓子と共に残されたのだった。
【暗チ式】教育のすゝめ
悪い≪変態≫には、容赦ありません。
〜おまけ〜
「あ……あにき!」
どこからかホルマジオの雄叫びが届いた数十分後、名前はたったっとプロシュートの元へ駆け寄っていた。
「? 名前、なんだ? お仕置きされに来たのか?」
「!?(ブンブン)」
やはりお仕置きは嫌らしい。
勢いよく首を振った彼女に喉を鳴らしながら、そのあどけない顔を覗き込む。
すると、なぜか恥ずかしそうな少女は上目遣いでこちらを見つめてきた。
「えと、あのね?」
「ん?」
「お菓子は、どれも美味しいけど……名前はあにきのお菓子が一番好き!」
「! ……ふっ、そう言ってもらえるとは、光栄だぜ」
プロシュートも好きで厳しくしているわけではない――優しい笑みで頭を撫でれば、名前は擽ったそうにしながらも破顔する。
「今から、なんか作るか」
「うんっ!」
しかし、二人がキッチンに入った瞬間、名前の成長した姿をカメラで収めようとリゾットが乱入し、少女との穏やかな時間を潰されたプロシュートがキレたことで、休戦はすぐさま取りやめになったとか。
お待たせいたしました!
親バカリーダーと教育ママ兄貴で、ロリ巨乳ヒロインの教育で対立するお話でした。
リクエストありがとうございました!
タイトルが明らかに、某一万円札に描かれている人の本のモジリですが、捧げさせていただきます……!
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひclapへお願いいたします!
Grazie mille!!
polka
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