〜Crimson night〜


※リーダー夢
※連載「Uno croce nera...」のヒロイン
※吸血裏





それは、ある丑三つ時のこと。


「……っはぁ、は……んッ」



情事の香りがすでに立ち消えた部屋で、苦しげな一つの息が響き渡っていた。


それを吐き出すのは、ただただ下唇を噛み締め≪衝動≫に堪え続ける名前。

カーテン越しの青白い月明かりが、ひそめられた眉を浮かび上がらせる。


苦悶を滲ませた――今の少女はまさに扇情的だ。


「っ……はぁ、はぁ……!」



――血が、ほしい……ううん、ダメ……っ。


欲しくてたまらない。

堪えなければ。


脳内を支配する二極の感情。


今、自分と己を抱き込むリゾットは互いに何も纏っていない。

たとえ素肌がひやりとした寒さを捉えても、身体は燃えるほどの熱を感じていた。


脈打つ男の首筋へ、自然と近付けてしまう唇を止めようと、紅潮した頬の彼女はすぐさま首を横へ振る。



「ッはぁ、んっ……はぁ……は」


とにかくこの部屋を出なきゃ――このままでは彼を襲ってしまいそうだ。

ベッドから抜け出し、何かしらの服を探すため、名前は乱れた息のままそっと身を捩った、が。



「……、きゃっ!?」


「ん……名前」


「り、リゾットさん……っん」



まるで、≪離さない≫。

そう告げるかのように、強められる腕の力。


だが、頭上で寝息が聞こえることから、起きているわけでもないらしい。


――どう、しよう……!



より拘束されたことで、より鼻を擽るリゾットの香り。

鼓膜が鮮明に覚える、温かな鼓動。

決して収まることのない衝動。


「っ、は……んッ……ごめ、なさい……っ」



≪いただきます≫。

ぽつりと謝罪を口にした少女が、震える白い手をガタイの良い肩へ乗せる。


そして――


「ん……っ」


くぐもった艶かしい声。

初めて、彼女は愛しい恋人の頸部へ鋭い歯を立てた。


「っふ、う……、……んん」



口内に広がる甘美な味。

嫌いでたまらないはずなのに――彼の血は自分の喉を潤していく。


――≪美味しい≫……。


――……もっと。


――もっと……ほしいの。



深紅の瞳はぎらつき、鎖骨に置かれた指には自ずと力が込められた。


「ぁ、んっ、ん……ふ、っぅ」



朝、目が覚めたとき、リゾットになんと説明すればいいのだろうか。

もしかしなくても、嫌われてしまうだろうか。


頭を過ぎるそんな恐怖を、目の前にある≪欲≫は容赦なく侵してしまう。


「は、ぁっ、はぁ……リゾ、トさ……ッ」



ふるんと揺れる、陶器のような乳房を男の胸板へ押し付けていることすら気付かぬに、縋るがごとく≪食事≫を続ける。

トクトクと上下する喉。

充足感、満腹感で満たされる心。


そして、≪もうこれ以上はダメだ≫と自身を叱りつけた名前が、赤く染まった唇を首筋から静かに離した――そのときだった。



「……ひゃんっ」


突然捉えた、臀部を撫で回す大きな手のひら。

ねっとりとした弄るような手つきに、ピクンと肢体を震わせる名前。


一方、その動きが止まることはない。



「ふあ、っ……や、だ……っあん!」


「……」


「ぁっ、いや……リゾットさ……おし、り……ッ撫でな、でぇっ////」



いくら今と間隔が空いたとしても、今夜もそれなりに激しかった。

忘れかけていた数時間前の行為を思い出したのか、再び荒い息を漏らす彼女の秘境がいやらしい蜜を分泌し始めた刹那、


「ぁ……!」



声を上げる間もなく、身体はいともたやすく反転していた。

視界には夜色を纏った天井と、自分を黙々と見下ろすリゾット。


突き刺すようなその≪赤≫に、思わず顔をそらそうとするが、顎を指先で囚われ素早く固定される。

どうすれば――焦りゆえか、絶望ゆえか、羞恥ゆえか。

瞳を潤ませる少女に対し、それまで黙っていた男がおもむろに口を開いた。



「名前……今日はずいぶん積極的だな」


「! あ……っごめん、なさい」



いつから起きていたんですか?

この体勢は?


尋ねたいことはたくさんあったが、視界の端に映った≪二つの小さな穴≫に、罪悪感で胸が埋め尽くされる名前。

しかし、彼は気にするなというように、ゆっくりと首を横へ振る。


「謝らなくていい」


「で、も……っ」


「オレは何も禁じていない。名前が必要なときに求めてくれればいいんだ」


「っ、リゾットさん……」



重なり合う額。

なんて優しいのだろう――相変わらず慣れない至近距離にドキリとしながらも、安心した彼女は小さく微笑む、が。


「ッ!」


不意に、太腿が感じ取った≪硬さ≫にハッと息をのんだ。


そのひどく熱い感覚に、先程以上に顔を真っ赤にした少女がおずおずと見上げれば、眉尻を少しばかり下げ苦笑を漏らすリゾットの姿が。


やはり、名前の吸血は彼に快感をもたらしてしまうのだ。


「……すまない。いいか?」


「っ(コクン)」



行為の了承。

自分がそうさせてしまった――拒否などできるはずがない。


いや、そもそも断る理由がない。

慕っている相手と交わるのだから。



「そうか。……では、早速」


「ひぁっ……!」



首を微かに縦へ動かした彼女に、箍が完全に外れたのだろう。

身体を少し下へずらした男は、躊躇うことなく少女の赤い飾りを口に含んだ。


左手で華奢な躯体にしては豊満な乳房を手荒く揉みしだきながら、舌先でコロコロとそれを弄っていく。



「ぁ、っぁ……リゾットさっ、ぁん、そ、んなっ、いきなり、ぃ……あっ!」


「ふ……そう言いながら、乳首はどんどん硬くなっていくぞ」


「! はぁ、はッ……言っちゃ、やぁあ……っ」


名前はビクリビクリと肩を揺らし、淫らな嬌声を上げつつも、胸元にある頭を退けようとするが、絶え間なく押し寄せる快感で手に力が入らない。


一方、転がされたかと思えば赤子のように吸われ続ける、ぽってりとした唾液塗れの突起。


「……」


「ぁっ、ん……はぁっ、はぁ……、?」



次の瞬間、それは唐突だった。

ふと何かを思い至ったのか、彼はグニグニと触感を堪能していた手を離したのだ。


そして、もう片方の赤く色付いた突起を――


「ひゃ、っぁああん!」



ピンと爪で弾き始める。

その刺激ともう一方が甘噛みされた感覚に、白い喉を惜しげもなく晒してしまう名前。


決して戻ることを許されない官能に引き込まれ、ぼんやりと霞む視界。

自分に翻弄されることしかできず、瞳を潤ませる少女に、リゾットはわざとらしく嘲るような笑みを浮かべた。


「名前は一度シた後の方がますます乱れるな……頼むから、オレを煽るんじゃあない」


「っちが……あお、ってなんか……いな、ぁあッ」


「それを煽っていると言うんだ」



掻き立てられる加虐心。

思わず舌なめずりをしてしまいそうになりながら、彼は何度も爪先で甘い痺れをもたらした。


そうして弄ばれる度に彼女が背中を反らせる。



「ぁっ、ぁっ……やら、はッ、それ、っいやぁ!」


「ふむ……つまり≪頃合い≫なんだな」



――……え? 頃、合い?

その言葉の意味を、朦朧とする脳内で名前は考えていた、が。



クチュリ



「!?」


内腿へと差し込まれた温かな体感に、意識と神経はすぐさまそこへ集まる。

しかし、抵抗する暇も与えないというかのように、男は両腿を掴み上げ、カーテン越しにこちらを照らす月光へと少女の秘部を曝け出した。


テラテラと愛液で濡れる花弁。

それらを左右に指で広げると、リゾットが不意に口を開く。


「ああ、こんなにもグチュグチュにして……シーツもまた変えなければならないな。おもらしをしたようにびしょ濡れだ」


「! ッそ、な……ぁっ、ダメ……まって、ッひろげな、で、ぇっ」


「ダメなのか? だが……膣はモノ欲しげにヒクヒクしているぞ」


「やっ、やら、はぁっ、ぁ……違うの、ぉ……!」



快感をなかなか素直に享受せず、彼女は懸命に首を横へ振った。

ところが、腫れた陰核を掠める息でさえも反応してしまっている名前。


だからこそ、そんな仮初の否定が彼に通用するはずもなく。


「ぁっ、いや……っな、に? はぁ、ぁ……ん、っひぁああ!?」


「名前……嘘はいけないだろう」


赤い婀娜やかな舌で、少女の狭いナカを蹂躙し始めた。


グチョグチョと響く水音。

膣壁へ当たる度に及ぶ刺激。

蜜壷をただただ掻き混ぜられる感覚。


そのすべてに、何もかもが囚われている。



「はっ、はぁ……らめっ、ぐちゅぐちゅしちゃ、やらぁ……!」


「気持ちよさそうにして、何を言うんだ……名前、素直になればいい」


「す、なお? ぁっ、ら、って……はぁっ、らってぇっ!」


「可愛いな……オレがもたらす快感に翻弄されているにもかかわらず、いやいやと首を振って。ほら、名前の膣口は愛液をこんなにも溢れ出させているんだぞ?」



下肢を持ち上げられていることで、性感を示す透明な蜜が丸みを帯びた双丘へ伝い落ちていく。

それを追うように舌先を添わせれば、慌てた様子で彼女が少しばかり上体を起こした。


「っぁ、だめ……! そっちは……ひぁっ」


「……安心してくれ。ただ、舐めとっているだけだ」


「あ……っそ、そうです、よね……んっ////」


「ふ、そうだ。それとも……こちらも≪期待した≫のか?」


「!(ブンブン)」



取れてしまうのではないか――と言うぐらい名前が否定を表す。

一方、リゾットの発言は冗談なのかそうではないのか。


定かではないが、ふっと微笑んだ男は再び肉芽や薄紅色に彩る花弁を丹念に舐め始めた。


そして、ある事実をぽつりと呟く。


「止めどなく溢れてくるな……まるで媚薬を盛られたかのようだ」


「! そ、れは……っリゾットさんの、……血が……ぁあっ」



刹那、ハッと我に返って口を噤む少女。

しかし残念ながら、言葉は音となって彼の耳に届いてしまっていた。


「オレの血?」


「はぁっ、は……あっ、う、えっと……っその//////」


「そうか……オレの血が≪媚薬≫か。それはいいことを聞いた」


「きゃっ」



心なしか嬉しそうなリゾット。

その笑顔に改めてシーツに縫い付けられながらも、彼女の心臓がカタンと音を立てる。


自分は何度、彼に恋をしているのだろう。

一方、恥ずかしそうに目を伏せた名前の両足をベッドへ下ろし、身体を元の位置に戻した男。


さらに――


「ぁ、っ……リゾ、トさ……」


「名前……」


「ひぅ、っん、ぁ……あつ、いぃ」



十分に潤った秘部へ、滾った性器の先端をゆるゆると擦りつける。

皮膚が確かに捉える亀頭の熱。

ひどく焦らされている感覚に陥る少女。



だが、羞恥が打ち勝ってなかなか強請ることはできない。


「ぁっ、はぁ、はぁっ……じらさな、でぇ……っ」


「ふ……焦らしているつもりはない。名前、何をしてほしいんだ?」


「〜〜っ////」


淫靡な水音と共に、浅いところだけを攻め立てるモノ。

それだけでも甘く鋭い痺れは走るが――足りない。


ついに、目の前で自分を凝視するリゾットの首へ、彼女はそっと縋り付くように両腕を回した。



「……っリゾットさんの、を……奥、までいれて、ください……!」


「ふむ……≪挿入れるだけ≫でイイのか?」


「!?」


「……すまない、意地悪がすぎだな」



キャパシティーオーバー。

今にもぐるぐると目を回しかねない名前に、≪やりすぎはいけない。徐々に重ねなければ≫と変な方向に反省した彼は、涙で瞳をいっぱいにしている少女のまぶたへ優しくキスをする。


そして、細く滑らかな腰に両手を置いたかと思えば――



「ひぁ、っ……ぁ、ぁあああっ!」


「ッく……名前」


反り勃ったモノで一気に、彼女のヒクヒクしている膣内を貫いた。

その形を覚えているというかのように、肉襞は男の一物を歓迎し、包み込む。


すると、それに応えるがごとく、腰を激しく打ち付け始めるリゾット。


「ぁっ、ぁっぁっ……はげし、っはぁ……リゾ、ト、さっ、激しいよ、ぉ……!」


「はッ……名前は激しくされるのが好きだろう? こんなに締め付けて……」


「! やらぁ、っは、ソコ……ッソコはダメ、ぇっ」


「なら、ココよりココがいいのか?」



次の瞬間、名前の敏感な、いわゆる弱点とは少しずれた場所へ彼が焦点を置く。

自分よりそれをよく知っているはずなのに――かなり意地悪な男に対して、少女は自然と喉を震わせていた。



「いや、ぁっ……そっちじゃ、らめェっ! こっちに、くださ……っぁああんッ」


「ふっ……そうだな。名前はココを先でグリグリされるのが、好きだ」


「んんんっ、ふ、っぁ、はぁ……やっ、ぁ!?」



そのとき、久しぶりにぐるんと変わった視界。

なぜか自分が上になっている。


下半身を捕らえる快感も忘れてきょとんと小首をかしげれば、目前のリゾットがおもむろに舌に歯を立てた。


「!」


「名前、我慢をする必要はない。……欲しいときは欲しがればいい」


「っ……、ん」



わざと半開きにされた唇。

それを珍しく急くように名前が奪うと、再び口腔は血という名の甘い味で占められていく。


しかし、主導権はやはり彼にあるらしい。

あっさりと舌を絡め取られてしまった少女は、鼻腔からくぐもった息を漏らした。

口端から流れ落ちる、どちらのモノかすらわからない唾液。


「んっ、ふ、ぅ……ぁっ!」


「気持ちよさそうだが、こちらも忘れないでくれ」


「んん……!」



下から容赦なく肉棒で打ち付けられる。

足の爪先から旋毛を突き抜けていくその強い快感に、彼女はさらなるそれを求めて自ずと腰を揺らしてしまう。



「ふ、名前はいやらしい子だな……足りないのか?」


「ひぁっ、ぁっ、あっ……ちが……っやぁああ!」


「オレのモノをこんなにも美味しそうにくわえ込んでいるうえに、腰を懸命に振っているんだ……違うはずがないだろう?」


「んっ、ふ……リゾット、さ……っぁ、あん……ッ」



指先でツーと触れられた結合部。

粘膜が擦れ合い、二人の体液は交じり合う。


凶器に近い尖端がコツンと子宮口を掠めた瞬間、≪いつもの終末感≫を悟った名前は髪を振り乱しながら喘ぎ、ますます高い嬌声を上げた。



「ぁっぁっ、あっ……っ、あ、リゾ、トさ……わた、しっ、もう……ひぁあッ」


「名前……名前、そろそろオレも……、ッく」


「んっ、ぁ……っそ、なに揺さぶっちゃ、ぁっ、やら、熱いの、きちゃらめ、ぇ……ぁッ、やあああ……っ!」


ドクリ

注がれる白濁液。

想いを確かめ合うために重ねた唇。


「ん……名前」


「ひ、ぁっ、ん……りぞっと、さん」


名前を呼んでもらえるだけで、鼓動は即座に速いテンポを刻み始めた。

そこではたと気が付く。



愛しい彼の――リゾットのすべてが自分にとって麻薬のようであり、媚薬なのだ。

今更ながら辿り着いた結論に、ひどく熱い欲を子宮で感じ取りつつ、名前は幸福を噛み締めるように口付けを受け入れていた。










〜Crimson night〜
それは、慕情と背徳に満ちた世界。




〜おまけ〜



「ん、っ……あ」


「どうした?」


「えと、ごめんなさい。ずっと乗ってしまっていて……私、退かないと」



身体を乗せたまま微睡み始めていた自分を叩き起こし、彼女はなんとか隣へ移動しようと試みた。

しかし――


「!? あのっ、え……?」



動いたはずが、再び逆戻りしている。

目をぱちくりとさせてこちらを見上げる少女に対し、ふっと口元を緩めた彼はゆっくりと囁きかけた。


「今日は、このまま寝よう」


「え? で、でも……」



いいのだろうか。

紅い瞳に映る戸惑い。


だが、リゾットが言い始めたら聞かない性分だと――人のことは言えないが――知っている名前は、そっと頷き身体を寄せた。


「えへへ……じゃあ、今日だけお言葉に甘えて……おやすみなさい、リゾットさん」


「ああ。おやすみ、名前(なでなで)」


「……あ!」


「ん?」



バッと顔を上げた彼女に、艶やかな黒髪を撫でながら何事かと男が視線を落とせば――



「リゾットさん……イタズラしちゃ、ダメですからね?」


「…………ああ、しない」


しっかりと釘を刺されてしまった。

当然、柔らかな太股へ這わせようとしていた片手を、元の位置へ戻したのは言うまでもない。




数分後。

胸元が捉えた寝息に、少女がすでに眠ったのだと悟る。


「……」


「すう……すう……」


「……(今、背中を下から上へ指でなぞったら怒るだろうか……いや、怒るに決まっているな。だが、ひどく快楽を感じながらも怒った表情を見せる名前はまた可愛い……って何を言っているんだ、オレは。ダメだ。イタズラはしないと約束した。名前との信頼関係が何より大切だ…………、寝よう)」


余談だが、しばらくの間、リゾットの胸中で甲乙付けがたい葛藤が繰り広げられていたらしい。













大変長らくお待たせいたしました!
リーダーで連載の吸血裏でした。
今思い返してみると、最近≪吸血≫のシーンを書いていなかったので久々というか……楽しく書かせていただきました(^p^)
ちなみに、くすぐったさと快感は紙一重と言いますが、おそらく連ヒロちゃんはリーダーによって色々開発ry……おっと、どなたかが来たようですね。


バレッタ様、リクエストありがとうございました!
感想&手直しのご希望がございましたら、是非お願いいたします!
polka



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