01
※男装ヒロイン
※裏



今まで、いろんな努力をしてきた。


メローネに風呂や部屋を覗かれないよう、罠を仕掛けたり、


プロシュートの挨拶ともいえるセクハラにも堪えた。


それに、暗殺業って体力もいるから運動もしたし、ギアッチョの無理な行動にもついていけた。








なのに。



なのに!!




「り……リーダー?」


「……」



なんで俺は――私は自分の部屋でリゾットに服をひん剥かれているのだろうか。




話は数十分前に遡る。






「あ〜〜……頭痛い、ふらふらする、身体も熱い……」



いつものごとく誰よりも早起きをした名前は、すぐさま己の身体にある違和感を感じ取った。


まさに≪風邪≫だ。



「まあ……仕事、ねえからいいけど……はぁっ」


こんなに苦しくては、胸元に布も巻けない。



ぐわんぐわんと頭を責め立てる痛みに堪えきれず、再びベッドへ倒れ込む。


正直、うつぶせは苦しいのだが、動く気力も出ない。




「う……」


もういいや。このまま寝ちまおう――Tシャツに短パンのまま枕を抱き込み、睡魔に身を委ねようとしたそのときだった。




コンコンコン



「……名前?」


「!!!」


扉越しから聞こえた心地よいテノールに、名前は頭痛も忘れて勢いよく顔を上げた。



――リーダー!? どうしてこんなときに……!


暗殺チームリーダー、リゾット。


名前はこのチームに配属されたときから、彼を同じ暗殺者として尊敬していた。


リゾットは厳しくも優しい。

何より――自分を男として扱ってくれている(まあ、ただ鈍感なだけかもしれないが)。



心に蔓延るのは尊敬であり、恋慕ではない……はず。


「ッ……」



身体はだるく重い。


しかし、無視をするわけにもいかないと、名前はよろよろと歩きドアノブを引いた。



「……何?」


「いや、頼みごとをしようと思ったんだが……どうした」


「あ?」


「顔が赤いぞ。風邪か?」



そうか、今の自分は顔まで赤いのか。困った。


眉間にしわを寄せてこちらを見下ろすリゾットに、名前は大したことではないと示すため、にへらと笑った。


「いや〜、ちょっと体調悪いだけだからさ……それより、用ってなんだよ」


「……」


「ん?」


「……入るぞ」



刹那、制止する暇もなく、身体を自分の部屋へねじ込む男。

特にバレたらヤバいというものを置いているわけでもないが――名前は彼の行動にギョッとした。



「ちょッ、勝手に入んなって……!」


「ちゃんと言っただろう、入るぞと。それより、早くベッドへ横になれ」


「!? な、なんであんたにそんなこと言われなきゃ――」


「早くしろ。お前の風邪を治すのが最優先だ」



ダメだ。

この男は言い出したら聞かない。


小さく舌打ちをした名前は、ふらふらとしながらなんとかベッドへと戻る。



「……薬を取ってくる、待っていろ」


「え!? そんなのいらねえって……!」



背後から聞こえた言葉に慌てて返すが、そのときにはもうリゾットは部屋から出て行ってしまっていた。



「……ったく」


――これじゃあ暗殺者というより、親子みてーじゃねえか。


ふてくされたように掛け布団を顔まで被り、悪態をつく名前。


しかし、やはり身体は疲弊しているらしい。



全身を包む温かさに、いつの間にか名前は瞼を閉じてしまっていた。


今度は、うつぶせではなく仰向けになって――











「名前? ……眠っているのか」


数分後、水の入ったグラスと薬の置かれたトレイを手に、リゾットが部屋へ足を踏み入れる。


だが、微かに耳に届いた寝息。


それが布団の中からだと悟った彼は、ベッドのそばに近寄り、床へトレイをそっと置いた。



「……まったく。布団を被りすぎだ……熱がこもってしまうぞ」



そして、白いそれを持ち上げ、男は瞳を閉じている名前の顔を確認した、が。



「……?」


その下――正確に言えば、違和感のある胸元にリゾットの思考は停止する。



Tシャツがくっきりと表す二つの膨らみ。

明らかに、≪男≫のものではない。




「まさか」


当然ながら、暗殺に男女といった性別は関係ない。





しかし――



「隠していたことは、いただけないな」


ギシッ



じっと眠る彼――彼女をまっすぐ見下ろしていたリゾットは、おもむろに布団を剥ぎ、名前の上へと跨った。



「すー……すー……」


「……名前」



彼女はまだ、目覚めない。



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