なんか目が笑ってないんだけど



※ジョルノの恋人兼秘書のヒロイン
※全員生存設定



パッショーネのボスが――ううん、元ボスが≪行方不明≫となって、ジョルノは長年の夢を叶えられた。


組織を率いる彼の目は生き生きしているし、私も本当に良かったとは思っているんだけど――






「ねえ、名前」


「……ん?」


「どうして、ぼくからそんなに離れて立っているんですか?」


こちらに来て、座ってください。


大きな革のソファに腰かけ、手招きをするジョルノ。


少し髪型は特徴的だけど、まさにイケメンだし非の打ちどころのない私の恋人だ。







――ある一点を除けば。



「い、いや、いいよ! 私、これでも秘書って立場だし……」


「名前」


ぼくの言うことが聞けないんですか?




「!? き、きき聞けます! 聞きますとも!」


そう、これだ。


ジョルノはいわゆる≪腹黒≫君ってやつ。



「ふふ、いい子ですね」


「……」


出会った当初から予感はしていたけど、それ以上に腹の中は真っ黒。


私を抱き寄せて、なでる手はこんなにも優しいのになあ。




コンコンコン


そのとき、部屋に響いたノック音。





「あ、ジョルノ。離れなきゃ……」


「……チッ」


「!」



舌打ちした。舌打ちしたよ、この子!


解放されたのはいいものの、じっとりとした視線を背に、私は扉を開けた。






「やあ、名前」


「あ……ブチャラティ」



不思議なおかっぱ……げふん、素敵な髪型の彼を見て思わずホッとしてしまう。



「調子はどうだい?」


「う、うん! まだ秘書なんて全然慣れないけど……私なりにやってるつもり」


「そうか、よかったよ」


「あ、ちょ……////」



にこりと微笑み、私の手にキスをするブチャラティ。



これは何度やっても慣れないなあ――そう思い、赤くなった顔を隠そうとしていると――






「二人とも、いつまでそこに立っているつもりなんですか?」


「!」


「ああ、すまないジョルノ」




いつの間にか、ボス席に戻っていたジョルノが、少々苛立ちを含んだ声で私たちに話しかける。




まずい。喋りすぎてしまったらしい。


彼の内心に気が付いていないブチャラティは笑顔だけど、私は頬を引きつらせることしかできない。




「……あ! 私、紅茶入れてくるね!」


「大丈夫、必要ありませんよ、名前」


「っ……でも」


「それより、ぼくの傍にいてください」



逃亡作戦、失敗。


「はい……って、わ!?」


「それで? ブチャラティ、用事はなんなんですか?」




恐る恐るジョルノの元へ歩み寄れば――やはり、彼の膝の上に乗せられてしまった。


恨みがましい目は向けられない。



向けても、朗らかな笑みで返されるだけだから。



「いや、書類を持ってきただけなんだが……二人は仲がいいな」


「え!?」


「そりゃそうですよ。ぼくたち恋人なんですから」



……いやいやいやいや!


平然と告げた彼の言葉に、私はかなり焦っていた。


付き合ったとき、このことを隠しておこうって言ったのは、ジョルノだよね!?



「恋人……そうだったのか?」


「ええ。名前のことを思って、公表はしなかったんですけどね」


「……え?」



今度は驚いてしまう。


だって、あのときはからかわれるだろうから隠しましょう、って言ってたのに――


そっと静かに見上げれば、私へ向けられる優しい笑顔。





ああ。だから、彼から離れられない――ううん、離れたくなくなっちゃうんだ。



「そうか……確かに懸命な判断だと思う。お前をおびき寄せる目的で、名前が誘拐される危険性もなくはないからな」


「でしょう? まあ――」













「名前に手を出した奴には、ゆっくりと鋭い痛みを永遠に味わってもらおうかなと考えていますけどね」


「……あ、あの、ジョルノ? 一つ聞いてもいい?」


「なんですか? 名前」











「なんか目が笑ってないんだけど」
本気じゃないよね? ね? というか、ブチャラティも笑ってないで止めて!!

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