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二人が運良くマットの上へ倒れ込んだ刹那、ずいぶん電球を替えていないのか不安定な明かりがその場を照らした。

同時に、リゾットが自分の下敷きになってくれた――という事態を把握し、名前は抱き寄せられたまま青ざめる。



「先生っ!」


「……名字、怪我はないか?」


「っわ、私は大丈夫です! でも……でもネエロ先生が……!」


「ふ……オレも大丈夫だ。だからそう、泣きそうな顔をするな(正直、下半身に悪い……)」



自分の中の劣情を紛らわすため、そっと小さな頭を右手で撫でた。

だが、相変わらず少女の表情は暗いままだ。


不審に思った彼が顔を覗き込めば、申し訳なさそうに眉を寄せた彼女は静かに口を開く。



「……っ、ごめんなさい。私が慌てて転んだりしなかったら……」


「君のせいじゃあない。オレが手を離さなければ良かったんだ……すまない」


「そんな……先生は優しすぎ、ます」



悪いのは私です――そう訴えるためだろうか。こちらをおずおずと見つめる名前と、不意に視線が交わった。


そして、よくよく現状を考え直して――男の思考はあっという間に停止する。


涙というオプション付きの上目遣い。

己の胸板に乗せられた豊満な二つの膨らみ。

今にもズボンの下で主張を始めそうなモノを掠める肉感的な上腿。



「……」



カチリ。

男の中で、何かのスイッチが入る音がした。


一方、少女も今の状況に気付きボンッと頬を赤らめながら、慌てて起き上がろうとする――が。



「その必要はない」


「きゃっ!?」



グイッ

腕を引き寄せられ、逆戻りした身体。布越しに伝わる体温で、ますます熱を帯びる首から上。


密室だから、という理由だけではない。



その反応に当然にやりと口端を吊り上げたリゾットは、わざとらしく彼女の耳元へ囁きかける。



「名字……どうしたんだ? 顔を真っ赤にして……」


「あ、えと、その……っ(うう、先生の顔が近い……!)」


「……なるほど、名字はずいぶん初心なんだな。恋人と抱き合ったこともないのか?」


「こッ…………えっ、ええ!?」



まさかそのようなことを尋ねられるとは。

先生の様子がおかしい――驚きに目を見張りつつ、名前は紅潮した耳を隠すようにポニーテールを左右へ揺らす。



「……こ……恋人なんて、私できたことありませんっ」


――って、先生にそんなこと言ってどうするの私……!


今更ながら現れる後悔。

だが、少女が恐る恐る彼の様子を一瞥すると、男はこれまでにないほど瞠目しているではないか。

そして、何を思ったのか大きな手のひらで目元を覆った。


「できたことが、ない? 本当か?」


「は、はい」


「……」


「? あの――」


「…………すべて、オレの杞憂だったのか……」



深いため息。心苦しい沈黙が漂う。


いつまでも続くそれにさすがに堪え切れず、もう一度リゾットの腕から抜け出そうと試みた瞬間――彼女の視界は反転した。


「えっ……?」


マットに押し付けられた背中。

掴まれた両手首。

二人の影を隠す周りの道具たち。


――これでは、自分が押し倒されているかのようだ。

一方、ありありと動揺を双眸に宿す名前を見下ろしながら、彼はおもむろに言葉を紡ぎ出す。


「男と付き合ったことがない。そう名字は言ったが、つまり君は――」








「こういったモノも、経験したことがないんだな?」


「え、えっと……ネエロ先生? な、にを……言って――んっ」


「ん……」



瞬きをした瞬間だった。


少女の唇を塞ぐ少しだけ乾燥した何か。

こちらを貫く赤い眼差し。


その近さに、彼女はようやく≪自分がされていること≫を悟る。



「っん、ふ……ぅ、んん……ぁッ、はぁ、はぁっ……!」


「は、ッ……名前……」



やっぱり名前、覚えて――己の心を捕らえて離さない男の瞳から逃れたくて、名前が瞼を下ろしたことが引き金となったのだろう。


無防備にも開かれた口内へ舌が侵入したかと思えば、戸惑っていた少女の舌をぬるりと絡め取ってしまった。

視線に愛しさを浮かべたリゾットは、剥き出しのうなじを撫で付けるように彼女の後頭部へ無骨な手を回しながら、攻め立てるが如く水音を轟かせ、貪るように隙だらけの粘膜を刺激する。


「ぁ、んっ……はぁ、や、ぁ……ン、っ」


「ッ……イイ顔だ」


「! ふっ、ぅ、んんッ……ぁっ、ん、ん……ッ!」


「……」



クチュリ、と薄暗い室内に響き渡る粘着質な音。

潤んだ眼の名前を襲う、朦朧とした世界と強烈な快感。


「んっ……ん、……はぁ……はッ、はぁ、っぁ」



どのくらいの時間が経ったのだろうか。少女がようやく彼の深い口付けから解放されたときには、唾液が淫らに己の口端から伝っていることすらわからなくなっていた。


ひどく乱れた吐息。火照っていく肌。

ぼんやりとした意識下で本人は気付いていないが、恍惚とした瞳のまま彼女は男を見上げる。



「はぁ、っは……ぁ……、せんせい……っど、して」


「名字」









「オレが、君にずっとこうしたかったと言えば……名字は笑うか?」


「!」


「名字を……いや名前を、生徒以上として見ている」



驚愕によって、揺蕩う名前の心。

嬉しい――胸中を覆い尽くした感情。少女はそれを慌てて振り払った。



「だ、ダメです! っそんな……先生にはその……奥さんがいるんです、し……」


「……ん?」


≪奥さん≫?

いったい、なんの話だろうか。


彼女から拒否されなかったことにホッとしつつも、リゾットはただただ不思議そうに首をかしげる。



「生憎、オレは独身なんだが」


「へ……? でも≪ご結婚されてる≫っていう噂も、ありますよ?」


「……、……ああ、あの噂か。どうやら、同僚や女子生徒に付き纏われないよう放った言葉が今になって仇となったようだ」


「あ、仇だなんてそんな……」



漏れる苦笑。同時に溢れる安堵。

とは言え、結婚していないという事実とこの状況では話が違う。


嬉しい。けれども≪からかい≫であってほしい――複雑な想いを抱いたまま、淡い恋心がこれ以上期待に膨らんでしまわぬよう彼から視線をそらした刹那。

不意に、輪郭を辿るように頬を指先でなぞられ、名前の肌がピクリと震えた。



「ひゃ……っ先生、あの擽った、ぁ」


「ふ……可愛い反応だな。だが、君はあまりにも無防備すぎる」


「む、無防備……ですか?」



きょとん。

そう言われた意味がわからず男を見上げれば、自分を射抜く肉食獣のような目つき。


劣情を秘めたそれに、改めてこの状態の危うさを悟る。



「そうだ。隙だらけなんだ。学校指定の体操服がブルマーであると言えども、こんなにも艶かしい太腿を易々と目の前に晒して……」


「……せん、せ……?」


「あまり大人を――オレを、買い被らない方がいい」


「ぇ……、ひゃあんっ!?」



いやらしく撫で回された白い陶器のような太腿。

その荒々しい手つきに過敏に反応しながら、≪ダメ≫と赤らんだ顔で少女は懸命に首を横へ振った。


「ぁ、っ先生……はぁ、やめてくださ、っん……!」


「……」


自然と片方だけ解放されていた手首。

それを駆使して、慌てふためいた様子で屈強な腕を遠ざからせようとする。


だが、リゾットは表情を変えぬまま彼女の細腕をするりと片手で頭上に纏め上げ、近くにあった新体操の赤いリボンであっという間に手首を縛ってしまった。

もちろん、なす術がないという事実に、狼狽える鈴を張ったような双眸。



「っきゃ……やだ、っ……ネエロ先生、っおねが……これ、外して、ぇ!」


まさに≪ラッピングされた名前≫。

取ってもらおうと左右へ身を捩る姿はまるで自ら快楽を強請っているようで、ひどく淫靡だ。


ズボンの中ですでに膨張し始めた自身に嘲笑しつつ、彼は再び露わな上腿へ手を添えた。



「! ん、ダメ、です……はぁ、はっ……や、ぁあっ////」


「名前……」


「っ、ひぁ……!」



鼓膜を突く自分の名前。好きな人に呼ばれ、思わず力が抜けてしまう。

そして、ますます赤らんだ彼女の頬に、歪む口元。



「どうした? 腕の自由を奪われたと言うのに、気持ちよさそうな顔をして」


「ちっ、ちが……! 名前……はぁ、ん……先生が、覚えてくださ、てたのが……嬉しく、て……っぁ」


「ッ! ……はあ。名前はオレを止めたいのか煽りたいのか、どちらなんだ」


「っ、はぁっ、私……あ、煽ってませ……、え!?」



次の瞬間、腿から移動していた男の両手によって、体操服とキャミソールが勢いよく捲し上げられてしまった。


必然的に顔を出す、艶美な黒いレースの付いた桃色のブラジャー。

それをも鎖骨側へずらすことで、窮屈そうに包まれていたなんともたわわな白い豊乳が、ふるんとリゾットの眼前へ露わになる。



「ぁ……/////見ないで、くださ……っきゃう!」



大きいと多少自負する己の手のひらにすら収まりきらない乳房。

思った以上の柔らかさと弾力。

正直、たまらない。


あらゆる方面から五指を使い、下から持ち上げるようにねっとりと揉みしだけば、知らず知らずのうちに名前の甘い吐息が部屋に滲んだ。



「やっ、ぁっぁっ……せん、せ……触っちゃ、いや、ぁ」


「……ふ、嫌がっているようには見えないんだがな」



少女の姿を眺めて、自然と漏れる加虐的な言葉。

当然ながら、彼女は彼の発言を否定するために頭を振るばかり。



「っ、ぁ……あんっ! ふ、っぅ……ダメ、です……ん、だめなの、ぉっ」


「ふむ、なぜだ? 乳首が勃っていることに気付かれたくないからか?」


「ぇ……、ひゃん!?」



男の次なる標的。

それは、白い肌の中で際立つずいぶんぽってりとした赤い果実だった。


口では嫌がりつつも身体は実際悦んでいる――己のことを理解しきれていないのか、目をぱちくりとさせる名前に対し、リゾットは左手でムニムニと乳房を揉みしだきながら、右の親指と人差し指で乳首を押し潰すように摘み始める。



「まったく、胸を揉まれただけでココをこんなにも硬くして……」


「ぁっ、ぁ……やぁああ! ね、ろ先、生っ……コリコリしな、でぇ……!」


「……その声、腰に来るな……だが、どうせなら下の名前を呼んでほしい」


「ひぁっ……ん、はぁ、はぁっ……した、の?」



下の名前――つまり≪リゾット≫と呼べ、ということだ。

刹那、沸騰してしまうのではないかと傍から見て心配になるほど少女は赤面し、首を弱々しく横に振った。



「だ、だだダメですっ……はぁ、っぁ……し、下のお名前なんてっ、呼べな……や、ぁあんっ////」


「ふむ……それは残念だ」



諦めてくれたのだろうか――そう彼女がホッとしたのも束の間、乳頭を覆った柔らかく湿った感触。

そして、爪先で荒々しく弾かれるもう一方の頂き。

まるで≪呼ぶまでやめない≫と言いたげに、愛撫を一切止めることなく彼は涙目の名前へ刺激をもたらし続ける。


先端を丹念に舌でねぶられ、赤子のようにきつく吸い付かれ、種類の異なる攻めによって、言いえぬ強い痺れが無垢な少女の身体の奥底から這い上がってきた。


「ぁ、ん……ひゃっ……ぅ、吸っちゃ、ぁっ、……ダメぇ、ッ」


「ん……」


「はぁっ、はぁ……っぁ、せん、せ……おねが……っ、ひあ……!」



性感で腫れた頂きを咥え、こちらを見つめる瞳と目が合い、ジクジクと引き起こされる快感で下腹部の内側――子宮がひどく疼く。

自分がどうしたいのか。目の前の想い人にどうしてほしいのか。それすらわからないまま、ただ生理的な涙を目尻に浮かべ、いやいやと首を動かすことしかできない。


心を劈く、官能へと誘うようなリゾットの情欲を帯びた視線。



「っや、ぁ……はっ、はぁ……んっ、やら、ぁ」


「名前」


「っ! ふ、ぁっ、ぅ……、……りぞ、とせん、せ……ぁ、あん!」


「……及第点だな」



涙で頬を濡らしながら、彼女がおずおずと口を開けば、ようやく連続的な快感から解放された。


「……」


本当は、名前だけで構わない。

だが、≪先生≫を付け加えられた方が悪いことをしているようで――いや、実際にしているのだが――逆に興奮する。


「ふ……」


まったく、いつから自分はこんな趣味を持つようになったのだろう。

いや、今も蕩けた顔でこちらを見据える名前が、自分をひどく惑わすんだ――胸中に湧き出た言い訳。


それに叱咤しつつ、彼は少女の履くブルマーへ手を伸ばした。



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