ベルベットの紅い箝


※DIO夢
※裏
※承太郎姉ヒロイン
※無理矢理ですが、愛なしではありません





とある薄暗い館。

キングサイズのベッドに寝そべりつつ、館主であるDIOはカメラをトンと叩いた。


すると、そこに映るのはいまだ十代後半と思われる日本人と、年老いた欧米人。



そして――


「テレンス」


「なんでしょう、DIO様」


「承太郎とジョセフ・ジョースターの間に居る、この貧弱そうな女は何者だ」



ふわりとたなびく黒髪と、太陽で煌めいた鳶色の瞳。

承太郎より純日本人といえる少女。

ある種の平和ボケを感じさせる笑みを見下ろしながら、男は淡々と問う。


その鋭いまなざしに生まれたのは、単なる探究心か。



「ああ、その者は空条名前……承太郎の姉に当たります。どうやら彼女は父方の血を濃く受け継いでいるようなので、スタンドも発生していないとか」


「……ほう」



それとも、一つの≪興味≫か。



「DIO様?」


「テレンスよ……この私が今一番≪得たいモノ≫――わかっているな?」


「……ええ、もちろんです」



ただちに、チケットなどを用意させましょう。

エジプト行のモノを。


頬を伝う冷や汗。


それをなんとか無視して、テレンスはほくそ笑む主の部屋を出て行った。












名前は、ひどく困惑していた。

それもそのはず。


今日も今日とて、大学を急いで抜け出し、数日前から危篤状態の母を介抱しようと歩き慣れた道を走っていたのだ。


「……空条名前だな」


「え? はい、そうですけど――きゃあ!?」



しかし、ようやく自宅の前に到着したかと思えば、彼女は止まっていた黒塗りの車に無理矢理押し込まれてしまったのである。

目元は布で覆われ、聴覚でしか感じることのできない世界。

自分はいったいどうなるのか。

死ぬのか。


――己の生死の行方すら奪われた感覚の中では読めず、怯えゆえの涙も出てこない。



それから、どれほどの時間が経ったのだろうか。


「こ……ここ、どこ……?」



現実逃避の意味も込めて、眠っていた名前の目覚めを待っていたのは、唯一の明かりが天井で揺蕩う西洋式の部屋。

遮断された太陽の光。

まるで先程まで人がいたかのように、机に置いてあるワイングラス。


一人分とは思えない大きなベッドから立ち上がり、動揺に震える喉で身内の名前を呼んでみる。


「じょーたろー……おじいちゃーん……って、いるわけないよね」



母が病に倒れたと同時に≪敵≫を倒すため、家を出た二人。

そんな彼らがここにいるはずがない。


――ああ、もういっそ誰かが札を持って≪ドッキリ大成功≫と言いながら現れてくれたら……!

妙な期待を抱き、音が立てられることのない荘厳な扉を彼女が不安を潜ませた目で見つめていれば――



「……ドアが開かれることはない。すでに私は、≪ここにいる≫のだからな」


「え?」



突如背後から聞こえた低い声。

次に押し寄せる、心臓を直接手で掴まれたかのような驚愕。


脳内を支配した警笛に促されるまま、勢いよく振り返ると、金の髪を輝かせた男が立っていた。



「!」


「ふ……どうした? 空条名前」


「(どうして私の名前を……ううん、それより)貴方、どこかで……、ッ!」


≪どこか≫。

それは、つい最近――自宅でのこと。


≪隠者の紫≫というスタンド(?)とやらで見えた後ろ姿。

自分と同じ星のアザ。

祖父の祖父であるジョナサン・ジョースターと因縁があったと、耳にタコができるほど聞かされた男。

到底信じがたいが、夜を生きる≪吸血鬼≫たる存在。



彼の名は――






ディオ・ブランドー。




改め、


「……DIO」


「ククッ……大切な孫にまで教えるとは、ジョセフ・ジョースターも外見に反しかなり用心深いらしい」


「っ、……」


弟と祖父が友人と共に旅をすることになった、すべての根源。



まさか自分が、彼らの目的である男と最初に対面することになるとは。

わけがわからぬまま戦々恐々とする彼女に対し、DIOはただ笑みを湛えるばかり。


その、深い暗闇を帯びた眼光に射竦められ、身体は一瞬たりとも動くことができない。



静かに、ただふらふらと視線を彷徨わせていると、不意に届いたのは冷笑。



「さっきの質問に答えよう。ここはエジプトにある館……ちなみに、貴様を連れてきたのは私の部下だ」


「……いったい、何のために……っ」


「≪わからぬ≫」


「へ……?」


「強いて言うならば名前、貴様への興味か」



これでもかと言うほど揺れる瞳。

≪ますます理解ができない≫と示す少女のそれに、彼はくつくつと喉を鳴らす。

そして、いまだに立ち尽くす≪人間≫へと、日に当たることが一切ない白い手をおもむろに差し出した。


当然、何事だと肩を震わせる名前。

吊り上がる口端。



「ふ、たとえ力は微弱と言えども貴様はJOJOの子孫だ……長い時を生きてきた私にも情はある……選ばせてやろう」


「えら、ぶ?」



生か死か。

おそらくそのどちらかだろう。


恐怖でドクドクと跳ねる鼓動を抑え付けながら、彼女が次の言葉をただただ待っていると。



「名前よ、今すぐこのDIOのエサとなるか――」









「私の女となるか」


「!?」


「好きな方を選ぶといい」



女――その意図が理解できないほど、名前も幼くはない。


≪なぜ≫。

頭を占める疑問視。

だが、目の前で面白そうに瞳をぎらつかせる男が、自分の問いに答えてくれることはないだろう。



「――」


逃げなくては。

いや、≪逃げたい≫のだ。



呪縛から放たれたように、すぐさまドアへ向かう二本の足。

赤い高貴な絨毯の広がる床を踏みしめ、迫る≪死≫を感じながら彼女は必死に駆け出した、が。



「――ザ・ワールド!」


「え……?」



刹那、背中を包む弾力。

視界にはどこまでも高い天井と、妖艶な笑みを浮かべたDIO。



「っ? え? 何が……!」


慌てて周りを見渡せば、隅にあったはずのベッドに自分は背を預けている。



やはり、この女にはスタンド能力が発生していない――彼女の両手首を掴んでいる己のスタンドを一瞥して、彼は口を開いた。


「選んだのは≪逃亡≫か……勘は鋭いようだが、利口ではないな」


「んっ……!?」



ズキュウウウンッ


次の瞬間、認めたくはないが端正と呼べる顔が近付いたかと思えば――きつく塞がれた唇。


息を吸おうと試みると、差し込まれた長い舌に口内を貪られてしまう。

時折捉える、彼の鋭い八重歯。

脳髄が揺さぶられ、霞んでは引き戻される意識。



「ふ、ぅ……や、んん、っはぁ」



まるで誰かに押さえつけられたかのように、動かすことのできない腕。


――……どうして、こんなことに……っいや……!


自覚した≪嫌悪≫に従うまま、それをなんとか振り切り――



パンッ


突如部屋に響き渡る、乾いた音。



「……」


「はぁ、はっ……、ぁ……」


ようやく解放されたことで口から漏れ出す色めいた吐息。

ジンジンと痛む己の右手。


そこで悟る。

私は叩いてしまったのだ――自分の上で笑みを消したこの男を。


今度こそ≪殺される≫。


別の意味で刻み始める心臓に、もう歯止めをかける気力もなく、ただただ恐怖で下唇を噛む。


しかし。


「≪気に入った≫」


「!? や、っ……いやぁ!」



名前の行動はむしろ、DIOの好奇心に火を付けてしまっていた。


「やだ……ッは、離して……!」


「ザ・ワールド、≪決して離すな≫」


「っ、? ぁ、いやぁああッ」



原型を留めないほど細やかに破かれる衣服。

ポロポロとその鳶色から涙をこぼす彼女を凝視しながら、容赦なく剥ぎ取っていく。


そして、露わになった陶器のような肌に、男は両手とその血の気のない唇を寄せ――



「ひぁっ!?」


荒々しく、乳房を弄び始めた。



「ぁっ、いや……はぁ、はっ、やめてくださ……あッ」


「ククッ……嫌がっておきながら乳首を尖らせている姿もまた興味深い……噛まれるのが好きか?」


「やぁあ……っ!」



赤く色づいているであろうそれを舌で転がせば、ベッドの上で跳ねる肢体。

ふと、抵抗ゆえか快感ゆえか身を捩る少女から顔を上げたDIOは、真顔のスタンド――ザ・ワールドへアイコンタクトを取る。


すると――



「はっ、はぁ……え? ぁっ、あっ……なん、れぇ……!?」


男の手は今、確かに中途半端に剥き出された下半身へ向かおうとしている。

だが、感じるのだ。



――相変わらず胸をこんこんと弄っている、大きな手のひらの触感が。


「名前よ……今、貴様はこのDIOと私のスタンド――≪世界≫に蹂躙されている。もっとも、見えていない貴様には≪感覚≫のみが共有されているだろうがな」


「はぁっ、ぁっ、あん……ざ、わーるど? ぁッ……やら、強くしちゃ……いやぁ!」



彼女の声に応えるかのように、激しく揉みしだかれ、より快感をもたらされてしまう。

一方、羞恥に塗れた名前の表情を視界の隅に置き、内腿を強引に両手で開くDIO。


その紅潮した秘境には、生娘とは到底思えないほど愛液に濡れた花弁がヒクヒクと自分を誘っている。

言い知れぬ興奮。


彼は、己の中にあるそれを自覚し、ニヒルに笑った。



「ふ……」


「? っ、やあ……はぁ、んっ……」



クチュリと指に吸い付く狭い膣口が生々しい音を立てる。

人差し指と中指を、恥骨側の壁を刺激するように曲げれば、さらに震える身体。



「やっ、ぁっ、ぁっ……ダメ、ぇっ!」


情欲に絆され、熱に浮かされた顔。



「ん、っはぁ、はッ、はぁ……そこ、いやぁ……!」


口端から伝う淫靡な唾液。

より蕩けた秘部。



「っ……ぁ、?」


≪絶頂≫を迎えそうな膣壁からおもむろに指を抜き取った男は、鮮やかなズボンを脱ぎ去り――




「ひ……っやだ、おねが……っそ、なの入らな……きゃあああ!」


「ッく、……愛撫は続けろ」


「ぁっ、いた、ぃ……ぐす、ぬいて、ぇっ」



濡れそぼったソコへ、膨張した性器を挿入した。

すべてを包まんとする肉襞に、珍しく眉をひそめながら、律動を開始するDIO。


正直昔から、女の泣き顔はあまり好みではなかった。


しかしこの少女――名前のはどうだ。

痛みから快感へ移行したのか、トロンとした視線。

悲鳴ではなく、甘さの帯びた嬌声。

幼顔からは見当もつかないほど、目の前にあるのは≪女≫特有の艶めかしさ。





ますます興味が湧く。



「う、っ……ぐす、じょ、たろ……、ッぁあ!?」


「ほう、このDIOを前にして他のことを考えるとは……ずいぶん余裕ではないか、名前よ」


「っやぁ……ぁっ、ぁっ……揺さぶっちゃ、ぁああ……!」



≪承太郎≫も、≪ジョセフ・ジョースター≫も驚くに違いない。

姉が、孫娘が、敵である自分にこうして快楽を教え込まれているのだから。


時間はたっぷりある。

じっくりと、この名前を我がモノにしてやろう。


思い浮かべたのは男たちの≪絶望≫と、少女の≪情愛≫。


本当に自分が目にしたいのは――どちらか。


それも、いずれわかる日が来るだろう。



「ッ、そろそろか……」


「! いや、ぁ……ッはぁ、やらっ、ナカはッ、ナカはダメぇっ!!」


「クク……私に傾倒しろ、名前」


「ぁ、っぁああああ……!」



白い首筋に散らばる紅い華。

嵌められたのは、決して外すことのできない箝(くびかせ)。



――あがくことも、もがくことも許されない……ただ重力に逆らえず、この人に堕ちていくだけ、なの……?


そう悟った瞬間、彼女は男がもたらす快感とはまた違う――別のモノに囚われた気がした。











ベルベットの紅い箝
解放――それは、彼の死を意味する。









大変長らくお待たせいたしました!
DIOで誘拐され、無理矢理からの裏でした。
勝手に血縁関係を形成させてしまいましたが、よろしかったでしょうか……!


感想&手直しのご希望がございましたら、お教えいただけると幸いです^^
一美様、リクエストありがとうございました!
polka



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