カイロの一角で


※marmaid様の長編「シャボン玉飛んだ」の世界に、「Uno croce nera...」のヒロインがいたら、という設定
※時代は3部です


ホル・ホースに連れられて、DIOの屋敷から出られたのはいい
戻った時どうなるか、その問題は後回しだ



「どうしよう…」



今、問題なのは彼とはぐれてしまったこと
この世界に来てから、DIOが屋敷から出してくれたことがない
だから、町の地形が全くと言っていいほど分からない



「せっかくホル・ホースさんが出してくれたのに……」



はぁ……
ため息をつくと、石鹸の香りが鼻孔を掠めた



「シャボン玉…?こんな時間に誰だろう?」



導かれるようにして、漂ってくるシャボン玉のその先に向かった
そこには金髪の女性がいて、その人の顔を見て驚いた



「(シーザー!?でも、彼は男性だし……子孫かな?)」



「やあ、シニョリーナ」



「あ、こ、こんばんわ」



「君は地元に住んでるの?
間違ってたらすまないが、日本人かな?」



「あ、はい!」



「やっぱり。一人?
この辺は治安が悪い。危ないよ」



「連れの人とはぐれちゃって……
それで、シャボン玉が見えて、誰が飛ばしてるのかなって思ってここに来ました」



見れば見るほどシーザーに似ている
立ったままでいると、彼女は自分の横を叩いた



「君の連れが見つかるまで、私とお話しないか?
無闇に探し歩いても、行き違いになることもある
なら、一ヶ所に止まって待っていた方がいい
まあ、連れの人が探していたらの話だけどね」



「えと、じゃあ失礼します」



「フフ、近くで見るとますます可愛らしいね」



「えっ」



「君のような子を、大和撫子と言うんだろうね
連れて帰りたいくらいだ」



まあ、そんなことをすれば旦那に怒られるけどね
おどけて笑う彼女。女性を口説くのは、遺伝なのだろうか?



「そう言えば、まだ名乗っていなかったね
私はシェリー・アントニオ・ツェペリ
差し支えなければ、君の名を教えてくれるかい?」



「名前と言います。シェリーさんはご結婚されてるんですね」



「あぁ。娘も孫もいるよ」



「へぇ、お孫さん……えッ!孫!?」



どう見ても孫がいる歳には見えない



「えっと、失礼ですがシェリーさんっておいくつなんですか…?」



「いくつに見える?」



「20歳……?」



シーザーに似てるので、彼の年齢を言ってみた
彼女はクスクスと楽しそうに笑った



「これでも70歳なんだ」



「えぇ!?」



「特別な呼吸法で若さが保たれているんだ」



「あ、あの!あなたの旦那さんの名前は……?」



「ジョセフ・ジョースター」



つまり、彼女は自分と似たような立場なんだ
シーザーに成り代わって、生きている
なら、スージーQはどうなったのだろう?
本来なら彼女がジョセフと結婚する筈だが……
しかし、聞くにも聞けないので心の中に留めておいた



「そうそう、そのシャボン玉には触れないようにね」



「割れちゃうから、ですか?」



「いや、魔法で割れはしないよ
でも、君が傷ついてしまうからね」



「どういう意味ですか?」



「それは、君自身が一番良く分かってる筈だよ」



「まさか…ッ!」



気づかれたのだ
吸血鬼だと、DIOの仲間であると……!



「フフ、そんな身構えなくても大丈夫。危害は加えないよ
君は私を攻撃しなかったからね」



「…捕まえないんですか?」



「しないよ、そんなこと
君も理由があってDIOと一緒にいるんだろう?」



「そう、です、……ッ



「?どうした!?」



始まってしまった衝動
慌てて顔を覗き込んでくる彼女、チラリと覗く首筋



「ダメ、ですッ!近づいちゃ…ダメ!逃げてください



「……苦しそうなシニョリーナを、一人残して行ける訳ないだろう
それに、誘ったのは私の方なんだ
最後まで、君の連れが来るまで付き合うよ」



手首からでもいいかな?
そう言って差し出された手
目を背けて、必死に衝動を抑えようとする


すると、血の匂いが広がった
シェリーを見ると、自ら手首を噛み切っていた
滴る赤い雫を見て、気づいたら吸い付いていた



「んッ……ふ、」



「本当は、吸いたくないんだろうけど、ごめんね
一般人の血を吸ったら、それこそ君が苦しむことになってしまうから」



優しく頭を撫でられ、我に返った
吸ってしまったことへの罪悪感と、潤された渇きへの嫌悪感が募る



「ごめん、なさい……」



「謝らないで。私が勝手にやったことだから」



「でもっ」



「気にしない気にしない!
それで、君が待ってるのはホル・ホースかな?」



「あ、はい」



「そうか。あいつ、私が一緒にいると出てこないだろうな
だから、ここでお別れだね名前」



「本当に何もしないんですか?」



「信用できない?」



苦笑する彼女に、慌てて否定する
捕まえたりしなくとも、DIOの屋敷を聞いたりすると思っていた
娘の、ホリィの命がかかっているから



「それで君が密告したとバレたら、君が危険になる
それだけは避けたいんだ」



「シェリーさんこそ、優しいじゃないですか」



「優しくなんかないよ。日が昇るまで、あまり時間がない」



「最後に一つ、聞いていいですか?」



立ち上がった彼女から、差し出された手に自分の手を重ねる
今この瞬間も、彼女は自分を殺せる



「どうして初めて会った時、私を殺さなかったんですか?」



「吸血鬼だろうと、女性には優しくが私のモットーだからね」



「えッ!?じゃあ、初めから気づいて……」



「あ、ホル・ホース見っけ。さあ、行きなさい
後ろは振り返らないで。私も行くから」



結局、ちゃんとした答えを聞くことは出来なかった
一つ分かることは、彼女なら花京院達を救えるということだ



「(また、会えるかな…?)」



その時は、こんなギクシャクした感じではなく
友達になって話したいな






(嬢ちゃん、大丈夫か!?何もされてないか!?)

(はい。楽しくお話してました)

(ほっ、なら良かったぜ
嬢ちゃんに何かあったらと思うと、気が気じゃあねぇ)

(ごめんなさい。せっかく連れ出してくれたのに)

(いーってことよ。んじゃ、帰るか)

(はい)

((また会えますように))














「どうして倒さなかった?」



「シーザー……」



名前から別れて数分、シーザーが出てきてそう言った
どうして倒さなかったって言われてもね



「彼女が敵でないと判断したからさ」



「彼女はDIOの居場所を知っていた!
それに、仇である吸血鬼だ



「シーザー、そんなこと言うなんて君らしくないよ
彼女は私に危害を加えなかった
攻撃するチャンスは、幾らでもあったんだよ?
それでも何もしてこなかったんだ」



「油断させる為だろう」



「人間と吸血鬼、腕力では負けるよ
波紋が使えたって、相手もスタンドが使えたら意味ないからね
それに、彼女から殺気が感じられなかった」



仮に敵だとしても、殺すなら血を吸ってる時点で殺せたし
やっぱり、シーザーは焦ってるんだ
カーズの時と同じ。気持ちは分からないでもないけどね



「見逃さず、連れて来れば良かったんだ!」



「ほんと、君らしくないよシーザー
そんなことをすれば彼女だけでなく、私達の身も危険に晒される
DIOが吸血鬼にまでして手元に置いている子だよ?」



「だがッ!」



「それに、女性に優しくするのは礼儀でしょ?
名前可愛かったし、好きでいる訳じゃなさそうだった
はい、深呼吸して。落ち着いてね、シーザー」



シーザーは何度か深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてるみたいだ
あの子、ちゃんとホル・ホースと合流出来たのかな
DIOに何かされなきゃいいけど



「確かに、俺は焦っていたな。同じ過ちを犯すところだった」



「私が止めるから大丈夫
あ、あの子のことは内密にね
花京院やポルナレフが彼女のことを覚えてるか分からないし」



「あぁ、分かった」



また会えるかなぁ
今度はこんなごたごたしてる時じゃなくて、全てが終わった時に会いたい
そうしたら、デートに誘おう!
イタリアに行って、ジェラート片手にお喋りしたいな











あとがき

黄昏concerto、polka様との相互記念小説でした!

もう吸血鬼ヒロインちゃん可愛すぎてヤバイです
大和撫子とはまさしく彼女のことですね!
リーダーがデレデレになるのも分かります(笑)

polka様、この度は相互ありがとうございます




〜管理人より〜

相互記念小説として、素敵なお話をいただきました!
神無様、本当にありがとうございます!
優しい&かっこいいシェリーさんに連載ヒロインだけでなく、私もドキドキしてしまいました(笑)。

こちらこそ、いまだに相互記念小説の完成をお知らせできる段階にないという、ふつつかな管理人ですがよろしくお願いいたします!
ありがとうございました!
polka



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