あれ? 私悪くないよね?







「よォ! 誰かと思えば、名前じゃねーか!」


「あ……ミスタ!」



すべては、彼と廊下で出会ったこのときから始まっていたのかもしれない。





「なんだかすごく、久しぶりな気がする!」


「そうだな。オメーは全然変わってねーけど……ちゃんと牛乳飲んでんのかあ?」


「むっ、言われなくても飲んでます! というより、私がちっさいんじゃなくて周りがデカいの!」



ぽんぽんと頭をなでてくるミスタを睨みつけても、彼はただ笑うばかり。


まったく、相変わらずお調子者ポジションというか、ギャグ担当というか……。



「ところでよォ……今、オメー何してんの?」


「え? ジョルノの秘書だけど」


「……は? ジョルノ、じゃなかったボスの秘書だァ!?」



驚きでのけぞるミスタ。


私、そんな変なこと言ったかな?




「あいつ……オレが聞いても知らねーつってたクセに」


「? ミスタ、どうかした?」


「……いや、なんでもねー。名前が秘書ならちょうどよかったって思っただけだぜ」



心ここに非ずの彼も心配だけど、秘書として伝言を聞かないのはまずい。



「そっか……で? ジョルノに伝えることあったら聞くけど」


「いや、そーじゃなくて……あいつの部屋、入れてほしいんだよ」


「ジョルノの部屋?」



思わず首をかしげてしまう。


別に立ち入り禁止ってわけでもないのに……。


私がそうぽつりと呟けば――



「こういうのは、ちゃんと許可とるもんだろ?」


さらりと言い返されてしまった。




「……」


「名前? なんだよ、その珍しいものを見たっていう目は」


「ぷっ……ううん。ミスタって意外に律儀だなって思っただけ!」


「はァ!? オメーな、オレは元から律儀中の律儀だっつーのッ!」



ほんとに、律儀の意味わかってるのかな?


でも、こうやって楽しませてくれる彼が結構好きだ。







もちろん、友達の意味でね?









「はい、どうぞ。ジョルノ、もうそろそろ戻ってくるだろうから」


「おッ、なんかわりーな! オイ、オメーら! 名前が美味そうな菓子出してくれたぞ!」



ソファへ腰を下ろしたミスタの前へクッキーを差し出すと、元気に彼の周りを飛び回るピストルズ。



「可愛いなあ。あ、紅茶も用意するね」


「いや、そこまでしなくていいって! コイツらが満腹になればそれでいいんだよ」


「……そう?」



しかし、たとえ苦難の道を共にした仲間でも、お客様はお客様だ。


お菓子の取り合いを始めたピストルズを宥める彼に見えないよう、戸棚からカップを取り出した、が。



「……あ」


「ん? どうした、名前?」


「……うっ、ううん! なんでもないよ! ほんと!」



実はなんでもなくない。




カップの数が≪4≫個なのだ。



ミスタが見れば、絶叫するに違いない。



「(と、とにかく一個戸棚に戻して! それから――)」


「ったく、こそこそしてると思えば……気ィ遣わなくていいのによォ……あ」


「ひっ!?」



残念。手遅れだった。



「お、おおオイッ! これ……!」


「ごごごめんね! 今すぐ、片づけるから……わッ!?」


「! 危ねェ!!」





パリーンッ



戸棚の中から落ちてくる食器。


その下にいた私は、思わず目を瞑って衝撃に備えていたけれど――






「……?」


「大丈夫かよ」


「へっ? あ、うん。ありが……!?」



目の前にいるミスタが――異様に近い。


あと、背中に固い感触と視界に広がる天井。



つまり、助けてもらった拍子に押し倒された状態になってしまったらしい。



なんてベタなの。でも、これが見つかれば――非常にまずいことになる。




「!?!? あ、あああの!」


「? 何どもって……ッ! わ、わりー!」



すぐ退くから!



しかし、彼がそう叫んだときにはもう……遅かった。









「ぼくの恋人を襲おうだなんて、ずいぶん度胸があるんですね。ミスタ」


「「……あ」」


ドアにもたれかかり、にこにこと笑っているのは――我らがボス。


そして、弁解しようとした私たちを一刀両断するように、彼は笑顔のまま残酷な決定事項を打ち出すのだ。




「名前、ミスタ。二人とも、覚悟はいいですか?」









「あれ? 私悪くないよね?」
お願いだから、悪くないと言って!




その後、ミスタと私はそれぞれ違うお仕置きを受けました。



詳細?





口に出せたら苦労はしません。


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