due


ふわふわとする感覚が消え、別のふわふわに身体が支配される。



「……ん……っ」


薄く瞼を開ければ、見慣れない白い天井。


そして、自分の背を包むいつもより柔らかいであろうベッド。



「ッ、いた……」


ズキズキと痛む頭を右手で押さえながら、ゆっくりと上体を起こせば、やはり知らない部屋だ。



「……ここ、は」


――確か、私はレオーネ・アバッキオに強引にバーへ連れてかれて、高そうなとこだから飲んでやると思って、それから――――





「目ェ覚めたか」


「!」


先程まで聞いていたはずの声。


勢いよくアバッキオの方へと振り向いた名前は、彼の姿に絶句した。



「な……な、なななんで! は、はだッ」


「オイ、落ち着いて話せよ」


「ち、近づかないで! せめて、服着て!」


目の前に広がる光景――上半身裸に下はバスタオルというものに、自分の体温が上昇していくのがわかる。


――い、いい身体とか……思ってない!


「……テメーはシャワー浴びたての奴に、服着ろって言うのか」


「シャ、シャワーって……まさか、ここは」


「ホテルとってやったんだ。感謝しやがれ」


「ホ!? っ、ゲホ! ゴホッ」



何事もなく答える男に、驚くことしかできない。


――信じられない! しかも、男女二人だなんて!


絶対に誤解された。


咳き込みながら、名前が頭を抱え込んでいると――


「ちったァ落ち着け。ほら、水」


「あ……ありが、と」


ゴクッゴクッ


差し出されたグラスを受け取り、一気飲みする。


このとき、彼女は気づいていなかった。



「……」


アバッキオがその飲みっぷりに、口端を上げたことを。



「ふう……」


「大丈夫なのかよ」


「心配は無用です。私は……帰らないと」


まだふらつきはするが、このまま居座りたくもない。



それに朝帰りなんてすれば、たとえやましいことをしなくても、仲間にからかわれるのは必至だ。


――特にメローネとかメローネとかメローネとか!


ネタにされるのだけは勘弁願いたい。



固い意志を胸に、ベッドから離れようとしたそのとき。



「そんな急ぐんじゃねーよ」


掴まれた肩。


その指がふっと首元を掠め――



「ッ、ひゃん! ぇ、!?」


気が付けば、ベッドに座り込んでいる。


――な、何? 今の声……。


まるで、自分の感覚が研ぎ澄まさてしまったかのような。


「やっぱり調子悪いんじゃねーか」


「ぁ、ちが……っは、あ」


「顔も赤いようだが?」


「ッな、に言って……ぁあん!」



おかしい、絶対におかしい。


頬をただなぞられただけだ。



「や、ど……して」


「さあな。一つ言えんのは、欲に従ってみろってことだけだな」


「よ、く?」


もはや、アバッキオが何を言っているのかすらわからない。

ぼんやりする感覚の中、彼を見つめれば――近づく顔。



「ああ。オレのように、な」


「え……んッ!? ふ、あ……んんっ」


口に感じる、冷たく柔らかい感触。


いや、冷たいのは自分が熱すぎるからかもしれない。


いつの間にか、名前の視界は先程の天井とアバッキオで埋め尽くされていた。



「……っあ、れおーね……あばっき、お」


「アバッキオで、いい」


「は、っは……あばっきお……わたひ、なんか変らよぉ!」


「変? どういう風にだよ」


「あっ、や……ぜん、ぶ……ぜんぶ、あついのッ」


「全部熱い、ね……たとえば、首もか?」


「! ゃ、あぁッ!」


刹那、痛みと快感が同時にやってくる。


ビリビリと伝わるそれにただ委ねていれば――



「ココも、なんだろ?」


「ぁ、!? あ、待っ、て……まっへ、ぇ!」


ブチッ、ブチッ


強引に引きちぎられていく自分のシャツ。

無残にもプラプラと行き場をなくしているいくつものボタン。


「待て、だと? 嘘はいけねーだろ。なあ、オイ」


「は、ぁっ……それ、も、とっちゃ、やあ……!」


「それ? 言わねーとわかんねーよ」


なぜ、こんなときに限ってフロントホックのものを選んでしまったのだろう。


これでは、まるで――


「このブラ……まさか期待してたのか?」


「! 違ッ……や、あんっ!」


予想通り意地悪く言うアバッキオ。


それに、言い返そうとすれば――胸の先に走る痺れ。



「ハッ、名前よオ……ずいぶん、赤く腫れた乳首だなあ……ぽってりしてやがる。それに、柔らけェ」


「はっ、は、ッあ……いじらな、で……! もむのも、やあっ!!」


いやいやと首を振っているが、乗っかられていては身動きも出来やしない。


「この、まま、じゃ……ぁ、っわた、ひ……わたひッ」


「なんだよ。イくことを、オレは別に止めてねーぞ」


「え、ぁ……ぁあ!?」


甘噛みされる突起。


もう片方は、これでもかと言うほど指で捏ねくり回され――


「あっ、ァっ……や、も、ダメぇッ!」


「イけよ」


「ぁ、やらッ! あっ! イっちゃ……あ、ぁあああんっ!?」


ビクンッ



頭から爪先へと鋭く駆けていく甘くも、強い快感。


大きく目を見開いた名前は、息を乱したままそれをただ享受していた。



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