それ全く冗談になってないから!








「でも、驚きました。まさか、名前がボスの恋人だったなんて」


「え」


久しぶりに集まった、護衛チームのみんな。


ジョルノは仕事の関係で遅れて来るらしい。


まあ、その寂しさと安堵を抜きにして、みんなに会えたことは嬉しい。




本当に嬉しいんだけど……ね?



フーゴが発した言葉に、私は一瞬で青ざめた。




「ふ、フーゴ!? どうして知って……」


「どうしてって、ねえ?」



肩を竦めた彼の視線の先にいたのは――




「ミースータァァァ!」


「うぐッ!? な、なんだよ! いいじゃねーか、言っても。言うな、って禁止されたわけでもねーし」


「……」



確かにそうだ。


驚いたせいか、ケーキを喉に詰まらせるミスタの言葉を聞いて私は黙り込む。



「そもそもさあ、どうしてオレたちに隠すつもりだったんだよ!」


「そうよ、名前ったら水臭いじゃない」


唇を尖らせて呟くナランチャの手には、算数のノート。


彼は、今学校とアジトを行き来していた。


そして、私の友達でもあるトリッシュは、一般人として過ごしている。


でも、よくメールとかで連絡は取り合っていて、今度の休みの日にはジェラートを食べる約束もしてるんだ!



「あはは。それは……その」


「……どうせ、あの腹黒がオレらにからかわれないように、とか言ったんだろ?」


言いよどむ私に、片方だけヘッドフォンを外して話すアバッキオ。


うう、私もそう思ってたんだけど……ね?



「いや、違うんだアバッキオ。ジョルノ……いや、ボスは名前を守るために公開しなかったらしい」


「そ、そうなの! なんだかんだ言って、優しいんだよ、ジョルノは!」


「へえ……」



すかさず事実を話すブチャラティ。


私もそれに続けば、胡散臭そうな――明らかに信じていないといった視線をアバッキオに向けられてしまった。



……本当なのに。



「ところで、どうなんですか?」


「……何が?」


「ボスとの恋人生活ですよ」


「ぶっ!?」



淡々と述べるフーゴに、思わず紅茶を吹き出しそうになる。


と、突然何言って……!



「オレも気になる! だってあいつ、独占欲強そーだし」


「……実際に強かったぜ」


にししとナランチャが笑えば、遠い目をするミスタ。


ああ、私も思い出したくない。




「ん? なんだテメーら、しけた面して」


「いや、それは……な?」


「うん……」



眉をひそめるアバッキオに、二人でアイコンタクトを取ったそのときだった。










「ただ、ちょっとお仕置きをしただけですよ?」


「「!!」」


後ろから腕を回され、吐息が私の耳を掠める。


その声はよく聞きなれたもので――



「ジョ、ジョルノ」


「お待たせしました、名前」


にこり。


振り返り彼を見上げれば、爽やかな笑顔とともにキスを贈られる。


「ちょ……ここ、人前だよ?」


「いいんですよ。見知った人たちなんですから」


「んっ」


珍しい。こんなにキスしたがるなんて。



驚いて抵抗もできずにいると、ナランチャが声を張り上げた。


「なあ〜! かなり一方的に見えんだけど、名前は別れたくならねーの?」


「ん……え?」


な、何を言い出すのかと思えば……!



そりゃあ、嫌にならないこともないけど、大切な彼氏だし。

だから、怒らないでね。


そんな思いでジョルノをもう一度見上げると、優しい微笑みが返される。




あ、よかった。


きっと気にしてな――



「まあ、そんなことは断じてない自信がありますが……もし、名前が別れを切り出すことがあろうものなら、すぐに首輪をつけて、部屋に閉じ込めますけどね」


「……」


「「「「「「……」」」」」」






「なんて、冗談です」


ぼくにも紅茶をください。


固まる私たちをよそに、椅子に手をかけるジョルノ。



「あ……あの、ジョルノ?」


「ん? どうしました、名前」



足を組んだ彼が、優しく私の名前を呼ぶ。


……いや、その姿も様になっていてかっこいいけどね!?











「それ全く冗談になってないから!」
ほ、ほら! みんな引いちゃってるし……!

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