uno

※連載「Uno croce nera...」の番外編
※ギャグ?



ボロボロ、ボロッ


「……っん……?」



何かが降ってくる音。

いつも自分を抱き込むリゾットのぬくもりに包まれながら、名前がそろりと瞼を開けば――




「ロオオオオド」


「ロオオオオオオオド」



「えっ……メタリカちゃん!?」


ベッドに転がる小さなスタンドたち。

何が起きているのかもわからず、勢いよく顔を上げると、少し眉をひそめた表情の彼が己の頭上にいる。



「り、リゾットさん……?」


「……ッ」



寝ぼけ眼のまま冷静に状況を考える少女。

そこで、ある違和感に気が付いた。




――リゾットさん……いつもより体温が高いような。


左胸にそっと耳を当てれば、やはり鼓動のスピードが速い。


「……まさか」


さらりと揺れる髪を静かに掻き分け、男の額へ手のひらをかざす。


――! 熱い……。



「ん……、名前……?」


「あ、動いちゃダメです! 私、リビングから氷とタオルを取ってくるので、大人しくしていてくださいね?」


「?」



いぶかしげに眉間にしわを寄せ、熱っぽい息を吐き出すリゾット。

その艶かしさにドキリとした心を抑えて、名前はベッドから飛び出した。



「ロオオオオド」


「……え!? どうして私にくっ付いて……!」



肩で、頭上で、手の甲で――可愛らしくこちらへ手を伸ばす、メタリカに驚きながら――









「それは大変だったね……で? リーダーは大人しく寝たの?」


「は、はい……なんとか押さえつけて、今は熟睡しています」


「(あのリーダーを押さえつけたんだ……名前って、意外に力持ちなのかなあ)」



イルーゾォには同情を、ペッシには尊敬のまなざしを向けられつつ、少女が苦笑する。


熱はあってもリゾットはリゾット。

彼に容赦なくベッドへ引き込まれそうになって、近くにあった本(薄めのもの)で後頭部を殴ってしまった――とはさすがに言えない。



「まあ、リゾットが体調不良ってのもかなり珍しいが、問題はもう一つあんだろ」


「そうだよなァ……リーダーの体内に居るはずのメタリカが、名前にくっ付いてんのはおかしいぜ」


「です、よね……」



自分の両隣に座るプロシュートとホルマジオを一瞥してから、手のひらに乗ったスタンドと目を合わせる。


「……(じーっ)」


「ロオオド」


「……?(コテン)」


「ロオオオオド(同じく首かしげ)」


「! ふふ、可愛いなあ、メタリカちゃん」



(((((可愛いのは名前だッ!)))))



「ん? ちょっと待って。おかしいってのはおかしいんじゃないか?」


「チッ! オイ、メローネエエエ……意味わかんねえこと言ってんじゃあねえぞ……」



指をトントンと腕で鳴らし、あからさまに舌打ちするイライラ状態のギアッチョ。

そんな男に対して、メローネは慣れているのか平然と言葉を紡ぎ始めた。



「いや……名前がリーダーの血を頂いているなら、必然的にこうなるんじゃないかってことだよ」



つまり、リゾットの体調不良によるものではなく、彼女自身に何かが起こっているのでは、と彼は考えたらしい。



「私の……体内から?」


「そうッ! 名前、君は独占欲の化身とも呼べるリーダーによって外側だけでなく内側、すなわち血液からじわじわとリーダーのモノになるよう侵されて――グエッ!」


「要するに心配無用ってことだろうが。妙に気持ち悪い言い方すんじゃねえよ、変態」



プロシュートの力強い蹴りによって吹っ飛んでいくメローネ。

それを視線で追いかけながら、名前は朝のことを思い出し、ぽつりと呟いた。



「でも……私が見たのは、確かにリゾットさんから出てくるメタリカちゃんだったんです……」


「うーん、じゃあ名前の身体からって線は消えそうだね」



イルーゾォの困ったような表情に頷き、再び考え込む。


――どうしよう……リゾットさんに何か起きていたら……。


広がる不安。

自然と拳が作られる片手。


しばらくの間沈黙がリビングを支配したかと思えば――不意にペッシがおずおずと手を挙げた。



「あの……思ったんすけど」


「どうした、ペッシ。言ってみろ」


「ありがとう、兄貴! 実はメタリカも、リーダーと同じ気持ちなんじゃないっすかね?」


「? 同じ、気持ち?」



きょとんと首をかしげる少女に対し、彼は小さく頷き、ある推測を話し始める。



「リーダーが名前と居たい、って思うように……メタリカも名前の傍に居たいんすよ、きっと。ほら、スタンドは本体の意思に添うって言うし」


「んー、けどよォ……それでリーダーが熱出しちまったら元も子もねーよなァ? これじゃあ、前にグレフルがプロシュートに対してなった≪反抗期≫みてェなもんだぜ」


「おい! そこでオレに話を回すんじゃねえ! それに、あいつとは≪名前を抱きしめるのは交互に≫って、ちゃんとケリが付いてんだよッ!」


「……どうりでよオオ……その場面をよく見かけると思ったぜエエエッ」



傍に居たい。

その意思によって、大量のメタリカがリゾットから放出され、体調に問題を来してしまったという。



「リゾットさんにも、メタリカちゃんにも、そう思っていただけるのは嬉しいんですけど……」


「ロオオオド」



理由は予測ではあるが、把握できた。

しかし、これを解決するには――どうすればいいのだろうか。



「んー……メタリカちゃん、教えてもらえませんか?」


悩みあぐねた名前が、己の手のひらの中を見つめ、顔をそっと近付けたそのとき。



チュッ


「え……?」


「「「「「んなぁぁあああッ!?」」」」」



頬に当たった微かな感触。

そちらへ目を向ければ、ほんのりと白から桃色へ染まるメタリカの姿が。



「えと……これ、ですか?」


「ロオオオド」


「……わかりました、部屋へ戻りましょうか」


「ちょ、名前! イイわけ!?」



メローネが慌てた様子で引き留めるが、リゾットの体調が戻ることを願う少女は笑みを浮かべるばかり。


「大丈夫です! 皆さん、相談に乗っていただいて、本当にありがとうございました……!」



ペコリ

深々と下げた頭を戻して、彼女がリビングを去っていく。



「……なんだろう、この敗北感」


ひっそりと響いたイルーゾォの一言に、扉を凝視していた皆が首を縦に振ったのは言うまでもない。



その後、リゾットの体調はすぐさまよくなった、が。


「ふう……」



≪群集≫と呼ばれるだけあって、たくさんのメタリカの相手をした名前の顔は、疲労に満ちていたという。







交信2
スタンドだって、≪愛≫を抱く。



〜おまけ〜



大方のメタリカは本体(リゾット)へ戻ったものの、一匹(?)だけ残ったようです。


「ロオオオオオド」


「ふふ」



少女が人差し指を前へ出せば、彼女の指先を小さな小さな両手で掴むメタリカ。

その動作に、きゅんと心が音を立てる。



「〜〜っやっぱり可愛い……!」


交信ができた。

嬉しさのあまり、名前はおもむろに唇を白い身体(?)へ寄せ――



チュッ



「!?」


「ちょ、リーダー、顔! 顔! 自分のスタンドが好かれて嬉しがるのか、自分のスタンドを羨むのか、どっちかにしてくれッ!」



これでもかと言うほど複雑な表情。

黒目がちの眼をカッと見開き、頬を引きつらせたリゾットがいたとか、いなかったとか。










やってしまいました……メタリカちゃん。
あのムキムキ系のリーダーから出ていると思えば、ますます可愛く見えてきます(笑)。
懲りずに、他のスタンドとの交信も書きたくなってしまいました……いつか機会があれば。


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読んでいただき、ありがとうございました!
polka





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