真珠magic!


※リーダー夢
※連載「Uno croce nera...」のヒロイン
※緊縛裏




カチャリ、と机に置かれるペンとメガネ。

書類が一段落ついたことで、天井を仰ぎ見たリゾットがふっとため息をこぼした。



「……はあ」


今日は徹夜になるかもしれない。

つまりそれは、少女と一緒に眠ることができないということ。


受け入れがたい事実が心へ押し寄せ、一つの≪絶望≫に潰されそうになっていると――


「あの……リゾットさん。少し、いいですか?」


刹那、赤の瞳に浮かぶ≪光≫。

その呼ばれた名前一つで、胸の内があっという間に変わってしまうのだから、自分も現金になったものだ。


「名前? ……どうした、そんな顔をして」


回転式の椅子に座ったまま振り向けば、眉尻を下げた名前が。


どうしたと言うのだろうか。


「おいで、名前」


「っ……失礼、します////」



迷わずその柔らかい素材のパジャマに隠された華奢な身体を抱き寄せ、日課のごとく己の膝へと乗せた。


すっぽりと両腕に包まれてしまう小柄な恋人。

――ああ、なんて名前は小さいんだ……できることならば、ずっとこうしていたい。


後ろからそっと頭をなで、滑らかな黒髪をじっくり堪能する。

そんな優しい手つきに対し気持ちよさそうに微笑んでから、彼女はおもむろに口を開いた。



「実は……折り入って相談が、あるんです」











「≪護身術を学びに行きたい≫?」


数分後。

愛しい少女の透き通った声が紡ぎ出したのは、男が想像もしなかった言葉だった。


「はい。最近、角を曲がったところの建物に看板が増えましたよね?」


「ああ……あの赤茶色の壁が多い中で、唯一白く塗られた建物か」



そんな彼の呟きに応えるように、頷きと共に返ってくる満面の笑み。

詳細を――と言いたげなリゾットの視線を感じたのか、彼女は刻々と話を続ける。


「そこで護身術のレッスンを始められるみたいで……しかも、今なら無料体験ができるらしいんです……!」


「……」



キラキラと深紅の瞳を輝かせ、至近距離で自分を説得しにかかる名前。

その姿は可愛い――躯体の奥底が反応するほどとてつもなく可愛いが、少女はもっとも大事なことを忘れている。



――護身術……それは、かなりの≪密着≫が不可欠じゃあないのか?


真顔で黙り込むこの男、リゾット・ネエロは全員が全員衝撃と悲観で一歩ならず、五十歩は後ろへ下がってしまうほど独占欲が強いことを。


――そもそも、オレ以外の輩が謀らずとも名前と密着する、だと……?

自然と、滴が落ちたばかりの水面のように脳内へ広がっていく妄想。



「ぁっ、やだ……ど、してこんな……」


「お願いです、離して……いやっ……ソコ、触っちゃダメぇっ!」


まさか、あれもこれも≪護身術≫と銘打っておきながら、嫌がる名前の身体を――



「ダメだッ!」


「へ!?」


「許可できるわけがない……許可するはずがないだろう!」


「え? ええっ?」



なぜか声を荒げるリゾット。

その必死な形相に、彼の頭の中を知る由もない彼女はただただ首をかしげるばかり。


「そ、そんな……私、少しでも自分の身を自分で守れるようになりたいんです。許可、していただけませんか?」


「……、オレが教える」



そして、妄想への怒りでハアハアと珍しく息を切らしていた男は、唐突にとんでもないことを言い出した。


「リゾットさんが、ですか? でも、お仕事が――」


「仕事なら気にしなくていい(こんなにも愛らしい名前を……誰が喜んで他の男に触れさせるものか。むしろ、髪一本にでも触れたら≪メタリカ≫だ)」


「じゃ、じゃあお願いします……?(あれ? なんだかリゾットさんのオーラが黒く……)」



こうして、ほぼ強制的にだが急遽レッスンをすることにした二人。


リゾットは(なんだかんだ言って)暗殺チームのリーダーだ。

きっと、厳しい特訓になる。

頑張ろう――と静かに意気込んだ名前は、同じく立ち上がった彼をまっすぐに見上げた、が。


「では、設定を決めよう。オレは今から≪男A≫だ」


「? リゾットさん、ではダメなんですか?」



不意に放たれた提案は、少女をきょとんとさせるものだった。

一方、あくまで真面目な表情で自身を他人だと主張する男。


ふざけているつもりは、一切ない。


「シミュレーションをした方がより実践的に学べるだろう……名前、今はオレを≪リゾット・ネエロ≫としてではなく、ただの知らない男として見ろ」


「…………、わかりました(しゅん)」



リゾットも難しいことを言う。


恥ずかしくてあまり口にはできないが、好いている相手を≪他人≫として捉えることは不可能に近い。

しかし、こういうときに限って≪天然≫を発動する彼は、項垂れた彼女の葛藤に気付くことなく手を伸ばし――


「っあ」


突如、腕を掴まれたかと思えば、するりと引き寄せられてしまう。

言うなれば、羽交い絞めに近い。

その、普段ではありえない乱暴で強引な動作に、ドキリと高鳴る心臓。


――リゾットさん……すごく温かい。


だが、頬をほんのり赤く染める名前に対して、できるだけ淡々と言葉を紡ぎ出すリゾット。



「どうした? こういうときは喉の下を親指で一突きするか、急所を狙うんだ……わかるな?」


「え? あ、えと……でもっ、リゾットさんに攻撃したくありません……!」


「(可愛い……ああ、すぐにベッドへ組み敷いて、抱いてしまいたい……じゃなかった)名前、それではダメだ。これは実践だと言っただろう。情を捨てろ……今だけでいい」


下はまだしも、首元は無防備な奴も多い。

十分狙うことが可能だ。


そう告げ、男が己を指差すも≪できるはずがない≫と、首を勢いよく横に振る少女。


苦しげな顔色。

彼女のそれにさすがのリゾットも思うところがあったのか、


「そうか」


小さく呟きながら、細い手首を掴んでいた手の握力をそっと緩めた。


すると、彼の手を振り払うことすらせず、申し訳なさそうに少女は視線を落とす。



「……ごめんなさい。せっかくリゾットさんに時間を割いてもらっているのに、私」


「いや、謝る必要はない。オレも突然すぎたからな……驚いただろう」


「す、少しだけ」



再びなでられる頭。

その穏やかな声色と手のひらに安心したのか、ふっと名前が顔を綻ばせた。


背後から感じる男の体温、吐息、鼓動が羞恥を呼び寄せるが、そろそろ解放されるはずだ。

そう判断した彼女は、このとき確かに油断していたのだ。




「だが、名前も覚えておくべきだ」


「? 何を、ですか……?」


「君は女でオレは男なんだ。必死に抵抗しなければ――」




ブチッ



「!?」


「こうなってしまうぞ。イイのか?」



後ろから前へ。

無骨な手が回されたかと思えば、引きちぎられたパジャマのボタン。


露わになった二つの膨らみを慌てて隠そうとしても、いつの間にか両手首はしっかりと捕らえられ、自由が利かない。


「っみ、見ちゃダメです……!」


「ふ……無理だな。こんな絶景を狼である男が見逃すはずがない。名前に魅了され、欲情し、すぐに身体を弄り始めることもあるだろう」


「! いや、ぁっ///」


ふるんと揺蕩う白い陶器のような胸。

それをいつもより荒々しく扱いながら、脈の通うほっそりとした首筋へ唇を押し当てる。


「ぁ、っやだ……リゾットさ、はぁ、はッ、やめてくださ……ひゃんっ」


「名前……最初に言ったはずだ。オレは今、≪男A≫だと」


「ふ、ぁっ!?」



ツーと舌を這わされてから耳たぶを食まれ、ビクリと跳ねる名前の肩。

小刻みに震える身体の腰から上は、もはや≪何も着ていない≫も同然だ。


「そして、あまりにも暴れる場合には動けないようにする」


「んっ、はぁっ、はぁ……え……?」



≪動けないように≫?

身を捩ることも忘れ、目を丸くする少女の背後でリゾットはおもむろに己の仕事着からあのななめベルトを掴んだ。

そして――



「きゃっ……り、リゾットさん、何を……っ」


後ろ手の状態で胸、腕、手首をまとめて縛り始める男。

ギチギチと締まる谷間と脇腹に、彼女は表情に焦燥を浮かべて振り返る、が。



「≪動くな≫」


「ッ……ぁ」


「……名前、それで動かなくなってどうする。本当に縛られてしまうぞ」



――だ、だって、リゾットさんが囁くから……!

そんな文句を心の中で叫んでいる間にも、身体を締め付けていく彼のベルト。


カチッと嫌な音を響かせた刹那、両手を離したリゾットは前へ回り込み――口端を吊り上げた。


「……イイ眺めだな」


「/////」



谷間をクロスに横切る黒。

己のベルトにきつく挟まれ、変形し、はち切れんばかりの乳房。

どれほど名前がそれを取ろうとしても、金具は肩甲骨の辺りにあり、外すことは不可能だ。


むしろ、よりバストが揺蕩い、淫靡なのは言うまでもない。


「〜〜っ……リゾットさん、あの、これ……っ」



取ってほしい――潤む紅い瞳が訴える懇願を視界に入れつつ、リゾットはあえてうんちくに似た話を口にした。



「ところで、少し形は違うものの、こういった縛り方はジャッポーネ式で≪真珠≫と呼ぶらしい」


「はぁっ、んッ……しん、じゅ……?」


「ああ、そうだ。由来はオレも知らないが……」


「ひぅっ」



突然、両方の指先で摘ままれる赤く腫れた乳首。



「この明かりに照らされた美しさは、確かに真珠かもしれないな」


「ぁ、っやめ、やめてくださ……あんっ」


後ろへ引き下がろうとしても、上体のバランスが取れないのか上手く動けない。

ますます羞恥に染まる顔を己の目に焼き付けながら、掻き立てられるのは潜む加虐心。



「名前……胸を歪に緊縛され……気分はどうだ?」


「……っ」


「答えられないのならば、おそらく男は≪下≫に聞くだろう」


「ぁっ、!?」



ドサリ


不意に肩を前から押され、ベッドへ座り込んでしまう名前。

すると、目を白黒させる彼女に覆い被さるように近付いたリゾットが、無防備な太腿からズボンを取り払った。


そのまま、ジワリと濡れたショーツにまで手を伸ばす彼に、今更だと自覚しつつも足を動かし、いやいやと懸命に首を横へ振る。


「い、いやっ、はずかし、です……ッ、ベルト取って、ぇっ」


「ここも縛られたいのか?」


「! ひぁっ」



しかし、こちらを突き刺したのは、鋭さを帯びた赤い瞳。

劣情を孕んだそれにピシリと固まっていると、空気を捉える愛液に塗れた秘部。


まるで男へ見せつけるように、左右に開かれた両足。

下着は憐れにも床へと捨てられてしまった。



「ぁ、っダメ……リゾットさ、んっ……、やぁあ!」


「乳首だけでなくここまで赤くしていたとは……ずいぶん淫乱な子だな」


トプリと膣口から溢れ出る体液。

それを人差し指で掬い、俯く彼女に示せば、一瞬で真っ赤になった顔が見て取れる。


そんな姿を視界に留めておきながら、花弁をヒクヒクとさせた無垢であり妖艶な少女の秘境を弄り始めた。


「ぁっ、ぁっ、やら、ッやらぁ! ソコ、グチュグチュしな、でぇ……!」


クチュリ

響く生々しい水音に、慌てて後退ろうとする、が。


「逃げるな」


「ぁああ!?」



片手で簡単に元へ戻されてしまう。


震える肢体。

自分を誘う艶めかしい姿。

拒否しつつもトロンとした顔。


ひそかに喉をゴクリと鳴らしたリゾットは、指先で器用に膣壁の弱点と陰核を突きながら、ズボンの中で張り詰める自身に苦笑した。



「ほら、ちゃんと≪拒絶≫を示すんだ……さもなければ、まるで玩具のように扱われるかもしれないぞ?」


「っは、はぁ……おも、ちゃ……?」


「そうだ。それとも……≪そうされたいから≫本気で抵抗しないのか?」


「! ちがっ、違います! そ、なこと、おもって……やぁっ!?」



勢いよく指二本を抜かれ、快感と物足りなさで漏れる喘ぎ声。

自然と目を閉じていた名前は、突如耳へ届いた布と皮膚が擦れ合う音にハッと息をのむ。


恐る恐る開かれる瞼。

そこには――


「ぁ、っ……///」


慕う男の裸体。

目の前の人は≪男A≫と何度唱えても、きゅんと疼いてしまう子宮。


そんな心境を知ってか知らずか、欲の色を滲ませた表情で細い少女の腰を掴み、抱き上げるリゾット。


「んっ……、?」


「名前はいやらしい子だからな……動けないことをいいことに、さまざまな方法で抱くだろう。たとえば――」


「え……ひぁ、っぁあああ……!」


ズブリ

潤う入口を亀頭に合わされたかと思えば、徐々に手の力を緩められる。


下を一瞥すると、肥大した彼の性器を飲み込んでいく自分のモノがありありと映り、嫌でも艶めかしい嬌声を上げてしまう。


「あん、っはぁ……や、っ熱い、やらっ、ぁ」


「ッく……こんなにもモノを締め付けて……男を悦ばせるだけだぞ」


「ぁ、やぁっ、はぁッ、は……ちが、っちがうのぉ……っや、ぁあッ」


横へ、上下へ揺さぶられる躯体。

ズグリと肉襞を荒らし回るように穿たれ、抉られ続ける子宮口。

ベルトの中で揺れに揺れる豊満な胸。

縛られていることで、彼に抱きつくことも、縋り付くこともできない。


まさに、玩具のようだ。


「ぁっ、ぁっ、ひあっ……はぁ、リゾットさ、リゾットさっ……いやぁっ!」


痺れる骨盤。

だが、心が満たされない。

いつものように名前を呼んでほしい。


くびれに手を当て、無心で自分を下から攻め立てるリゾットに、蕩けきった視線を向けると――


「名前」


「!」


響いたのは、穏やさと愛しさが込められた己の名。

重なる赤と紅。


自然と、瞳からナミダがこぼれ出す。



「〜〜リゾットさん……っ」


「……泣くな、名前」


肩口に顔を埋める少女。

不謹慎かもしれないが――自分と目を合わせた途端、安堵で泣きじゃくり始めた名前にひどくときめいた。


「ぐす、っ……リゾット、さん」


「ん?」


「外して、ほしい、です……これ」







「断る」


「え? きゃああっ!?」



刹那、再開された律動。

動揺を滲ませた彼女の唇をあっさりと奪いながら、容赦なく肉棒を打ち付けていく。


「んっ、ふ……ぁっ、ああっ」


「ッ名前……!」


ジュブリ

グチュ


交じり合い、シーツへと広がる二人の体液。

快楽で反応する膣壁。


「ぁっ、リゾットさ……ま、って……わた、しっ、はげしくされちゃ……ひぁああっ!」


「……く、ッ」


「――」


ひどく熱いモノが、注ぎ込まれていく。

それを確かに感じながら、名前は額を彼の肩に置いたまま――瞳を閉じた。











いまだ情事の余韻が残る中、ふと腰から手を離したリゾットは、くたりと凭れる少女からカチャリと金具を外す。

腕の拘束が解かれた刹那、その拳は(名前にとってはもっとも強い)パンチをもはや上下すらしていない男の胸板へ繰り出していた。


「?」


「〜〜っ」



ダメだ、全然効果がない。

顔色一つ変えることのない彼に、がっくりと肩を落としながら彼女は膝で立ち、距離を置こうとする。


すると、先程の行動を不思議に思ったのか、あくまで余裕の表情をした(ように見える)リゾットが覗き込んでくるではないか。



「名前、どうしたんだ? 身体に痕が残らないよう、緩めに縛ったつもりなんだが……痛かったか?」


「……」


「(なぜ黙り込んで……)できれば何か言ってくれると嬉しいんだが――」


「リゾットさんの、っバカ! 縛り方がどうこうの問題じゃありません! それに、途中から明らかに特訓じゃなかったじゃないですか……!」


「……、すまない」



しょんぼり。

ようやく現れた反省の色に、つんとしていた少女がため息をつく。


そして、項垂れる彼の元へ静かに近寄ったかと思えば――



ぎゅうっ


「! 名前?」


「……さっきまで全然動けなかったんです。だから、少しだけ……ぎゅってしててもいいですか?」



というより、もうしちゃってますね。

そう自嘲し、えへへとはにかみながら、行為中に抱きつけなかったことを後悔するかのように、がっしりとした首へと腕を回す。


すべての感覚が捉える名前の柔らかい肌、香り、吐息。

当然、糸より切れやすい男の理性が、反応しないはずもなく――



ドサッ


「っ!?」


「名前……先程のようなことは決して起こらない……いや、起こさせやしないが、≪もし≫そうなってしまったとき、オレはどうすると思う?」



押し倒され、ベッドと恋人に挟まれたまま、問われる。

もし、なんてめったに口にしない――珍しいと思考の片隅で考えつつ、彼女は恐る恐る唇を開く。


「え? えと……長いお説教、ですか?」


説教はできれば避けたい。

そんな意味を込めて見上げると、首をゆっくりと横へ振られてしまった。



どうやらそうではないらしい。



「違う……せっかくだ。予習をしておこう」


「よ、予習? いったいどういう……ひゃん!?」


「≪消毒≫の予習だ。名前、しっかりと身体に覚えさせてやるからな」


鼓膜を振動させる低く、甘い囁き声。

抵抗する暇もなく、あらゆる性感帯を念入りに愛撫され、ただただ翻弄されていく。


「どうだ? 触れられた感触は消えたか?」


「ん、っはぁ、はぁ……そん、なのわからな……ぁあ!」


「ふむ……ならまだ足りないということだな」


「ぁっ、あっ……いやっ、いっぱい、舐めちゃ……んッ、やらぁっ////」



それから当分の間、彼女が仕事着を視界に入れた途端、顔を紅潮させるという日々が続いたらしい。

そして、その初心で愛くるしい表情を見かけるたびに、リゾットが本能に従うまま少女へと襲いかかったのは――また別のお話。











真珠magic!
削られる理性、発生せざるを得ない羞恥。










大変長らくお待たせいたしました!
リーダーと連載ヒロインで緊縛裏でした!
タイトルは内容に因んで付けさせてもらいましたが……いや、ジャッポーネってすごいですね……(遠い目)。


てつ様、リクエスト本当にありがとうございました!
感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします。
polka



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