upset×upset


※暗チ夢
※give&get『Boys⇔Girls』の宴会から朝までの話
※相変わらず性別は逆転しております




〜あらすじ〜


目覚めれば、性転換してしまっていた名前とその仲間≪暗殺チーム≫。

(一応)紅一点だったはずの自分より魅力的な男(女)たちに何かしらのプライドを失わされながらも、なんとか彼女(彼)は自身を保つ。


そして、何が起こったのだろう――と逡巡する彼ら。

この状況に楽しんでいるのは、一部のみで他は将来性を考え、途方に暮れてしまう。


すると、そこでチーム1朗らかなホルマジオが発した一言により、全員で昼にも関わらず宴会を開くことに。


性別が入れ替わった真意とは!?

酒代が膨らんだ末に見たものは!?

水面下で交差するいくつもの想いの行方は!?



果たして彼らの運命は、いかに……!?












「やっと終わった……お待たせ。おつまみできたよ……って」



キッチンで一人。

料理を作り上げた名前は、リビングへと足を踏み入れる。


ちなみに、いつも重いと感じていたモノを今は簡単に持ち上げられ、≪しばらく男でもいいかも≫と一瞬でも思った自分を彼女(彼)が叱咤したのは言うまでもない。



「……あんたら、できあがんの早過ぎ」



ドアを押した途端、≪暗殺≫を生業にしているとは思えないほど陽気な男(女)たちが、視界を覆い尽くした。

まあ、普段ハメを外したときのように、服を脱いでいないだけマシなのだろう。



なんと言っても、今の≪彼ら≫は女性なのだから。


「んー? あ、名前〜〜〜」


「イルーゾォ……ほんとあんたって酒弱いね」


「なんらよー、名前が強いらけらろぉぉおっ?」


「あー、わかったわかった。わかったから、絡まないでよ」



しかし、中身はよく知っている仲間そのままなのだ。

ちびちびと酒を飲みながら、泣き言を呟くイルーゾォの頭を撫でてから周りを見渡す。


「名前名前名前ーッ!」


「何、メローネ」



突如、後ろから飛びついてきた男(女)を瞬時の判断で避けつつ、彼女(彼)は振り返った。

もちろん、そのあしらいようにも変態と呼ばれるメローネは、ハアハアと息を切らす。

正直見た目がブロンドの美少女なだけに、かなりタチが悪い。


――今の私たちでボスを取り囲んだら、すぐに始末できるかも……ま、肝心のボスの居場所がわかんないんだけど。



「ああ、ベネ……っ! 名前、なんだかすっごく男前だし……オレそういう趣味はないけど、名前(男)になら抱かれてもいいぜ……ハアハア!」


「黙らっしゃい」


「ぁああ……!」



妙にイヤラシイ声を出す痴女の隣を横切り、ソファにあるテーブルへと皿を置く。

すると、再び背後に感じた人の気配。


どうせメローネだろう。


「チッ……ねえ、メローネ。いい加減に付き纏うのは――」


刹那、後頭部が捉えた柔らかさと、腹部に回ったがっしりした両腕。


「!?」



さらに、耳を掠めた色っぽい吐息に慌てて振り返れば――



「ちょ、リーダー!?」


「なんだ? 名前……」


「い、いや……何してんの? 言っとくけど、私は抱き枕じゃないんだよ?」



おそらく、いや完全に酔っ払っているリゾットが。


そんな彼に身を捩りながら訴えると、きょとんとした反応が返ってくる。



「抱き枕などと思っていない。ただ……名前を抱きしめたいから抱きしめているだけだ」


「だ……っ!? と、とととにかく! 離してよ……!(じゃないとこの雰囲気と胸の感触に負けそう!)」


「離さない。今日は、朝まで名前を抱き――」


「い い か ら 離 せ!!!」


「グッ!?」



次の瞬間、ソファへ倒れ込んだ男(女)を見下ろして、おもむろにため息を吐き出した。


「もう……勘弁してよ……」


普段はここまで酔うような人ではない。

よっぽど疲れているのか。


今度、どこかリラックスできる場所にでも連れて行こう、絶対に――そんな計画を考えつつ、自分も飲もうと酒瓶を握る。


「お、名前も飲むのか?」


「当然。……って何、年下いじめてんの」



ふと聞こえたアルト。

そちらの方向へ視線を送れば、色気を垂れ流し優雅にくつろぐプロシュートと、ふくよかな胸元を晒しつつ今も酒を煽っているホルマジオ。


さらには――赤い顔で酔い潰れた大柄な女の子、ペッシと細身で天然パーマの少女、ギアッチョの二人。

二人ともいつもはあまり飲まないはずなのだが、この酒豪共に付き合わされたに違いない。



「ハハッ、いじめてなんかねェよ……それともなんだ? 名前が介抱でもしてやんのか?」


「いや、しないけど。どうせ数時間経てば起きるんだから……風邪引いちゃうわけでもないし。私はお酒を飲むの」


「ハン、お前酒強えからな。もうちょっとでも弱かったら、今の十倍は可愛げがあるのによお」


「……うるさい」



余計なお世話だ。

くつくつと喉を鳴らしたプロシュートを睨みつけてから、グラスを傾ける。


すると、その飲みっぷりにホルマジオがニカッと笑ってみせた。


「なァ、名前! 飲み比べしてみねェか? プロシュートは――」


「オレはパスだ。自分のペースで飲みてえからな」


「と、言うと思ったぜ。つーわけで、名前と俺だけな」



勝手に進められていく話。

断りを入れたいが、勝負とあらば名前の心にある負けず嫌いに火がつく。



「わかった。……あとで泣き言言わないでよ?」


「その言葉、そっくりお前に返すぜ?」


こうして、彼女(彼)と彼(彼女)の飲み比べは始まった。










「おい、足元ふらついてんぞ。大丈夫かよ」


「ん……っなん、とか」



窓からの日差しが消え、空が黒へ染まり始めた頃。

リビングで寝そべる男(女)たちを置いて、名前は顔色一つ変わっていないプロシュートに支えられながら部屋へ向かっていた。

体格的には今は交代しているものの、彼女(彼)が細身なこともあり、なんとか進めている状態である。



どうやら、調子に乗りすぎたらしい。


――ダメ……さすがに頭がくらくらする。



「……着いたぜ」


「う、ん……、はあ」



ボスン

開いた扉に誘導されるがまま、覚束ない足取りでベッドへと倒れ込んだ。


なぜか電気をつけようとしない、男(女)の表情に気付かずに。


「ったく、自分の力量ぐらい理解しとけよ。このマンモーナが」


「……うるさ、い……でも、ありがと……」


「ハン! ずいぶん素直じゃねえか」



素直で悪いのか。

そういう意味を込めて、くらりとする頭に必死にムチを打ち、名前が白いシーツの上で仰向けになる。


刹那だった。



ギシッ



「ん……?」


「どうした?」


「なんで、あんたまでベッドに、乗ってんの?」



自分を覆う身体。

顔の左右に置かれた(今は細めの)腕。



酒で潤んだ瞳を上へ移せば、プロシュートが不意に妖艶な笑みを浮かべる。


「いや……少し、気になることがあってよ」


「? 気に、なること……?」


「ああ」









「≪身体を重ねるとき、女はどんな風に感じてんのか≫ってな」


「……、は!?」



放たれた言葉。

それに大きく目を見開く名前。


今、自分はある種男であり、プロシュートは女である。



――まさか。

先程からの表情の意味を今更ながら悟った彼女(彼)は、慌てて抵抗しようとするが――もう遅い。



「逃げんなよ」


「! やめ……っ」


「ふ……やめるわけねえだろうが」



両手首を掴まれ、唐突に囁かれる。

足先から頭上へ走り抜ける、身の危険。


相変わらずほくそ笑んでいるプロシュートは、≪酔って≫こういうことをする男(女)ではないから、おそらく本気だ。


「知ってっか? いや、知らねえだろうな」


「ッ? 何言って――」


「オレ、意外にお前のこと……」


「!」



張り詰めた空気によって、1ミリたりとも動かない躯体。

そして、徐々に近付いてくる端整な顔に、思わず心の中で≪助けを求めながら≫目をぎゅうと瞑る――と。




バンッ



「ちょっとちょっとちょっとォォオオ!? プロシュート、何オレの彼女に手出そうとしてんの!?」


「…………え?」


「……チッ。邪魔すんじゃねえよメローネ。つか、そもそも付き合ってねえだろうが、お前ら」



突然、扉が開かれたかと思えば、駆け込んできたのはなぜか≪興奮気味≫のメローネ。

呆然とする名前をよそに、プロシュートとしばらく口論した彼(彼女)は勢いよくベッドへ近寄ってきた。



「名前! ハアハア……プロシュートなんか放っておいて、オレと……ハアハア、ベッドインしよ。大丈夫! もしわからないなら、手取り足取り腰取り教えてあげるからさあ……ハアハアハア!」


「……」


「ハア、ハア……名前?」


「ん? どうしたんだよ」









「どっちともお断りッ!」



ドカッ


「グ……!」


「ベネ……ッ」



偶然、近くにあった大きな白い枕で二人の頭を殴り飛ばす。

≪可哀想≫なんて気持ちは、これっぽっちもない。



「……疲れた。寝る」


いつの間にか起こしていた上体。

それを戻しながら、名前は床に伏せた男(女)たちを一瞥することすらせず、柔らかな枕へと顔を埋めた。




「……すう……すう」



数分後には、聞こえ始めた寝息。

穏やかなそれに導かれるように、むくむくと起き上がるプロシュートとメローネ。



「ったく……ほんとおてんば娘だな」


「あは! そこもすげえ可愛いんじゃないか! クーデレ最高! ……ね、プロシュート」


「(デレてんのか? あれで……)あ? なんだよ」


「…………二人でさ、名前を驚かさない?」



これでもかと言うほどつり上がった口端。

明らかに≪碌でもないこと≫だが、興味深い。


ハン、といつものごとく笑ったプロシュートは、その計画に耳を傾けるのだった。












upset×upset
そして、≪あの朝≫へ――







お待たせいたしました!
暗チで『Boys⇔Girls』の間の話でした。
ヒロインが目覚めるまでには、あのようなことがあったのだと感じていただけると嬉しいです(笑)。


ノア様、リクエスト本当にありがとうございました!
感想&手直しのご希望がございましたら、ぜひお願いいたします……!
polka



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