quattro




誘惑的な布の裾へ這わされた手。

そして、指先が捉えた感覚にリゾットの中で浮上していた≪疑惑≫の答えが見つかり、にやりと口端を吊り上げる。



「やはり、紐だったか」


「え? あっ、そ、それは……!」


あまりの快楽に忘れていた。

慌ててショーツを視界から逃そうとしても、もう遅い。


その紐をブルマーから露わにされ、くるくると指先で弄られてしまう。



「ふ……ずいぶんイメージとは正反対の、いやらしい下着を身に付けているんだな」


「! いやらし、っ……ちが、や、ぁあっ」


「名前の趣味がまさかこうしたモノだとは思わなかったぞ。激しい運動をすれば、簡単に外れてしまうだろうに」


「っひ、ぁ、やだ……せんせ、っ……いじわる、しな、で……っひゃあん!?」



刹那、シコリをほぐすように再び摘ままれた名前の乳首。

ビクビクと小刻みに震えるそれを扱かれながら、彼の言葉は続く。


「……そういえば、先程も跳び箱の直後にごそごそと動いていたな……いつもそうやって、≪下着が外れてしまわないか≫と授業時に楽しんでいたのか?」


「ぁ、ん……やっ、はぁ……ぁ、ち、ちがっ、のぉ……! これは……あんっ、メロ、ネせんせ、いが、っ」


「……メローネ?」



なぜあいつの名前が――少女の口から出た変態の名に驚いたのか、止まる動き。


このチャンスを見逃してはダメだ。

乱れた息の彼女は意を決して、昼休みの話をすることにした。



「なるほど、な……(メローネ、後で締める)」


しばらくして、納得してくれたらしい。

だが、男の指が不安定なその紐から離れることはない。



「あの……りぞ、とせんせ、い……?」


「名前、君の話はよくわかった。…………取るぞ」



え?

どういうことですか――尋ねるより先に、消えた布の感覚と視界に映った下着。


つまり、下半身にはブルマーだけが残されてしまったのだ。



「えっ、……え? な、なんで……/////」


「この方が触れやすいからな。こうして、直接拡げることができる」


「へ……っ、ひぁ、ぁああ!?」



刹那、開脚された両足。

さらにブルマーを付け根の方へ寄せたと同時に、晒される誰にも触れられたことのない名前の秘部。


まじまじと見られている――足を閉じようとしても、リゾットに間に入られどうすることもできない。

一方、目の前で蠢く薄紅色の女性器と香りに高ぶりを抑えつつ、彼はクチュと音を立ててその蜜壷を指先で拡げた。


「やらっ、ぁ……広げちゃ、やっ、ぁあん!」



拒否とともに溢れ出す愛液。

それによってテラテラと光る割れ目にほくそ笑みながら、男がソコへ息を吹きかける。


「わかるか? ココが名前の膣の入口だ。とても狭いが……子宮へと繋がっている。この膣口が男の陰茎を飲み込んで、男女は子どもを作る――性交渉をするんだ。と言っても、真面目に保健の授業を受けていた名前はしっかり覚えているんだろうが」


「っ、ぁっ……せい、こ……、っ! ダメ……赤ちゃ、ダメ、ぇ!」



さすがにここまで来れば、リゾットが本気であることに気付いたのだろう。

瞳に宿った別の狼狽に、ふっと微笑んだ。


少女の頭へ乗せられた手のひら。


「……心配するな。今日すべて行うとは言っていない」



――性交の授業は、君が高校を卒業してからだな。

悪戯っ子のように囁かれた言葉に、ドキリと胸が高鳴ってしまった。


しかし、その感情は瞬く間に快感で覆い尽くされる。

彼が指をゆっくりと膣口へ挿入すれば、彼女の腰が大きく痙攣した。


「締め付けるだけでなく、ブルマーのこの部分が濃くなってきたが……どうかしたのか?」


「ぁっ……ぁっ、そ、なこと言わな……ひぁ、っぁあ!?」


「ん?」


「ふ、っせんせ……ぁ、やら……ぁっぁっ、あん……!」


絶えずこぼれる蜜。

それに染まり色の変わっていく体操着。

男を一切知らない、そして穢れのない名前の身体。

快感を教え込んでいる――その自覚がより背徳的な興奮を煽った。



「っぁっあ……ん、……はぁ、はぁっ……ぁ、んッ」


「……ココも弄ってほしくて仕方がなさそうだな」


「はっ、はぁ……ぁっ、ふ……んっ……ひゃう、っ!?」



丁寧に剥かれた包皮。

陰核を押し潰すように扱われ、新たな性感に少女の肢体が震え上がる。



「ぁ、ダメ……や、ソコ……ん、っいじるの、らめぇ!」


だが、ヒクヒクと悦びで揺蕩う熟れた膣壁に、男が手を止めることはない。



「んっ、ぁっぁっ……ひぁ、っぁあ……!」


「ふ……蜜をこんなにも溢れさせて。名前聞こえるか?」


「! や……ぁ、音いや、ぁっ////」


「嫌? これは君が出しているんだぞ……?」



言葉攻めと同時に、指の代わりとして挿入されたリゾットの舌。


クチュリ

ピチャ


とは言え否定を紡ぐ口とは裏腹に、彼女の身体はもたらす快感一つ一つに反応してしまう。


恥ずかしいのに――羞恥と抗いようのない快楽にポロポロと涙を流しながら、名前は秘境へ顔を埋める彼を見つめた。


「ひゃっ、ぁ……せん、せい……も、わたし、おかしくな、ちゃ……や、っぁあ!」


おかしくなる。

懸命に吐き出されたその言葉に、少しばかり微笑んだ男はさらに膣内の粘膜を蹂躙し始める。


「おかしい? ふ……それはイくという感覚だ。……これはさすがに授業では教えなかったな。覚えておくといい」


「い、く……? やっ、ぁ……激し、の、ダメぇえ!」


逃げようと引く腰を両手でしっかりと捕まえつつ、肉壺の中で動き続ける舌。

波のように押し寄せる痺れ。


ついに、少女は堪え切れずに白い喉を晒け出した。



「ひぁ、っ……ぁっぁっ、あ……ダメ……イ、ちゃ……っ」


「ああ、いいぞ。はしたなくイってしまえばいい」


「や……ぁ、っそ、な……やっ、ぁっ、ん……ひゃ、っぁああ!?」



刹那、襲い来る快感につま先からつむじまでが震え、弛緩する筋肉。

ドプリ。肉襞がうねり、さらに愛液が溢れる。

マットも濡れてしまっているが、これは後でどうにかなるだろう――陰裂から唇を離し、膝立ちになったリゾットは果てたばかりの彼女をじっと見下ろした。


「はぁ、はぁっ……ぁ、りぞ、とせんせ……んっ」


「……」



快楽に蕩けきった瞳。

無防備に投げ出された下肢。



彼は、無意識のうちに喉をゴクリと上下させていた。


「? ぁっ……はぁっ、は……」


荒い呼吸を戻そうと、深く息を吸う。

だが次の瞬間、それを整えることも忘れて名前は双眸を揺らした。



「!」



男がおもむろに立ち上がり、ジャージを脱ぎ始めたのだ。


耳を劈いた布と肌の擦れ合う音。

そして、照明が不安定な薄闇に晒された精悍な身体に、ひゅっと息をのむ。



「ぁ、あの……先生、私……っ」


「……名前、そう怖がるな。君を取って食いやしない……先程も言っただろう? すべてを行うわけではない、と」


「あ……。でも……どう、やって――」









「――こうするんだ」


「きゃ……!?」



突如、両太股を逞しい腕に抱え上げられ、向かって屈曲するように押さえ付けられた。

この恥ずかしい格好に少女が頬を赤らめていると、ブルマー越しに秘部が捉えたひどく熱い男根。


ヌチャッとした、体液が交じり合う音が響く。



「ひぁっ……あの、え……?」


いったい何を――彼女が小首をかしげた瞬間だった。

膝裏をしっかりと掴みながら、なぜかリゾットが腰を前後させ始める。



「ぁ、んっ……せんせ、い? 何を……?」


「ふ……なんだと思う?」


「ぇ? そ、なのわかんな……、ひゃあん、っ!?」


「く、ッ」



内腿とモノが擦れ合ったかと思えば、外陰唇に与えられた性感。

あられもない嬌声を漏らしつつ、ちらりと下を一瞥すると、秘境の間から見え隠れする膨張した男性器が視界に映り、より羞恥が彼女を包む。


一方で快楽ゆえか、苦悶の表情を浮かべる彼にときめいている自分がいることに気付いた。

だが、そんな名前の様子を目敏く見つける男。


「!? やっ……ぁっあっ、あん……!」


「……ずいぶん余裕そうだな。行為中にいったい何を考えているんだ?」


「ひぁあっ、ぁ……ん、ごめ、なさ……や、ぁあッ」



あっという間に脳内の考えを強制的に消され、虐められてしまう。


チュッチュッとなぜか胸元に贈られるキス。

そして、その小さな痛みに戸惑いながら、もたらされていく快感に囚われ、か細い声で喘ぎ続ける少女。



「っん……ぁ、らめ……押し付けちゃ、はぁ……ぁっぁっ、らめぇ!」


「抗いながらもいやらしい声で啼いて、普段の清純さが嘘のようだ。……いや、オレがそう育てているのか」



教師の時とは違う低音が鼓膜を震わす。同時に襲い来る、避けようのない甘い絶頂感。


収縮し始めた胎内に彼女が目を瞑った――そのとき。



「……」


「ぁっ、ん……っや、ぁ……、え?」


「……静かに」



リゾットの動きが止まった。

どうしたのだろうか。


そう目を白黒させていると、聞こえてきた足音。


この声は――


「(……プロシュート、先生?)」



同じく体育教師のプロシュートだ。

生徒に人気な先生で優しいが――なぜか今に限っては、目の前で額にじわりと汗を滲ませている彼への恨み言が聞こえてくる。


予測できることは一つ。



「(リゾット先生のことを探しに……?)」


「……」



刹那、まるで自分たちの存在を隠すように申し訳程度についていた電気が消えた。

そして同時に――男が名前の唇を唇で塞いだのだ。


さらに、再開する律動。



「!? ふ、んっ……は……ぁ、んん……!」


「……名前、あまり声を出すと気付かれてしまうぞ」


「や、ぁ……////ん、ぁっ……はぁ、ふ、っぅ……」



バレてしまうかもしれない――という後ろめたさ。

もし、バレたら先生はどうなるのだろう。


しかし不安が掻き立てられるほど、同じく顔を覗かせるなんとも言い難い興奮。

布越しに擦られ、口内を貪られ、必死にくぐもった声でやめてほしいと乞えども、さらなる快感を求めて陰唇はヒクヒクと蠢くばかり。



「んっんっ、ん……ふ、ぅ……ん、ぁ、あんっ」


「は、ッ……ク」



ヌチャ、ヌチャ


直接耳を犯す生々しい水音。

しばらくして、少女の意識の片隅で足音が遠のき、扉が閉められた音が届いた。



「……行ったようだな」


「ん……はぁ、はっ……ぁ、りぞ、とせんせ、っ」


「! クク、どうした? 腰を揺らして」



また生まれた二人の世界。なぜか、自然とこぼれる甘えた声。

彼女は気付いていないのだろう。彼女のすべてが自分の加虐欲を煽り立てることに。


「っ、揺らしてなんか……ひゃっ!?」


「こら、嘘を付くんじゃあない。……嘘を付く悪い子にはお仕置きだな」


「! やっ、ぁっぁっ、あ……、らめ! らめ、ぇっ!」


「……ッ、名前」


婀娜やかな嬌声。

腿と襞の肉感に、リゾットの眉がひそめられる。


赤くグロテスクな亀頭は、自ずと腫れ上がった陰核へ押し付けられていた。


「あん……っソコ、ぁ、はぁ……ずっとグリグリしちゃ、っやぁあ!」


「ふ、そう言いながらブルマー越しの襞はヒクヒクしているが?」


漏れる二つの吐息。

お互いが、熱くてたまらない。



「ひぁ、っぁ……やら、ぁ、んんっ!」


枯れてしまいそうな喉。


皮膚が小刻みに震え、押し寄せた先程の終末感。

身体が、限界を知らせていた。


「ぁ……あんっ、せんせ……や、わたしっ、わた、しぃ……!」


「名前……オレも、そろそろ……ッ」


「っぁ、ん、ふ……ぁっぁっ、あっ……らめ……また……っん、またイっちゃ、ぁ……ひゃ、ぁああん!」



刹那、ビクリとより一層名前の躯体がマット上で跳ねる。


「……ッ名前」


「はっ、ぁ……はぁ、っせん、せ……?」



上気した頬。

汗ばんでいる透き通った肌。

官能的な表情。

自分を呼ぶひどく艶っぽい声。

そして、肌蹴た体操服と愛液に濡れたブルマー。



「ッ、く……!」


ビュルルッ



「ふあ……っ!? ん、っやぁ……////」


気が付けば、彼はこれまで塞き止めていた欲と想いを一気に少女の腹部へ吐き出していた。









情事後特有の香りと、蒸し蒸しとした空間の中で、ようやく整った息。

もちろん、そのあとが大変だったのは言うまでもない。



「す、すまない……」


「いえ……/////」


肌に広がった体液は顔に焦燥を浮かべたリゾットが、スポーツタオルで優しく拭いてくれた。

とは言え、白濁液の飛び散ったブルマーと体操服はどうにもできない。


このままでは、ここから教室まで下着姿で帰ることになるのである。


「(どうしよう……)」


「名前」


「え? ……あ」


「これを着るといい。こちらはオレが洗濯しておく」


そっと手渡された黒ジャージ。

でも――溢れ出た申し訳なさで彼女は返そうとするが、有無を言わさぬ彼の瞳に頷くほかなかった。



「えと、っそれじゃあ……お借りします」


「ああ」



男から離れ、恥ずかしい下着の上からジャージを身に纏う。

そして、長めと言えども心もとない裾を握りながら、ちょこちょこと元の場所へ歩み寄った。


当然、ブルマーとは違う形で伸びる太腿に、ギョッとするリゾット。


「……ッ(これが≪彼ジャー≫なのか……!?)」


まさか別の破壊力があるとは。

これでは、倉庫から出られたとしても教室まで帰すことすら難しい――自分の誤算に頭を抱えていると、彼を悩ませる当人が顔を覗き込んでくる。



「リゾット、先生?」


「! す、すまない。どうした?」


「いえ……あの、私たちはいつ出られるんでしょうか……?」



そうだ。

忘れていたわけではないが――自分たちは今密室。

誰かを呼ばなければ、助けてもらえない。


名前の不安げに揺らぐ瞳を一瞥した男は、おもむろにジャージのズボンから≪携帯電話≫を取り出した。



「大丈夫だ。すぐに≪助けを呼ぶ≫」


「え――」









「で? 帰ろうとしたオレを呼び出した挙句、教室にある名字の制服やカバン諸々取りに行かせて、いったい何がしてえんだ。リゾット≪先生≫よォ……!」


「いや、それ以外特に用事があったわけではない。ただ扉を開けてもらうために呼んだ。お前のおかげで名前も…………ゴホン、名字もオレも助かった。このことは感謝する。というわけでプロシュート、帰っていい――」


「(おい、今名前で呼びやがったぞ……)テメーなァ、ザケんじゃねえぞ! そういう問題じゃあねえだろうがッ!」


数分後。

やってきたのは、明らかに私服姿のプロシュートだった。


当然、状況と鼻を劈く室内の香りに、説教が長いことで有名な彼は頬を引きつらせる。



「オメー…………ついに生徒に手ェ出したな!? しかもどさくさに紛れてこいつに彼ジャーまでさせて……! もう彼氏気取りかッ! ええ?」


「……っ/////(か、彼氏だなんて……)」


ボンッと顔に火が出たかのように、赤くなった少女の頬。

それにさえため息をつきつつ、男が真顔の同僚を睨むが、リゾットは素知らぬ顔で話を続けた。



「それより、もう日が暮れ始めている。こんな時間帯に名字を一人で帰らせるわけには行かないんだが……」


「はあああ、リゾットリゾットリゾットよ〜! お前、話そらしてんじゃ…………チッ、わかった。テメーへの説教は後だ。今優先すべきなのはこいつの安全な帰宅だな? 安心しろ、オレがきっちり家まで送る。おら名字、行くぞ。こっから駐車場は近えから、服はオレの車ん中で着替えろ」


「え? あ、はい……すみません、ご迷惑をおかけして……」


「ハッ、気にすんな。生徒を守んのが教師の役目だ」



ニカッと笑うプロシュート。

それに安堵した彼女は、カバンを肩にかけ、きゅっと裾を掴みつつも倉庫を出ようとした、が。


もちろん、名前に夢中な男が≪自分以外の男と二人きり≫を許すはずもなく。


「待て。誰がお前にこの子を送れと言った。オレが言いたいのは――」


「ハン、残念だったな。オメーには、オメーにしかできねえ仕事さんが待ってんだよ。つーわけでさっさと納得して職員室に帰んな」


「納得できるかッ! それに車、だと? 車は密室だ……そんな密室でお前は……! 名字に何をするつもりだ!」


「リゾット……誰がお前の二の舞踏むかよ。いいか? オレァ別にお前とこいつを早く引き離そうだなんて考えてねえ(本当は考えてるが)。一番効率のイイ方法が≪オレが車で送る≫って奴なんだ。潔く諦めろ!」


いつまでも続きそうな口論。

二人の睨み合いにおろおろとしつつ、少女はふと首をかしげた。


「あれ?」


「ん? どうした? やはりプロシュートに送られるのが嫌なのk――」


「オメーはもう黙ってろ。で? どうした名字」



すぐさま駆け寄ってきたリゾットの言葉を容赦なく遮り、こちらを見つめるプロシュート。

言っていいのだろうか。


いや、この疑問は解決しなければ――そう決心し、彼女はおずおずと胸の内を打ち明ける。



「い、いえ……最初からリ……、ネエロ先生に電話してもらえばよかったのかな、って……」


「「……」」



≪まさか、お前≫――プロシュートの脳内に過ぎる嫌な予感。

次の瞬間、体育館内には彼の怒鳴り声が響くのだった。









bloomer×harassment
彼女の無防備さ。それが彼を悩ませる。




〜おまけ〜



「名字」


「あ……せ、先生……」



二日後。

偶然廊下で出くわしたリゾットに、一瞬驚いてから微笑む名前。


一方、ふっと頬を緩めた彼は手に持っていた紙袋を差し出した。



「これは……?」


「……この前の体操着だ」


「! え、えっと……ありがとうござい、ます////」



やはり、あれは夢ではなかったのだ。

慌てて袋を受け取りながら、紅潮した顔を隠すように俯くと、その耳元に男が唇を近付けてくる。



「ふ、どうしたんだ? ……まさか、何か≪いやらしいこと≫でも思い出したのか?」


「!? そ、そんなっ……、うう」


図星だった。だが、せめてもの抵抗と、下唇を噛んだ少女は控えめにリゾットを睨み上げた。



「ん?」


「先生って……結構、イジワルなんですね……っ」


「……(いじめるたびに君の反応が可愛いからだと打ち明ければ、ますますこの子は怒るんだろうな……)名字。そういう表情は他の輩の前ではしない方がいい。というより見せるな」



全然効いていない――彼女ががくりと肩を落とす。

もちろん、忠告には首をかしげるばかり。



「え? あの、どうして――」


「いいな?」


「……、はい」


「いい子だ。ところで、君は何を持っているんだ?」



自分の手にある小さな紙袋。名前はそれを持ち上げつつ、口を開く。


「あ、これはこの前お借りした下着の代わりを購入したので、メローネ先生に渡そうと思いまして」


「……なるほど。それならば、オレが預かっておこう」


え――少女が目を丸くするより先に、ひょいっとその紙袋を取り上げられてしまう。

話を聞けば、どうやらメローネに用事があるらしい。


当然、彼が黒いオーラを携えていたのは言うまでもない。


「えと……なんだかすみません。お願いします」


「ああ。これは確かに預かった。ということで、オレはそろそろ失礼する」


「! はい……」


次の瞬間、颯爽と踵を返した男の背を眺めて、彼女はあることに気付いた。

自分はまだ、この想いを伝えられていない。



「っ、あ……」


「……どうした?」


ふとした違和感にリゾットがこちらを振り向く。

交わる視線。

名前がハッと我に返ったときには、すでに彼のジャージの袖を掴んでいた。



「わ、私も……その、えっと」


「? ……名字?」


「……、ッ」








「私も! り、≪リゾット先生≫のこと……先生以上として……見て、ますから」



できるだけ小声で、けれども耳へ届くように確かな声音で呟いた言葉。


「!」


「〜〜っ失礼します!」


恥ずかしさに堪え切れなかったのだろう。

少女が走り出した一方で、その場に呆然と立ち尽くす男。


視線の先には小さくなっていく背中。



「名前……」



今すぐに、名字ではなく名前で彼女のことを呼び止めたい。

これまで必死に抑え込んできた想いを口にし、彼女を強く抱きしめたい。

さらに、倉庫でしたようにあの桜色の唇を奪ってしまいたい。


そして――



「……(卒業まで、我慢できるだろうか……)」


自然と溢れ出るため息。

それから、不意に引きつった笑みを浮かべるネエロ先生(本人は思い出し笑いをしているつもり)が見かけられたらしい。











ということで、体育教師のリーダーとブルマー連載ヒロインちゃんです。
管理人もリーダーもやってしまいました……一歩間違えれば――いや、すでにヒロインちゃんに訴えられてもおかしくないレベルです。正直、負ける気しかしません(笑)。

ご提案くださった方、本当にありがとうございました!
今回のお話ではいわゆる≪本番≫がありませんでしたが……もし、続きを期待してくださる方はぜひリクエストお待ちしております←


感想などもよろしければ!
ご閲覧ありがとうございました……!
polka



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