注意!
※これは完全な裏です。
※護チ、暗チ全員生存している設定。
※媚薬。
「よオ」
「!? 貴方、は……っ」
突然呼びかけられ、びくりとしながらも振り返る。
背後にいた人物が誰かを悟った瞬間、名前はすでに後悔し始めていた。
「久しぶりだなァ……名前は確か、名前だったか?」
「……お久しぶりです、レオーネ・アバッキオ」
頭上に不思議な卵の殻。
忘れられるはずがない。
「で? 暗殺チームのテメーが、なんでここに来ていやがる」
「ジョルノ・ジョバァーナ……いえ、ボスへ書類を出しに来ただけです」
そう。ここはパッショーネの本拠地。
普段ならメールで済むもののはずが、なぜか直接届けろと指令が出たのだ。
――そうじゃなきゃ、私はここに来ない。
和解はできたものの、まだ組織内で自分のチームを見下す輩は多い。
さらに、女性という理由でちょっかいをかけてくる奴も少なくはないのだ。
――早くアジトへ帰りたい。
ジョルノがボスとなり、待遇も変わりはした。
しかし、なかなか人の心は変えがたい。
――それはきっと、この男も同じ……。
「……何こっちにガンつけてんだ」
「!」
――ダメ。こんなところで騒ぎは起こしたくない。
いつの間にか凝視していたアバッキオから、名前が視線を外す。
「オイ」
だが、少女のその態度が逆に彼の気に障ったらしい。
ぶらりと下がっていた彼女の腕を強引にこちらへ引き寄せる。
「ッ、何を」
「そうやって睨んでやりてーのはオレの方だってんだ。テメーらには、ずいぶん好き勝手やられたからなァ……」
にやり。
いつもへの字に曲がっている男の口が、上がっている。
しかし、そう言われて「ハイそうですか」と納得できるほど自分もできていない。
「……そういう貴方たちだって、イルーゾォ先輩やみんなを!」
「えらく突っかかるじゃあねーか。なんだ? そのイルーゾォが恋人かなんかか?」
「! そんな意味で言ったんじゃないっ//」
――私は、仲間みんなに憧れているんだから。
憧憬と尊敬。
暗殺という仕事を生業としている割にはまっすぐで、嘘のない名前の瞳に、アバッキオは笑みを深める。
「ほう……」
「も、もういいですか? 私、帰りたいんで!」
隙を見て彼の手を振りほどく。
そして男へ大雑把に一礼し、ずんずんと歩き始めたそのとき。
「まあ、待てよ」
「うぐッ」
「……ハッ、色気のねー声」
首に後ろから腕が回され、引き寄せられてしまった。
「〜〜ッ、まだ何か!?」
「そうカリカリすんじゃあねーよ。ただ、オレはテメーと親交を深めてーだけだ」
「親交ですって!? 私は深めたくありません!」
それより早く離してほしい。
背中に感じる、認めたくはないがたくましい筋肉が名前の心を急き立てた。
「いいじゃねーか。な? ちょっと付き合えや」
「っい、いや――――――!!」
あいにくその場には誰一人おらず、名前の悲鳴だけがしばらくの間轟いていた。
「あ〜、だいたいー……ひっく! なんれすかッ、この殻!」
「……よし、もうお前黙れ」
「あなたの! 指示は……受けまひぇん!」
酒が弱そうではあったが、ここまで≪ひどい≫とは。
バーのカウンターで一人盛り上がる名前に、アバッキオは静かにため息をついた。
だが、強くても≪彼の計画≫が潰れていたので、ある意味良かったのかもしれない。
「オイ。そろそろお開きだ……名前?」
「……すう」
「ハア? まさか寝てやがんのかッ!?」
顔を覗きこめば、穏やかな寝顔。
――なんて世話のかかるヤツだ!
「マスター。お代、ここに置いてくぜ」
バンっと紙幣をカウンターに叩きつけたアバッキオは、軽々と名前を俵担ぎにし、バーを去って行った。
>