年下彼氏に首ったけ


※ギアッチョ夢
※裏




ギアッチョは、いつも不満だった。



「オイ、これ資料」


「あ、忘れてた……ありがと、ギアッチョ」



チュッ



「!? おッ、オイ!」


「んー? ふふ、また赤くなってる……可愛いなあ」


「ッ(イライラ)」



左頬に残る柔らかな感触。

チームメイトである名前の見えぬところでそれを照れ臭さ交じりにそそくさと拭えば、ヒューヒューと自分をからかう仲間。


そんな彼らを容赦なく己のスタンドで凍らせてから、チッとおもむろに舌打ちする。



「(なンで、いつもいつもああやってよオオオオ……!)」



ギアッチョは不満だった。

数歳年上の恋人――名前の自分に対する扱いを。


童顔でよく成人以下に間違えられるが、仕事は完璧。

欠点など何もないように見えて、案外おっちょこちょい。

誰にでも笑顔だが、何かが起こったとき迷惑をかけぬよう人知れず涙を流す。


そんな彼女に、いつからか――この暗殺チームに入った頃から自然と惹かれていた。



「ッ、オイ名前!」


「あれ、ギアッチョ? どうしたの? あ、スタンドのコントロールならリーダーにでも頼んだ方が――」


「俺と……っ付き合え!」


「え?」



彼にしては珍しく、無鉄砲な告白。

目を丸くした名前に対し、男は急かすように声を荒げる。



「は、早く答えろ! ≪Yes≫か≪Si≫でよオオオ……!」


「(それ両方≪はい≫って意味だよね……)ふふ、もちろん≪Si≫だよ。ギアッチョのこと、ずっと前から好きだもん」


「……、なッ」



と、互いの気持ちを確かめ合い、めでたく付き合い始めた二人だった、が。




「ねえ、ギアッチョ」


「? ンだよ、テメーにしては真面目な顔して――」



刹那、視界を埋め尽くす、睫毛を震わせた恋人のドアップ。

何気ない日常に飛び込んだ、初めてのキス。


しばらくして、ピシリと固まったギアッチョから顔を離した名前は≪作戦成功≫と言いたげに口端を吊り上げる。



「へへ……≪奪っちゃった≫」


「テメッ、〜〜っ!」


昔CMで使われたセリフ。

それを呟いたかと思えば、自分の頭を優しくなでてどこかへ行ってしまう。



男は、いつも彼女に翻弄されっぱなしだった。

すべて、彼よりは経験のある名前のペース。

手をつなぐことも、キスだってそう。


その様子に、チーム一の色男はぽつりと呟く。



「ハン、それじゃあ恋人というより、まるで≪ペット≫だな」


と。

一方、皮肉を込めて放たれた言葉に、≪ご主人≫はあっけらかんな表情でこう返した。


「ふふっ、確かにギアッチョはワンコみたいだよ? 時々ね、しっぽが見えるの……そこも可愛くて好き」


「!?」


「へえ……そりゃあご愁傷様。(あの顔、キレてやがるな)」


こちらへ向けられた、憐れむような視線。


グシャリ。怒りと羞恥で潰れるコーヒーの入った紙コップ。


完全に≪男≫として見られていない。



「あの、アマァァア……!」


短気な自分にしては、堪えに堪えた方だ。

いつかこっちが彼女を翻弄してやる――小さく歯ぎしりをしながら、ギアッチョは願望とも言える闘志を心に燃やしていた。










そして、その好機が今、訪れようとしている。



ピンポーン


「……あ?」



任務の関係もあり、久々にアジトではなく仮住まいで就寝準備をしていた男。

彼の耳に、ふとチャイムが届いた。


当然、≪こんな時間になんだ≫と頬を引きつらせ、即座に居留守を決め込もうとする。


しかし――




ピンポンピンポンピンポンピンポry


「だあアアアアッ! うっせえ! なんなんだよ!」



こちとら数日ほど恋人に会えず、正直苛立っているのだ。

ズンズンと廊下を踏み鳴らして玄関に辿り着いたギアッチョは、怒り任せに勢いよく扉を開いた。



「オイ! 家賃ならまた今度……って」


「ふふ、残念ながら大家さんではありません」


「名前!?」



そこには、いつも通りの笑みで自分を見上げる名前が。

なぜここに――その言葉は所々が≪赤≫に濡れた服を目にして、音もなく消えてしまった。


一方、息をのんだ彼に対して、申し訳なさそうに彼女は眉尻を下げる。



「ごめんね? 突然押しかけちゃって……でも、ギアッチョの家の方が私の家より近かったから……泊めてもらってもいい?」


「……、チッ。勝手にしろ」



足が覚束ないわけでもないので、赤の正体はおそらくターゲットのモノだろう。

内心でホッと安堵を滲ませた男の後ろを、名前が静かについていく。


仮住まいに足を踏み入れるのは、初めてだった。

――あまり帰らないからだろうけど、片付いてるなあ……。



「飯」


「え?」


「食ったのかよ」



ぶっきらぼうな物言い。

その中に心配が潜んでいることを長年の付き合いで悟った彼女は、小さく頷く。


「うん。今日は任務にそれも含まれてたの。シャワーもその一環で浴びさせてもらったよ」


「……」



じゃあ何をすればいいのだ――そんな雰囲気がこちらにまで伝わり、気まずい空気が二人を包んだ。

それを打破するために、おもむろに背伸びをした名前。


そして、前に立つギアッチョの顔を覗き込んでから、色づいた唇を静かに開いた。



「ね、ギアッチョ」


「なんだよ」





「一緒に寝よ?」


「!?」



大きく目を見開いた恋人が叫ぶより先に、汚れた服を脱ぎ始める。

制止や拒否などは、聞かない。


あっという間に下着姿へと早変わりした彼女は、一目散にほどほどに柔らかいベッドへ飛び込んだ。


ボフン

その音にハッと我に返った男。



「てッ、テメー、何勝手に人のベッドで……! 服着ろ! つーか、リゾットに報告はいいのかよ!?」


「ふふ、大丈夫大丈夫。報告は明日戻ってからすればいいから」


「そういう問題じゃねえエエエエエ!」



とにかく退くか、服を着てほしい。

しかし、そのどちらもが嫌だと言うかのようににこりと笑ってみせた名前は、近付いた彼の隙をついて強引にベッドへ引き込む。


もちろん、再びあいまみえた彼女の白く滑らかな肌に、一瞬にして顔を真っ赤にしたギアッチョは、慌てた様子で視線をそらした。



「名前! いい加減にしや――」


「それにしても。ギアッチョは、本当にリーダーが大好きなんだねえ」


「……はア?」


「あ、もちろん尊敬って意味だよ? ただ他のことより優先的だなって思っただけ」



恥ずかしさも忘れ、そちらを振り向けば、あくまで真剣な表情で考えを紡ぐ名前。


だがそれが、それこそが我慢の限界に達していた彼を刺激することになる。



「〜〜ザケんじゃあねえぞ……!」


「? ……わっ」



感情に従うまま――細い肢体を、滅多に使うことのないシーツへ縫い付けた。


無防備な格好。

無頓着な発言。

こちらの気も知らないで――



「ぎ、ギアッチョ……?」


「テメー、俺をなんだと思ってやがんだ! あアアア!?」


「え? そんなの――」


「俺はッ! お前の恋人だろうが……!」


「!」



――優先的ってなんだよ、優先的ってよオオオ! んなの。

テメーを最優先にしてるって察しろよ!


「ん、っ……ふ、ぁっ……んん!」



次の瞬間、両手首を掴む指に力を込めつつ、自然と半開きになっている名前の唇を塞ぐ。


「ッ……ぎあ、ちょ……ぁ、ン……ふ」



そして、濡れた温かい口内を歯の裏、舌根、頬の内側と不器用ながらもねっとりと舌先でなぞり、貪り尽くした。

クチュリ、と部屋に響く卑猥な水音。


一分――いや、三十秒も経っていないのかもしれない。

口腔を止める間もなく荒らされる中で、長い時をひしひしと感じていた彼女は、ようやく白んだ世界から解放され、いつの間にか閉じていた瞼をそろりと上げる。

すると、視界の端に見えた二人を繋ぐ銀色の糸や、眼鏡越しにこちらを刺す≪男≫の視線に、言わずもがなドキリとしてしまう。



「名前」


「はぁ、はぁっ……ギア、ッチョ?」


「……、抱かせろよ」



二つの乱れた吐息。

それに乗せるように紡ぎ出された言葉。


トクン

トクン


鼓動はひどく慌ただしかった。


「っ……う、ん」



ゆっくりと首を縦に振る。

痛みをもたらさないよう優しく握られた腕も、両足にしっかりと挟まれ身動きの取れない身体も、彼の真摯な眼差しの中に気付いた情欲も――それらすべてに名前は囚われていた。









「……なあ」


「ぁっ、ん……? どうか、した?」



彼女がコクリと頷いた途端、慣れない手つきで上下の下着を剥ぎ取り、乳房への愛撫を始めたギアッチョ。

しかし、何か思うところがあったのか、赤く色づいた先端に吸い付きながら、ゆっくりと言葉を放つ。


一方、その吐息すら性感帯を掠め、びくりと肩を震わせた名前は小首をかしげた。



「いや……なんつーか」


「は、ぁっ……ほんとに、どうしたの? ギアッチョらしくな……っや、ぁ」


「うっせ。……名前って、こういう経験あるん、だよな?」



服の上からも際立っていた豊満な膨らみを直接手で弄り、もう片方にはそっと歯を立て刺激を与えつつ疑問を口にする。

その問いに、少し間を置いた彼女はしばらくして荒い息を吐き出した。



「そ、だよ? ……んっ、仕方なくだけど任務でもしたこと、あるし」


「……」


「? ギアッチョ? 何か……ひゃ、あんっ」



刹那、指先で弾かれた乳首から甘い痺れが電流のように駆け巡り、思わず躯体を浮かせてしまう名前。

自然と揺蕩う腰。


それを内腿で捉えながら、モヤモヤと白い膜が覆う感情に導かれるように彼が一言呟く。



「……超、イラつくぜエエエ……」


「え? ね、え……ギア、っチョ。もしかして、ぁっ、あん! ……もう、っ喋ってる、のに、ぃ」


「チッ、文句言うなら黙っとけよ……こっちグチョグチョにしやがって」


「やっ、ぁ、ダメ……ダメなの! 下は、っぁ、ッひぁあ……!」



飴玉のように硬くなった胸の飾りを転がす一方で、快感でひどく火照った肌に右手を這わせる男。

そして、確かめるために自ずと擦り合わせていた彼女の腿の間へ手を忍ばせた。


もちろん、一つ一つの動作にピクリピクリと反応してしまう。

そんな名前の溢れ出した蜜を指先で捉えたギアッチョは、そっと腫れ上がっているであろう陰核を剥き出しにし、攻め立て始めた。



「!? やら、っぎあ、ちょ……はっ、ぁ……クリいじめちゃ、やぁあ!」


「ますます濡らしておいて何言ってんだよ。シーツグショグショじゃねえか」


「ぁっぁっ、ごめっ、ね? わた、し……わたし、ぃっ」



テラテラと濡れた秘部に釘付けになっていた視線をちらりと顔を移せば、謝罪の奥には≪懇願≫が滲んでいる。


小さな優越感と広がる征服欲。

もっと、あられもない姿が見たい。



「オイ、どこがイイのか……名前が指定しろ」


「ぇ、? ぁっ……え、と……っ、は、ぁん……クリもナカも、りょうほ……っイジって、ぇ!」


「ハッ……言えんじゃねえか。望み通りにしてやるよ」


「ひぁ、っぁあああん」



どこまでも貪欲に収縮する膣内を中指と人差し指の腹で擦りながら、熟れた肉芽を親指で弄った。

その瞬間、生理的な涙を零し、口端からは唾液が溢れ出していることも憚らず、さらに高い嬌声を上げる名前。



「ぁっ、ぁっあっ、ダメ、なの……っソコ擦っちゃ、ぁッ」


「……イけよ」


「ふ、っぅ……らめ、っぎあっちょ……も、らめぇ、っぁああ――」



ビクン

一層肢体を震わせ、肉襞は彼の指を鋭く締め付ける。


彼女の淫らな姿に身体の芯が痺れたのだろう。

名前を官能から解放した男は、熱情に誘われるがまま服を脱ぎ、恋人に覆い被さったことで改めてベッドの脚を軋ませた。


完全に翻弄させるつもりが――なかなか上手くはいかないらしい。



「クソッ……もう、いいよな?」


「んっ、はぁ、はぁっ、うん……ギアッチョ、来て、っ?」


「ッ、ンなこと言って……知らねえぞ……!」


「ぁっ、ぁ、やっ、ぁあああ……ッ」



細い腰を離さないというかのように両手で掴み、反り勃った性器を根元まで彼女のナカにめり込ませていく。

すると、自分のモノ全体を包む膣壁。


その心地よさに、≪せめて優しくしたい≫という余裕も忘れ、テンポを刻むように骨盤を鋭く打ち付け始めた。



「ひぁっ、ぁっ、あっ……はぁ、っは、ぎあ、ちょ……っぎあ、ちょぉ!」


「は、ッ……名前」


「あん、ッ、んんっ、ふ……っぅ」



キスを交わしながら、休む間もなく与えられる快感。

割れ目からは止めどなく体液が溢れ、生々しい音がベッド上に響く。


「んっ、ふ……ぁ、ぁあんっ」



朦朧とする意識。

目の前には、快楽による苦悶と行為への喜びが織り交じった表情を浮かべた、大好きな恋人。


ドクリ、と己の膣内で質量が肥大した一物に促され、≪絶頂≫を悟った喘ぎ声がより高くなった。



「ぁっ、はぁ……ぁっ、ん、ぎあっちょ……っわたし、またイっちゃ……!」


「名前……ッ俺も」


「ひゃっ、ぁん、っ来ちゃ……や、ぁっぁっ、ぁ……ぁあああッ!」


「くッ……!」



焚き付けるように、彼の白濁液が膣道を通して爆ぜていく。

足先から旋毛へと襲い来る電撃。

だが、快楽の奥底に確かにある幸福感。



「……はぁ、っは、はぁっ……ん」


――すごく、幸せ。

それが少しでも彼に伝わるように、名前はいつの間にか首に回していた腕に力を込め、頼りがいのある肩口へそっと顔を埋めた。










年下彼氏に首ったけ
想いのベクトルを確かめれば、さらに深まる。





〜おまけ〜



「ふふ」


「何笑ってんだよ」



ついに、名前と身体を重ねたのだ。

嬉しさと照れ臭さで、いまだ激しく波打つ心臓をなんとか抑えながら、隣から聞こえた笑声の理由を尋ねる。



「んー? ギアッチョがかっこよくて、ますます好きになっちゃったなって」


「バッ……! 〜〜、テメーはどうしてそうッ」


「あれ? もしかして照れちゃった? ……もう、可愛いなあ」



チュッ


刹那、頬を掠めた柔らかさ。

バッと顔をそちらへ向ければ、自分に小さく微笑みかける恋人が。



「だから……これからも、もっともっとギアッチョに夢中にさせてね?」


「! ……ケッ、上等だ」



ペースは相変わらず彼女のモノ。

だが、名前は自分のモノなのだ――と柄にもなく所有欲をちらつかせた心に対し、ギアッチョはそれが悟られぬよう密かに口元を緩めるのだった。











大変長らくお待たせいたしました!
ギアッチョで、裏夢でした。
勝手に年上ヒロインとさせていただきましたが……いかがでしたでしょうか?


桜様、リクエストありがとうございました!
感想&手直しのご希望がございましたら、お願いいたします。
polka



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