静まり返る部屋に、ペン先が紙を擦る音だけが響く。
黙々と書類を進めていたリゾットは、ふと名前は何をしているのだろうかと思い至った。
「名前?」
反応がない。もしかすると眠ってしまったのかもしれない。
今日は彼女と交われないことを残念に思いつつ、布団をかけておこうと彼はペンを置き、おもむろに後ろを振り返った、が。
「!?」
いつの間にか、名前が自分の背後に立っていたらしい。
その予想もしなかった行動に驚きながら、俯く少女にどうしたのかと心配になり、手を伸ばした瞬間――
「ふふ……」
「は?」
リゾットは、机と自分の上に跨る名前の間に挟まれていたのである。
「クス、リゾットさん?」
「!」
どうやら、現実逃避をしていたらしい。
色っぽく呼ばれた名に、ハッと我に返れば、小さく笑われてしまった。
「名前。どうしたんだ、いったい……」
「……どうした、って?」
「いや、その……様子がおかしいというか、なんというか」
「わたしの身体……今、すごく熱いの」
おかしい。明らかにおかしい。
だが、舌なめずりをする彼女はとても扇情的で、思わず正直になってしまいそうな≪自身≫を叱咤する。
「あ、熱い……?」
「はい。それに、すごくドキドキしてる……ほら」
「!?」
彼の手を優しく取ったかと思えば、己の左胸へ押し当てる名前。
その揉みしだきたくなる柔らかさと熱さ、そして鼓動の速さにくらりとしてしまいそうだ。
「ッ、名前……」
「……リゾットさんは?」
「え?」
「わたしで……欲情、してくれてる?」
「!」
すでに主張し始めていたソレを、名前の人差し指がズボン越しになぞる。
その、今までにない快感に絆されそうだ。
しかし――
「名前、っは……今日は、もう寝なさい」
「……どうして?」
「どうしてって……」
「リゾットさんを、気持ちよくさせたいの」
次の瞬間、とにかく名前の色気に圧されまいと堪えていたリゾットは、両手首の違和感に目を見開く。
「ふふ、リゾットさんの手、しばっちゃった……」
「なッ」
「頭巾、伸びちゃったら……ごめんね?」
椅子の背から離れない両手。
ちらりと机を一瞥すれば、置いてあったはずの黒頭巾がない。
本当に縛られてしまったらしい。
「じゃあ……心置きなく」
「ッ、待て――」
「いや」
カチャッ
音を立てて外されたのは、上半身の斜めベルト。
胸筋から腹筋へかけて、白い手を焦らすように動かす少女。
いや、今は少女と言うべきではないのかもしれない。
「くッ、は……やめ、ろ」
「リゾットさんって、意外に感じやすいんだぁ……ふふ、素敵」
「ッぁ……!」
快感にリゾットが眉をひそめる。
それに気をよくしたのか、名前はおもむろに彼の首筋へと舌を這わせ始めた。
「! 名前……な、にを」
「だいじょーぶ。印を、つけるだけ、だよ……んっ」
「はぁ、はっ……」
困惑と快楽。
今、自分を見て笑んでいるのは、本当にあの名前なのだろうか。
どうせなら、掻き抱いてしまいたい。
恥じらいを見せる少女もたまらないが、心の底では≪あってもいい≫と望んでいたのかもしれない。
――この両手さえ解ければ。
すぐに名前の腰を掴み引き寄せ、パジャマと下着を剥ぎ取り、その濡れそぼった秘部へ挿入したい。
そして、存分に膣内を堪能して、力が尽きるまで己の子種をこの少女の子宮へ――
「ん、んっ……あ、リゾットさんの、おっきくなったぁ」
「!」
耳を掠めた、嬉しそうな声色。
ギョッとして至近距離の名前を見つめると、内腿を擦り付けられながらにこりと微笑まれる。
「感じて、くれてるの……?」
「ッ、そうだと言ったら?」
交わる視線。
少しでも優位に立とうと腰を揺らし、挑発的な表情を少女へ向ければ――
「んっ、嬉しい」
「!」
「すごく……嬉しい、です」
ドキリ
さらに高ぶる胸。
せめて、それだけは悟られないように、ただただ彼女を凝視していると――
「だから、コッチもさせてね?」
「は? っう……!?」
刹那、ズボンの中へ侵入する名前の左手。
器用にトランクスをずらせば、天井を向いた彼の一物が露わになる。
「っ名前! それは……!」
「まずは、これかな?」
「ッく、ぁ!」
ギシリ、と音を立てる椅子。
そして彼女は、我ながらグロテスクだと感じる性器を手でゆっくりと扱き始めた。
びくりびくりと反応してしまう自身。
その先からは、感じていることを示す、液体が溢れ出している。
「ふふ、これ……先走り汁、ですよね?」
「!? ど、こで……そんな、こと、ばを……ッぁ!」
つい最近、名前は≪性交≫を身体で覚えたはずだ。
だが、男を快感へと誘導する動きは手慣れているように感じて――
「わたし……一応リゾットさんより、長生きなんですよ? 知識ぐらいは、あります……!」
「うっ、はぁ、はぁッ……名前……っ!」
ダメだ。
このままでは、本当にイかされてしまう。
自分が彼女をイかせたい――そんな≪プライド≫があるのも、否めない。
グッと奥歯を噛み、できるだけ無表情で刺激に堪えようとしていると――
「……ふふ」
「ッ、名前……?」
消えた痺れ。
昇り詰めかけていたこともあって、手を離した彼女に熱い視線を送ってしまう。
すると――
「少し、待ってくださいね?」
名前が彼の上から退いたかと思えば、リゾットの足の間に跪いたのだ。
そして、自分のモノへ色づいた唇を寄せる彼女に、彼は≪今からしようとしていること≫に気が付いた。
「! 名前ッ、やめ――」
「あむ……んんっ、おっきくて入らな……んぐ」
「うぁ……!」
温かい口内。
絡みつく唾液に、自身の先が捉えた喉に、意識が飛びそうになる。
だが、それをなんとか振り払って、リゾットは名前の口から離そうとした、が。
「んむっ、足……閉じちゃ、や」
「!?」
上目遣い。こちらを見上げる彼女に、自然と体の力が抜けてしまう。
その瞬間、名前はより深く咥えようと彼の足に手を置き、喉を開く。
「んっ、すこし……にがい、っふ」
「はぁ……ぅっ、そこで、喋る、なッ」
もちろん、相手は愛しい名前だ。
あわよくば、いつかはしてほしい――想像しなかったと言えば嘘になる。
しかし、想像を遥かに超えてしまった快感と名前への劣情に、リゾットは必死で腰を動かしそうになる衝動を抑えていた。
一方、それに気付いているのかいないのか――少女は懸命に性器を咥え込んでいる。
赤い舌をねっとりと沿わせ、時には裏筋を舐めた。
思い出したかのように先を吸えば、彼の肩は大きく揺れる。
その反応に、確かに彼女は大きな喜びを感じていた。
「んぐっ……ん、ふっ」
だからこそ、もっと気持ちよくなってほしい――その感情が名前を突き動かした。
「ぁ、ッく……名前、はっ」
「んぅ……っそろそろ、んんッ?」
「ッはぁ、口を、離すんだ……ぅっ!」
「や」
「!? 名前……ッ!」
困惑に眉をひそめる男に対し、少女は相も変わらず舐め続ける。
ジュブリと音の立つ彼女の口元。
ああ、出したい、出してはいけない。
耳元で囁く天使と悪魔に苛まれながら、息を吐き出し――
「くッ……!」
「ぁっ」
今すぐにでも切れそうな理性の中、リゾットはまさに絶頂の直前に自分の性器を引き抜いた。
刹那、爆ぜる白濁液。
「ひゃ……っ」
それは当然、名前の顔へと飛び散った。
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